第44回日本呼吸器学会九州地方会一般演題抄録
演題番号: D07
胸腔鏡下肺生検にて診断した肺ムコール症の一例国立療養所大牟田病院
○池堂 ゆかり、永田忍彦、小野博典、
堀内雅彦、原田 進、高本正祇
症例は51歳、男性。平成9年、夏頃に糖尿病を指摘されるが放置。平成11年1月より全身倦怠感、食欲不振を自覚していたが、7月上旬より倦怠感増悪し、7月23日近医受診。高血糖認め、同日同院入院後、糖尿病に対し、インスリン導入にて経過みていたが、胸写にて左上肺野に多発空洞影認め、肺結核症も疑われ、8月6日当院転院となった。 胸部CTでは、左上葉に限局する薄壁から充実性の多様な空洞病変を認め、空洞周囲の散布性粒状影は認めなかった。喀痰の抗酸菌連続塗抹培養検査にて結核菌は証明されず、クリプトコッカス症などの真菌症、転移性肺腫瘍、肺膿瘍、Wegener肉芽腫、M.kansasii症を鑑別診断として考えた。気管支鏡下肺生検では診断が得られず、胸腔鏡下肺生検、胸膜生検施行。その結果、幅が広く、分岐が直角で中隔のない菌体を組織内に認め、肺ムコール症と診断した。AMPH-B(総量2130mg)、5FC、ITZによる加療にて著明な改善を示し、治療終了後3ヵ月の現在経過良好である。 肺ムコール症は日和見感染性の強い予後不良な疾患で、一般に生前診断は困難であるとされている。今回、糖尿病、アルコール多飲の患者に発症した肺ムコール症を胸腔鏡下肺生検にて診断し得た為、その治療効果と共に報告する。 |
受付番号:P009