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診療グループ 研究内容

神経 / Pediatric Neurology(研究内容)

研究内容

(1) 急性脳症の病態に関する研究
急性脳症は先行感染後にけいれん及び意識障害を伴う症候群であり、日本を含む東アジアの小児期に多く発症する。
重症度は様々だが、麻痺やてんかん、知的障害などの後遺障害を認める例も多く、早期の診断や有効な治療法の確立が急務である。
水口らは急性脳症症例を集積し遺伝的素因として、これまでにカルニチンパルミトイルトランスフェラーゼII、アデノシン受容体A2A、電位依存性ナトリウムチャネル遺伝子の多型、変異を同定した[1], [2], [3]。
急性脳症の病初期の症状は熱性けいれんに酷似しており、両者の鑑別は臨床の現場で大きな課題となっている。
今後は急性脳症の早期診断や、病態にもとづく効果的な治療を可能とするため、発症に関連する分子経路を解明し、バイオマーカー、治療薬などの開発を目指している。
現在、急性壊死性脳症(ANE)、けいれん重積型急性脳症(AESD)、難治頻回部分発作重積型脳炎(AERRPS)、可逆性脳梁膨大部病変を有する軽症脳炎・脳症(MERS)、分類不能の急性脳症を対象に検体を受け入れ、関連する遺伝子解析を行っている。
急性脳症遺伝子研究関連書式→http://www.development.m.u-tokyo.ac.jp/

(2) 遺伝性疾患・先天異常の診断・自然歴の研究
小児神経領域には多くの遺伝性疾患があり、神経合併症を有する奇形症候群等の先天異常の頻度も高いため、他グループと連携しつつ、小児病院における遺伝科に相当する役割を果たしている。
疾患の合併症や自然歴を評価し、総合的な医療管理に役立てることを目指している。
また、稀少先天奇形疾患・遺伝性疾患に対して、染色体検査・遺伝子検査等を用いた正確な診断に基づいた医療を行うとともに、SNPアレイなどの新しい分子遺伝学的手法を導入して、原因不明の先天異常症候群の解析を行っている[4], [5], [6]。

(3) 先天性母子感染の診断と治療技術開発研究
サイトメガロウイルス(CMV)感染症をはじめとするウイルス感染症は、妊娠中に発症すると胎児へ移行し、感染時期によって脳障害や難聴などの神経後遺症をきたす[7]。
従来はいわゆるTORCH症候群として重症例がクローズアップされていたが、軽症例がはるかに多いことが近年の研究成果から明らかになっている。
先天性CMV感染症においては、新生児期以降に進行性難聴をきたすことも知られている。
これら先天性母子感染症の診療において、我が国では診断と治療技術が標準化されておらず、したがって臨床像も不明な部分が大きい。
診断治療技術の開発と治療に向けた臨床的な研究として、当科では、先天性CMV感染症の患者をプロトコールに則って前向き観察し、その自然歴を明らかにする研究を行っている(厚生労働省研究班(藤井班))。
治療を要すると判断される症例については、院内倫理委員会の承認を受けたうえで治療を行うこともある。
先天性感染症(CMV感染症診断サービス、CMVおよびトキソプラズマ感染症の患者レジストリ)
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(4) 遺伝性疾患・先天異常の分子病理・病態の研究
結節性硬化症(mTOR系)[8]、Rett症候群などてんかん、知的障害、自閉症をともなう遺伝性疾患のモデル動物を用いた分子病理学的解析、Noonan症候群(RAS/MAPK系)[9], [10]、Ellis-van Creveld症候群(SHH系)などの先天異常や脊髄性筋萎縮症の遺伝学的解析、ペルオキシソーム病の生化学的解析などを行っている。

(5) 脳室周囲白質軟化症の病態生理に関する研究
脳性麻痺において最も頻度の高い原因として、未熟脳に発生する脳室周囲白質軟化症の重要性が認識されている。
従来知られている脳の循環障害に加えて、感染・炎症機転の重要性が指摘されており、我々の検討でも臍帯血サイトカインの上昇が見出されている。
脳虚血の明らかでない症例においては、周産期の感染に伴う組織障害が寄与している可能性が高いと考えられる。
感染モデルラットを用いた未熟脳障害の検討を行っている。

(6) ミトコンドリア異常症の病因研究
ミトコンドリア異常症は、先天代謝異常症のなかで最も頻度の高い疾患群であるが、その約半数は病因不明である。
ミトコンドリア異常症の原因として、呼吸鎖複合体の量や集合(アセンブリー)の異常が注目されている。
その検出のために極めて有用なタンパクの電気泳動法であるBlue-Native PAGEを用い、患者のスクリーニングを行っている。
異常を検出した患者については、呼吸鎖複合体の構成タンパクやアセンブリーに関連する因子(アセンブリーファクター)のDNA異常の検索を行い、患者の遺伝子診断を目指している[11]。

(7) 小児悪性腫瘍患者の神経合併症および発達の実態把握
小児悪性腫瘍に対する化学療法、造血幹細胞移植、外科療法の治療が進み、生命予後には著しい改善が得られている。一方で、長期生存者において、成長障害をはじめとした様々な合併症が遠隔期にも生じ、QOLの低下につながっている。
当科では、小児悪性腫瘍患者の神経合併症の実態把握を行い、けいれん性疾患、運動・感覚障害、難聴が生じうること、少数ではあるが自閉スペクトラム症等の発達障害や、知的障害を合併する患者がいることを明らかにした[12], [13]。
現在、悪性腫瘍患者の神経学的問題点をさらに整理し、より神経学的後遺症が少ない治療法の確立へとつなげることを目的に、新規に悪性腫瘍を発症した患者において、治療中の神経合併症の評価、治療について前向き検討する共同研究(小児急性リンパ性白血病標準リスク群の治療による認知発達への影響について(NALLS3-9) 代表機関:国立成育医療研究センター)に参加している。

