10年前21世紀初頭の話です。最新の知識は得られ無い。

85.アポ蛋白 medicina 42(11), 2005年増刊号

異常値の出るメカニズムと臨床的意義

 コレステロールや中性脂肪、ビタミンAやEは水に溶けないので蛋白に結合した状態で血中に存在する。アルブミンに結合している場合もあるが、コレステロールや中性脂肪を運ぶ担体として特化したものがアポ蛋白である。脂質と複合体を形成しリポ蛋白となる。


表1 アポ蛋白とリポ蛋白の対応


臨床上の重要性と選択

 通常検査項目に上がるアポ蛋白は全部で6種類(ApoB48, 100を分けると7種類)ある。主に中性脂肪だけ上昇する高カイロミクロン血症の場合と、VLDL・IDLも上昇する高コレステロール高中性脂肪血症のIIb, III, IV型、LDLコレステロールだけが上昇するIIa型に分けて検討する。
 疾病によって"A-I, B, E"のセット(IIa, IIb, III, IV型)、"C-II, C-III, E"のセット(I, V型といった高カイロミクロン血症の場合)に分ける場合が多い。

正常異常の判断

 低ApoA-I血症・低HDL血症を来しても疾病として逆の表現型を呈する事もある。ApoA-I Milanoのように代謝が活発でコレステロール逆転送系に寄与する場合、抗動脈硬化性である(文献1)。しかし、多くのApoA-I異常症は催動脈硬化性である。

 ApoBは通常LDL, VLDL中に1粒子含まれる。ApoB/LDL-c比が0.85より大きい場合、TG-richリポ蛋白やsmall, dense LDLの存在が疑われる。sd LDLは測定キットも発売されているが、一般には粒子サイズを密度勾配電気泳動法で求める。

 現在はApoBは小腸由来のB48と肝由来のB100が一括した値で計測されている。しかし、ApoB48測定キットが開発されており、富士レビオから発売が計画されている。カイロミクロンレムナントの残留かVLDLレムナントの残留か、判別可能になる日も近いであろう。

 ApoE/TC比が高い(0.04以上)場合、ApoE2型によるIII型高脂血症である可能性が高くなる。ApoE>10mg/dlの場合もIII型高脂血症を強く疑いリポ蛋白分画の検討を加える。I, V型高脂血症でもApoEが10mg/dlを超える事もあるが、その場合TGは数千mg/dlに上昇している。III型の場合TG300~1500mg/dlである。

異常を示す疾患病態(表2)


表2 脂質代謝異常とアポ蛋白


 蛋白の定量により、どのアポ蛋白の異常が原因か検索の糸口が掴める。
 先天性遺伝子異常として短縮ApoBによる低脂血症を呈する場合がある。有棘赤血球や網膜色素変性症、小脳失調症状や末梢神経麻痺といった神経学的所見が認められ、低脂血症に伴う脂溶性ビタミンの不足が原因と考えられる(文献2)。
 また、LDL受容体に親和性がないApoB遺伝子異常で高LDL血症を来す症例も見られる。
 低HDL血症の時は、ApoA-Iが低値である場合が多い。HDLの成熟に関わる酵素(LCAT, ABCA1蛋白)の欠損とApoA-Iの異常に分けられる。

 ApoE変異症のうちApoE2型(ε2型)ではLDL受容体[ApoB/E受容体]に親和性が無くレムナントが肝臓に取り込まれず鬱滞しIII型高脂血症を呈する。この場合、治療法としてフィブラート系薬剤が選択される。また、糖尿病などの増悪因子を治療することで軽快する例が多い。
 リポ蛋白上の中性脂肪を水解するLPL(リポ蛋白リパーゼ)が機能するにはリポ蛋白上にApoC-IIが必要である。ApoC-II欠損症の患者ではLPL欠損症と同様に高カイロミクロン血症を来す。

III型とI型のHPLCリポ蛋白分画コレステロール

関連検査

検査費用と保険請求

アポ蛋白3項目以上測定で120点

文献

(1)Effect of Recombinant ApoA-I Milano on Coronary Atherosclerosis in Patients With Acute Coronary Syndromes: A Randomized Controlled Trial. Steven E. Nissen et al.JAMA. 2003;290:2292-230
(2)A Truncated Species of Apolipoprotein B (B-38.7) in a Patient With Homozygous Hypobetalipoproteinemia Associated With Diabetes Mellitus Ken Ohashi et al (Arteriosclerosis, Thrombosis, and Vascular Biology. 1998;18:1330-1334.)


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