第27回日本糖尿病合併症学会平成24年11月
【目的】メタボリック症候群にたいするEAP(従業員支援プログラム)の効果につい
て検討した。
【方法】社員に対する特定保健診査で、支援の対象に含まれた325
名について、2008年から2010年に掛けて、特定保健指導を受けた42名と、指導をしな
かった283名で、2011年から12年に掛けて、内臓脂肪蓄積、高血圧・高血糖・脂質異
常症、喫煙が改善されたかを検討した。
【成績】(1)内臓脂肪蓄積:腹囲につい
ては、非指導群では91.3cmから89.5cmに有意に低下したが、指導群では91.0cmから90
. 6cmと変化なかった。
(2)高血圧:非指導群では血圧が改善したのは27名、増
悪したのは21名でそのうち19名は投薬が必要になった。指導群では改善したのは6名
だった。一方、増悪した10名のうち3名に投薬が開始された。収縮期血圧は、非指導
群が136.5mmHgから135.0mmHgに、指導群は133.5mmHgから131.4mmHg改善した。
(
3)高血糖:非指導群では血糖が改善したのは8名、増悪したのは10名でそのうち5名は
投薬が必要になった。指導群では高血糖の指摘が無かった者の1名に投薬が開始され
た一方、正常に改善したのは2名だった。非指導群がHbA1c[JDS値]5.40%から5.31%に
改善し、有意に低下した。指導群は5.24%で変化なかった。
(4)脂質異常症:非
指導群では脂質が改善したのは68名、増悪したのは51名でそのうち6名は投薬が必要
になった。指導群では12名が悪化し、改善したのは4名だった。中性脂肪は、非指導
群が222mg/dlから193mg/dlへ有意に低下した。指導群は187mg/dlから184mg/dlと同じ
であった。HDLコレステロールは、非指導群が54.6mg/dlから54.8mg/dlと同じであっ
た。指導群は57.8mg/dlから55.1mg/dlへ有意に低下した。
(5)喫煙:非指導群が
禁煙に切り替わったのは12名、喫煙を再開したのは2名で喫煙者は151名から141名に
減少していた。 指導群では喫煙者は既に10名に減っており、喫煙を再開した者はな
く、更に1名が禁煙に成功した。
【結論】指導を受けた群は、喫煙が大幅に減
少していたが、肥満・血圧・HbA1c・HDLコレステロール値について、改善が滞ってい
た。一方、非指導群でも徐々に改善が見られた。
(1)メタボリック症候群にたいするEPA支援の効果について発表します。 当社が依頼している、EPA従業員支援プログラムの指導の内容は、初回に45分の面談を 行い、3ヶ月までの間に、5回のメール、2回の電話で、毎日付けて行く、歩数・血圧・ 腹囲・体重・食事の内容の記録について、改善点を促し、6ヶ月目にまとめを行う物です 。計測・記録の習慣漬けで、自身の身体イメージを見直すとともに、ミニクイズに答える 事で、運動量や食事が減量にどのように結びつくかを学習します。たとえば、デニッシュ とジャムパンのカロリーの違いなどが、クイズに出ます。
(2)過去3年間(2008年から2010年)に、特定保健指導を受けた43名と、支援の対象と されたが受講を希望しなかった283名について、2011年と2012年の検診結果を比較し、指 導の効果の永続性を検討した。
(3)特定保健指導の翌年は、中性脂肪が低下し、HDLコレステロールが上昇し、指導の 効果が見られましたが、血圧も上昇していました。肥満については変化はありませんでし た。しかし、2011年と2012年では中性脂肪とHDLコレステロールは指導前に収束しつつあ ります。
(4)肥満については、指導を受けなかった群で改善がみられました。その結果、BMIに ついては、介入群より自主的に取り組んだ群の方が有意に低くなっていました。
(5)血圧では、介入群では、内服が必要な人は現れませんでしたが、2011年から12年に 掛けて、血圧の平均は有意に低下しました。自主的な取り組みをしている群では、内服の 開始が大幅にみられたのにも関わらず、収縮期血圧は、11年12年で違いはありませんでし た。
(6)高血糖については、介入群では2011年12年ともに、低い傾向を示しました。しかし 、有意差はありません。自主的に取り組んだ群で、A1cは減少していましたが、治療の開 始に伴う所が多いと推察されました。
(7)高脂血症の該当者は、両群で増加しました。中性脂肪値は、自主的に取り組んでい る群で、減少を認めましたが、正常型の増加も見られたものの、要治療・治療中も多くな っていました。介入群とのあいだで2011年/2012年ともに、有意差はありませんでした。
(8)HDLコレステロールはp=0.13と2011年は高い傾向にありましたが、介入群で減少し 、差は少なくなりました。LDLコレステロールは協和の直接法で、2011年p=0.0522と介入 群で低い傾向にありましたが、増加し、差は少なくなりました。
(9)指導を受けたことのある群は禁煙を維持している一方、自主的に取り組んだ群でも 喫煙者は減る傾向にありました。高血糖・高血圧・脂質異常症の危険因子の集積について は、介入群の方が少なかったのですが、2012年には両群に差が見られなくなりました。
(10)25年度から29年度にかけての第二期特定健診・特定保健指導については、単一健
保である、当事業所では、健診9割・指導6割の目標が課せられています。検診については
100%を達成していますが、指導率は今まで3%ほどでした。
後期高齢者支援金の加算制度
に鑑み、大幅に参加者を増やす努力を払う予定であります。後期高齢者支援金の加算・減
算制度につい加算の対象となる保険者は、特定健康診査又は特定保健指導の実施率が実質
的に0%の保険者とし、加算率は0.23%となります。(平成24年7月13日保険局総務
課医療費適正化対策推進室)
しかし、指導は永続的ではなく、一方で自律的な改善も見込める事から、時間/費用に特定保健指導が見合う物か?加算を行うほどの強制力が妥当なほど、有用か、更なる立証が必要だと思われました。
来年度は、特定保健指導での脱落率と、結果の変化について検討したいと思います。