(8) 乳児期ダイオキシン摂取による神経発達の影響
乳児のダイオキシン摂取の主な経路は母乳中のダイオオキシンであるため、母乳中のダイオキシン濃度を測定し、その影響調査を行っている。
神経発達および行動面への影響調査をコホート研究として行っている。

(9) 亜急性硬化性全脳炎の全国患者サーベイランス調査
麻疹ウイルス初感染後に一部の患者では慢性進行性の中枢神経系感染である亜急性硬化性全脳炎をきたす。
全国調査にて患者数の把握とその実態調査を定期的に行っている。

主な業績

[1] Shinohara M, Saitoh M, Takanashi J, Yamanouchi H, Kubota M, Goto T, Kikuchi M, Shiihara T, Yamanaka G, Mizuguchi M. Carnitine palmitoyl transferase II polymorphism is associated with multiple syndromes of acute encephalopathy with various infectious diseases. Brain Dev. 33:512-7, 2011.

[2] Shinohara M, Saitoh M, Nishizawa D, Ikeda K, Hirose S, Takanashi JI, Takita J, Kikuchi K, Kubota M, Yamanaka G, Shiihara T, Kumakura A, Kikuchi M, Toyoshima M, Goto T, Yamanouchi H, Mizuguchi M. ADORA2A polymorphism predisposes children to encephalopathy with febrile status epilepticus. Neurology. 80: 1571-1576, 2013.

[3] Saitoh M, Shinohara M, Hoshino H, Kubota M, Amemiya K, Takanashi JL, Hwang SK, Hirose S, Mizuguchi M. Mutations of the SCN1A gene in acute encephalopathy. Epilepsia. 53:558-64, 2012.

[4] 水野葉子、三牧正和、太田さやか、下田木の実、高橋長久、岩崎博之、岡 明、水口雅.Sotos症候群-2を合併したトリプルX症候群の症例.日本小児科学会雑誌119巻2号 Page463(2015.02)

[5] 岩崎博之、水野葉子、太田さやか、下田木の実、高橋長久、三牧正和、岡 明、水口雅.TSC1遺伝子のホモ欠失により片側肥大をきたした結節性硬化症の1女児.脳と発達46巻6号 Page452(2014.11)

[6] 太田さやか、水野葉子、下田木の実、高橋長久、岩崎博之、三牧正和、岡 明、水口雅.10番染色体短腕部分欠失の2症例.脳と発達46巻Suppl. PageS338(2014.05)

[7] 水野葉子、内野俊平、高橋長久、石井礼花、岩崎博之、五石圭司、五十嵐隆、齊藤真木子、水口雅、岡 明.新生児スクリーニングで発見された先天性CMV感染症における中枢神経病変の検出.日本小児科学会雑誌116巻2号 Page426(2012.02)

[8] Sato A, Kasai S, Kobayashi T, Takamatsu Y, Hino O, Ikeda K, Mizuguchi M. Rapamycin reverses impaired social interaction in mouse models of tuberous sclerosis complex. Nat Commun. 2012;3:1292.

[9] Tumurkhuu M, Saitoh M, Sato A, Takahashi K, Mimaki M, Takita J, Takeshita K, Hama T, Oka A, Mizuguchi M. Comprehensive genetic analysis of overlapping syndromes of RAS/RAF/MEK/ERK pathway. Pediatr Int. 2010 Aug;52(4):557-62.

[10] Tumurkhuu M, Saitoh M, Takita J, Mizuno Y, Mizuguchi M. A novel SOS1 mutation in Costello/CFC syndrome affects signaling in both RAS and PI3K pathways. J Recept Signal Transduct Res. 2013 Apr;33(2):124-8.

[11] 水野葉子、三牧正和、太田さやか、下田木の実、高橋長久、岩崎博之、斉藤真木子、岡 明、水口雅、後藤雄一.ミトコンドリア呼吸鎖異常症の診断におけるBlue-Native電気泳動(BN-PAGE) .脳と発達46巻Suppl. PageS374(2014.05)

[12] Shimura A, Ohta S, Mimaki M, SHimoda K, Mizuno Y, Takahashi N, Iwasaki H, Oka A, Mizuguchi M: A study of neurological complications in childhood malignancies. The 9th Congress of Asian Society for Pediatric Research, Kuching, May 9-12, 2013

[13] 水野葉子,太田さやか, 三牧正和, 下田木の実, 高橋長久, 岩崎博之, 岡明, 水口雅:小児悪性主要患者の神経合併症の実態把握.第55回日本小児神経学会学術集会,大分、2013年5月30日~6月1日

[14] Kono Y, Oka A, Tada H, Itabashi K, Matsui E, Nakamura Y.. Perinatal dioxin exposure and psychosocial and behavioral development in school-aged children. Early Hum Dev. 2015 ;91::499-503.

[15] Oka A, Nakamura Y  The Current Status of Subacute Sclerosing Panencephalitis (SSPE) in Japan: A National Survey  Pediatric Adcademic Societies and Asian Society for Pediatric Research Joint Meeting Vancouber, May 4, 2014

週間予定・年間予定

●病棟カンファレンス・症例検討会: 毎週月曜日 17:00~

●画像脳波カンファレンス: 毎週火曜日  8:30~

●抄読会: 毎週木曜日  8:30~

●年に1回、関連病院の神経班全体で研究会を開催(夏頃)

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