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診療グループ 研究内容

血液 / Pediatric Oncology & Hematology(研究内容)

研究内容

私たち血液腫瘍班は小児悪性腫瘍の発症や進展に関与する標的遺伝子を同定し、その分子病態を解明するために、ゲノミクスおよびエピゲノミクスに基づいた基礎的研究を行っています。
最終的には分子病態に基づいた新たな病型分類や予後予測、また分子標的薬の開発を行い、小児悪性腫瘍の臨床に大きく貢献することを目指しています。
小児悪性腫瘍は種々の表現型を呈する先天性疾患に合併することが多いことから、その発症機構の解明は、様々な疾患の病態解明診断・治療法の開発にもつながる重要な研究と考えています。
以下がこれまでの研究内容と現在のプロジェクトです。

(1) 神経芽腫における標的分子・ALKの同定
神経芽腫は主として乳幼児期に発症する神経堤由来の小児固形腫瘍であり、小児がんの中では白血病、脳腫瘍についで頻度が高いものです。
自然消退する例も一部にはあるものの、1歳以上に発症する例は極めて予後不良であり、全小児がん死亡数の約15%を占めます。
神経芽腫における遺伝子・ゲノム異常としてMYCNの増幅、1p LOHおよび11q LOHが報告されていますが発症の分子機構は十分解明されていません。
そこで私達は東京大学がんゲノミクス研究室小川特任准教授らと共同し、神経芽腫の標的遺伝子を同定する目的で、超高密度SNPアレイを用いて神経芽腫215例の網羅的ゲノム解析を行いました。
その結果、ALK遺伝子を含む2p23領域の高度増幅を検出し、さらにこの遺伝子の機能獲得型変異を見出しました。
すなわち、ALKが増幅と変異という2つの異なるメカニズムによって造腫瘍性を来たす神経芽腫の標的分子であることを明らかにしました(Nature 2008)。
本研究により神経芽腫の病因が明らかとなり、新規分子標的療法の開発にも多大な貢献をもたらすことが期待されます。

(2) 横紋筋肉腫における統合的ゲノム解析
横紋筋肉腫は筋肉になるもとの細胞から発生する悪性腫瘍です。
筋肉、脂肪組織などから発生する小児期の腫瘍(小児軟部腫瘍)の中では最も高頻度に発生します。
手術、放射線や薬物治療などを組み合わせた集学的治療により全体として約70%の治癒が期待できますが、小児では特に成長障害、臓器機能障害、不妊など、治療後に発生する障害(晩期障害)が大きな課題となっています。
従って、分子病態に立脚した治療の最適化は、横紋筋肉腫の患者さんの治癒率改善と重篤な副作用や晩期障害の回避に重要といえます。
そこで、私たちは、東京大学先端科学技術研究センターゲノムサイエンス分野の油谷浩幸教授、京都大学大学院医学研究科腫瘍生物学講座の小川誠司教授らと共同で、次世代シーケエンサーとアレイ技術を用いて横紋筋肉腫60例のゲノム上にみられる遺伝子異常や構造変化、エピゲノムに見られる異常の全体像を解明しました(図1)。

その結果、DNAメチル化のパターンから横紋筋肉腫は4群に分類されることを見出し、それぞれの群に起こりやすい遺伝子異常と病理所見および臨床的特性を明らかにしました(Nature communication 2015)。

この成果は、横紋筋肉腫の予後予測、精度の高い分子診断法の開発に貢献し、治療の最適化の実現に役立つものと期待されます。

(3) T細胞性急性リンパ性白血病における網羅的ゲノム解析
T細胞性急性リンパ性白血病(T-ALL)は小児白血病の中では予後不良であり、新たな治療法の開発が必要です。
そこで、治療抵抗性T-ALLの臨床検体を用いて、次世代シークエンサーによる治療標的の探索を行っています。
また超高密度オリゴヌクレオチドアレイを用いて、網羅的ゲノムコピー数解析を進めています。
その結果、既知の遺伝子変異に加えて新たな遺伝子異常が複数検出されました。

(4) 神経芽腫におけるエピジェネティック異常
メチル化などのエピジェネティック制御は、発がんと密接に関連することが明らかになりましたが、神経芽腫におけるエピジェネティック異常は十分に解明されていません。
そこで、エピジェネティック関連遺伝子80個に関して、ターゲットキャプチャーを行いました。
その結果、予後不良の神経芽腫において新規の遺伝子異常が検出されました。
また、神経芽腫50例につき4万か所のプロモーター領域のメチル化の網羅的解析を行ったところ、4,000遺伝子を用いた階層的クラスタリングにより、予後因子、ゲノム異常とは独立したメチル化パターンの異なる2つのサブグループが存在することが判明しました。現在、さらに神経芽腫の病態におけるエピジェネティック制御に関して解明を進めています。

(5) 神経芽腫におけるGenetic landscape
神経芽腫の分子病態に関する異常として、MYCN、ALKの高度増幅/変異、1p、11qのLOHなどが知られていますが、分子病態の全体像はまだ明らかになっていません。
そこで、神経芽腫のゲノム異常の全体像を明らかにするために、新鮮腫瘍400検体を用いて、神経芽腫関連遺伝子のキャプチャーシークエンス、網羅的ゲノムコピー数の解析を行いました。
その結果、神経芽腫はゲノム異常のパターンによって、6つのサブグループに分類されることが判明しました。
これらのサブグループは、臨床情報と相互に関連し、予後予測を行う上で有用と考えられました。
現在、これらのゲノム情報に加えて、病理組織像の情報も加えた全体図を作成中です。

図1: DNAメチル化のパターンによるRMSの分類 (Seki et al., Nat Communより改変)
DNAメチル化のパターンによるRMSの分類
DNAメチル化アレイの結果から、RMSを4つの群に分類しています。
この4つの群をE1、E2、A1、A2と名付けました。横にRMSの検体、縦にDNAメチル化を調べた遺伝子の部位が示されています。
赤で示したものが高メチル化、青で示したものが低メチル化を示している部位になります。
大きく2つに分けると、E1/E2、A1/A2の2つになり、E1/E2は胎児型(ERMS)、A1/A2は胞巣型(ARMS)にほぼ一致した分類となっていました。

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