消渇丸

2005-Feb-09

症例 大正14年生まれ 男性

主訴 両側股関節痛

経過 混合型インスリン製剤ペンフィル30R(15-0-15)に、個人輸入した 消渇丸を併用している。

 整形外科入院後1600kcalの食事療法が始まり、空腹時血糖が79mg/dlまで低下し、整形外科主治医から、内科コンサルトされた。糖尿病の合併症は網膜症は認めない物の、尿蛋白2.5g/日、CCr111cc/分で腎症3A期。高脂血症TC235mg/dl, 複数の降圧剤を内服してsBP180~210mmHgと著明な高血圧症を併発している。

 黄疸やトランスアミナーゼの上昇は無いが尿ウロビリノーゲン(2+)となっている。

 インスリン中止後FBS 120mg/dl前後になり、消渇丸も中止した所、FBS 170mg/dl前後に上昇した。
 インスリン治療を再開しFBS 120mg/dl台に血糖コントロールされている。


解説

 消渇丸は個人輸入の形で購入されている。紹介するサイトによっては、血糖降下剤[SU薬:グリベンクラミド]も含有する製剤である事を記載しているWebサイトがある一方で、あきらかにはしていないWebサイトがある。何れのWebサイトも血糖降下剤との併用を禁じ、ケトーシスや妊婦などのインスリン使用を必要とする状態での使用を禁じていた。
 神奈川県衛生研究所の熊坂先生(1)などにより、幾つかの事例でSU剤の混入が確認されている。

 生薬成分であれば安全と言う事はなく、一部でαグルコシダーゼ阻害作用が認められる他に、実用に足る血糖降下作用の確認された生薬はない。以前にも副作用報告でSU剤が配合された中国製の『漢方』製剤を内服し低血糖を起こした症例が報告されている(2)。


熊坂先生の別途に入手した消渇丸からは一切のSU剤が含まれなかった(4)。一方で、2.69mg/10丸含まれていたという山本らの報告もあり(5)、偽薬の横行やロット管理の不具合もあり、安定した薬効は期しがたい。[2008.7/29追記]


(1) Yakugaku Zasshi 123(12)p1049, '03.[PDF]

(2) 厚生省(当時)報道発表資料 医薬安全局安全対策課
98/09/25 個人輸入した未承認糖尿病薬を服用後に発生した健康被害事例について

「健康食品」の安全性・有効性情報独立行政法人国立健康栄養研究所
米国食品医薬品局(FDA)は糖尿病の漢方薬である「Liqiang 4」の使用を警告(2005年7月1日)

(3)第530回日本内科学会関東地方会(平成17年10月15日)
中国から個人輸入された漢方薬「消渇丸」について
(4)経口血糖降下薬グリベンクラミドを含有する個人輸入医薬品の分析事例とその問題点 第21回バイオメディカル分析科学シンポジウム 2008年札幌
(5)国内未承認薬の医薬品成分分析例 第25回日本中毒学会西日本部会(2005)


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