通院中断が与える網膜症に与える影響

平成11年第14回糖尿病合併症学会;於 大津

目的 細小血管合併症(網膜症、腎症)の予後規定因子を検討する

対象 当院に入院した悪性腫瘍をもたない連続165例(58.9±13.7歳)。男性90例(58.7±11.5歳)、女性75例(59.1±16.0歳)

方法 入院時の検査と糖尿病罹患歴、大血管症罹患歴を独立変数にとり、増殖性網膜症の有無を従属変数として、増殖性網膜症の予後規定因子を、横断的後ろ向きに検討した。

結果 増殖性網膜症47例、単純性網膜症43例、網膜症無し74例であった。
 全体の罹病期間は13.7±10.9年であった。網膜症例19.0±9.1年、増殖性網膜症例の平均罹病期間は19.9±8.4年だった。網膜症発症までの罹病期間は14.2±7.9年であった。
 単変量解析では、罹病期間(p<0.001)、糖尿病性神経症の有無(χ2乗=24.5、p<0.01)、糖尿病性腎症の有無(χ2乗=28.3、p<0.01)、治療脱落の有無(χ2乗=21.9、p<0.001)、白内障の合併(χ2乗=17.216、p=0.018)、高血圧の有無(χ2乗=4.17、p=0.049)が続いていた(表1)。
 多変量解析では、罹病期間と細小血管合併症、そして治療脱落の有無が影響していた(表2)。
 増殖性網膜症の患者のうち治療脱落の既往があるのは34名(72%)、71名の治療脱落の既往がある患者のうち増殖性網膜症は48%を占めていた。
 腎症、神経症、網膜症を3つ合併する患者31名のなかで、25名(81%)に治療脱落の既往が認められ(表3)、治療脱落の有無(χ2乗=6.62、p=0.01)が、罹患期間(χ2乗=19.8、p<0.001)および高血圧の有無(χ2乗=4.97、p=0.026)と並び細小血管合併症を重複する因子であった。

結語 治療脱落者に細小血管合併症例を多く認められた。


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