移民したインド人、また急速な生活習慣の変化に曝されている、都市部のインド人では虚血性心疾患に罹患する割合が高い。危険因子を解析するために、南インドのバンガロールで30歳から60歳までの初発の急性心筋梗塞患者200人を登録し、ヘルニア、耳鼻科疾患、白内障などの受診者200人を、年齢と性を一致させて対比した。
危険因子として有意だったのは、喫煙、WHR高値(内臓脂肪)、高血圧、耐糖能異常、顕性糖尿病であった。負の危険因子としては、菜食主義、高等教育、高収入が挙げられた。
この研究では、対照群のうち119名は非喫煙者であったが、心筋梗塞群のうち132名が喫煙していた、一日10本以上の喫煙では、相対危険度が、6.67と跳ね上がっている。
心筋梗塞群のうち半分以上の110名が 随時血糖 >7.77mmol/Lであり、明らかな耐糖能異常を伴っている患者は対照群では57名のみだった。これらを除いても、空腹時血糖FBS>4.94mmol/Lでは、相対危険度2.84,
FBS>5.78mmol/Lでは相対危険度5.48に昇っている。
BMIは22.8 vs 22.6と差がなかったが、臍周囲/臀周囲比(WHR)は有為に高く、内臓脂肪高値を反映しているリンゴ型肥満と考えられる。WHRが1SD増加する毎に、WHR=0.90-0.93;
odds retio 2.20, WHR>0.93; odds retio 3.84と相対危険度が増加している。
低HDL血症、高中性脂肪血症といった脂質異常が認められたが、対照群との差は認められなかった。総コレステロールとFriedmannの式で算出されたLDLは急性心筋梗塞群で高い傾向を示したがTC;
p=0.08, LDL: p=0.14と有為ではなかった。
調査地のバンガロールは南インドの内陸にある。インドのシリコンバレーとも言える場所で、軍需産業から派生した先端技術産業やソフトウエアー産業で知られている。産業構造の現代化とともに、極めて急速な生活習慣の変化にさらされていると思われる。
ピマインディアンやナウルのポリネシア人ほどでないにしても、インド人はヒスパニックや日本人と同様に環境因子によってインスリン非依存性糖尿病を発症しやすい民族である。
宗教上の制約から菜食主義を摂るものが多く、それらの患者では、WHRが低く、高血圧や耐糖能異常の合併が少ない。伝統的な食生活がここでも生活習慣病に対して保護的に働いている。
Title; Risk factors for acute myocardial infarction in Indians: a case-control study. by Prem Pais et al. The Lancet, p358 vol. 348 Aug 10 '96.
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