目的:糖尿病患者では脳血管障害(CVD)を来す事が多く、介護を必要とする場合がおおい。また同じ動脈硬化に起因する虚血性心疾患(IHD)を併発している場合もある。IHDの併発の有無でCVDの予後や病型に差違があるか否かを検討した。
対象;約1500名の通院患者がある糖尿病外来に通院する患者のうち平成12年と13年にCVDにて入院した連続21名(女性9名, 男性12名)を対象とした。
方法:後ろ向き断面調査
結果;IHDが認められたのは6名(女性2名, 男性4名)であった。高血圧、高脂血症、喫煙、肥満といった糖尿病以外の危険因子については、IHDの有無については差が認められなかった。心房細動は2名に認められ1名はIHDの既往があった。
身体障害が残ったのはIHD無しで7名(47%)、有りで3名(50%)で差は無かった。しかし認知機能障害が残ったのはIHD無しで3(20%)名に留まったのにたいして有りでは4名(67%)で差を認めた(p=0.035)。
病型については出血性脳梗塞の3名は認知機能障害を残し3名ともIHDを併発していた(50%)。一方でラクナ梗塞や脳底動脈循環不全など血行動態性の脳虚血がIHDのない患者で10名を占めた(67%)。
結論;IHDの既往のある糖尿病患者は出血性脳梗塞などの重篤なCVDを来しやすく、後遺症も重くなると思われる。
考察;Crouseらはスタチンの長期試験より1次予防試験では3.1%であったCVDがIHDの既往の有る2次予防試験では7.3%もCVDを起こしていた事を報告していた。
IHDの既往の有る患者はCVDを来し易く予後も悪い可能性が今回の検討で示唆された。
IHDの2次予防ガイドラインを踏まえ、より厳密な危険因子のコントロールを行い、CVDの1次予防を積極的に行う必要があると思われた。