更新出来無かった糖尿病学会専門医

 新専門医制度の課題の中で「メスを置いた専門医」の更新是非というのがあった。同列の事として「インスリンを使わない【元】糖尿病専門医」を話題提供する。
 過去の実績で専門医の資格を得ても、更新期間の5年間で最新の治療を実践し実績を示す必要があるとされている。
 糖尿病学会専門医の更新の規則には症例20例を添えなさいとあるだけだが、【必読】症例報告用紙記入の際の注意事項には、
「② 内科の場合、1 型症例か強化インスリン療法例、増殖前網膜症以上に進展した網膜症合併例、3 期以上の腎症合併例は必ず各1例以上を含めてください。」とある。
 不幸にも産業医としての勤務先の健保立診療所で見ているのは、GLP-1アナログ自己注射症例までである。
 強化インスリン療法は社員では居らず他院にお願いしている症例も混合型2回打ちである。1型糖尿病患者は居無い。
 正直にそれを書き込み「専属産業医であるので得られる症例は此処までだが、専属産業医として、1型糖尿病患者が社員に発症することを願う訳にも行かないし、合併症の進展を予防している実績が誇れ無いのは慚愧に堪えない」と添えて更新を申請した。
 しかし、1型と透析患者は必須と、更新を却下された。
「第 3 条 1.特別な事情があり更新が不可能な場合,その事情を記した書類を添付して,認定期間の延長を申請することができる.」とあるので、ヤング1型糖尿病の新入社員が入社するか?透析になってしまった社員が転勤して来るか?それとも10年を超えて期限切れになるか、「カーゴカルト」な日々を過ごしている。
 産業医という立場上、前糖尿病状態[prediabetes]に特定保健指導などで介入し、投薬を回避し、顕性糖尿病にならないようにした症例は豊富にあるが、それでは「糖尿病専門医」の資格の維持には役立たない。
 放火しないと火を消せないというのも、資格の維持には痛し痒しである。


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