スギ花粉

2013-01

 杉花粉症は毎年、建国記念日から始まり、お彼岸に檜の花粉症に入れ替わります。2012年と異なり、2013年は房のつきも良く、昨年の3倍ほどと、神奈川県の調査では 報告されています。
すこしでも効き目を実感するためには、発症する前から、内服を開始することが望まれます。
2月1日から呑み始めると、粘膜の刺激がない状態を維持しやすくなります。
一度出たアレルギー反応を沈静化するのは大変なのです。
良く用いられる抗ヒスタミン剤は、その中の抗コリン作用で鼻汁の分泌を抑えつつ、掻痒感を軽減し、くしゃみ反射を抑制します。また、鼻粘膜の充血を抑えることで、鼻閉を軽減します。
しかし、眠気の副作用が強いです。最初の頃から使われている、レスタミンというお薬は10mgを1日3回のむことになっています。しかし、睡眠導入剤として、ドリエルという名称でも売っています。この場合は、1回に50mg内服することになっています。
また、抗コリン作用が強いと、鼻水を減らすだけではなく、唾もへらすので、口が渇きます。おしっこが出にくくなる尿閉や、眼圧などの副作用も懸念されるところです。
中枢神経のヒスタミン受容体に、親和性が乏しい、第二世代第三世代ではどうでしょうか。残念ながら、抗ヒスタミン作用・抗コリン作用が少ない分、副作用は減りますが鼻症状スコアも、旧来の薬よりは改善が乏しい(非劣性を確認できない)場合も見られます。

鼻症状 眠気
プラセボ 6.13 12.9%
2世代 4.39 50%
3世代 5.39 13.6%

眠気のない薬は、点鼻のステロイドが比較的全身への副作用が少なくてすみます。しかし、注射のステロイドは、副腎不全や生活習慣病の悪化などの、悪弊が強くなります。


ロイコトリエンを邪魔する、オノンやシングレアという薬は、鼻閉に効能があり、喘息の薬でもあるので、咳を伴う花粉症の患者さんに向きます。また、抗ヒスタミン剤と違って眠気は少ないです。ただし、鼻汁分泌を減らす力も弱いです。
粘膜をレーザーや電気メスで焼いてしまう方法もありますが、これは飛散が始まってからでは効果がありません。夏から秋に掛けて数回通院し、1~3年間は効果があります。しかし、粘膜が再生すると再び症状が出てきます。
2014年を目安に、口腔粘膜へのスギ抗原舌下投与が保険適用になると、選択枝が広がると思われますが、2007年民間薬のスギカプセルでアレルギー事案があったため、開発が停滞していました。
舌下投与は維持濃度の千分の1の2JAUから開始し、20、200、2000と濃い抗原に切り替え、滴下も1滴から20滴とふやしていきます。
これを突然、花粉の原末そのもので行うと、咽頭の粘膜なども含めて、アナフラキシーショックを起こしてしまうので、先ほどの民間薬の事案のように死亡事故が懸念されます。
投与する抗原のエキスをを精確に計りながら徐々に量を増やしていくのが安全確保の上で不可欠です。


齲歯・うし

2013-02

虫歯や歯周病は、単に咬むのが不自由になることだけではなく、全身の健康にも影響します。
ブラシで磨いても、歯の間は糸ようじなどで磨かないと、食物残渣が残ります。
残渣や歯垢は自分で磨けても、石灰化して歯石になってしまうと、その下の炎症は除去できません。
まして見える範囲の歯石が、歯肉の下に伸びていると自分でも判りません。
痛くないから、ぐらぐらしていないから、歯医者には行きませんというのではなく、せめて年1回は受診して、歯石除去などの予防を心がけましょう。
慢性の炎症は、TNF-αなどのサイトカインを誘導し、糖尿病などを悪化させます。コレステロールも細菌により変性し動脈硬化を引き起こしやすくします。
歯肉から入った菌は心臓の弁を破壊したり、脳の膿瘍の原因にもなります。
煙草のなかのニコチンは血管を引き締めるので、歯茎の血流を少なくします。乏酸素では嫌気性菌も活発になります。また、舌癌など口腔内の悪性腫瘍も煙草は増やします。
アルコール飲料や清涼飲料水は有機酸がエナメル質などを溶かします。酢やしぼりたての野菜ジュース・果物ジュースも同様です。食べたら磨くだけではなく飲んだら磨くも大切です。


風しん

2013-03

セックスする
感染している人と接触する
受胎する
→感染していた接触者が発症する
二次感染者の妊婦が発症する。

風しんは、感染した後2から3週間で発症します。しかし、発症の1週間前からウイルスを排泄します。すれ違った人に感染させるのは、発症する前からなのです。
妊娠を予定していない人でも、発症する前だけど感染していてウイルスを散らしている人と接触することはあるでしょう。妊娠も想定していない人と、発症も想定していない人、注意しようにもやりようがありません。
先天性風疹症候群は、難聴と白内障・心奇形などが起こりえます。
4週までに風しんを発症すると5割以上の確率で胎児に影響が出ます。しかし、妊娠を自覚し、かつ他人にも判る20週以降の妊婦と胎児には影響が余りありません。そして、明らかに発症している人とは、その時期の妊婦も避けるでしょう。
しかし、先に述べたように、注意することは無理です。注意とは何か?麻しん風しんウイルスを流行の中心である、20-49歳の男性が接種して、繭の様に社会全体を覆って守ってあげるしかありません。
ワクチンで避けられる病気は風しんだけでは有りません。2007年の麻しん流行の折に、2つの成分の入ったMRワクチン・麻しん風しんワクチンを接種する人が多ければバリアも高く出来たでしょう。しかし、値段が半分の麻しんだけの単味ワクチンしか接種せずに終わった人も多かったです、医療機関や教育実習などに出向く折に接種を推奨されたのは麻しんどまりだった場合も多かったです。
ワクチンの無い病気サイトメガロウイルスや寄生虫のトキソプラズマも胎児に影響を与えます。それでも、梅毒や風しんのように避け得ることをしらみつぶしに対策する事は次世代のためにも有用です。


グリコヘモグロビン

2013-04

HbA1c(エッチビーエイワンシー)は赤血球が血中のブドウ糖で糖化変成したヘモグロビンの分画を指します。糖化ヘモグロビン・グリコヘモグロビンとも呼びます。日本では糖尿病学会が独自に定めた基準で運用してきましたが、欧米の指標NGSP[National Glycohemoglobin Standardization Program]に逢わせる事となったので、正常のひとは+0.3%、境界型から中等症の人は+0.4%、HbA1c10%以上の重篤な人は+0.5%、渡される検査値が高く記載されます。
2013年6月に行われた熊本での糖尿病学会では、合併症を予防するためにはHbA1c7%を切る様にという宣言が出ました。hbA1c7%を切るためには空腹時130mg/dl・食後2時間で180mg/dlが目標の血糖値になります。低血糖などを繰り返す場合は8%を目安とし、出来うる限りの正常化の目安として6%を掲げています(成人での目安で妊娠例は除く[より厳しい目標が妊娠例には求められ、世界的に推奨されている血糖コントロール許容値は食前血糖値100mg/dL未満、食後1時間血糖値140mg/dL未満、食後2時間血糖値120mg/dL未満です。])


アレルギーと化学物質

2013-05

硫酸や水酸化ナトリウムなどの物質の性質により、化学的なヤケドを起こす物は、危険性の評価がしやすいです。また、有機溶媒の化学的性質に拠る障害の予防、発癌・血液や中枢神経への影響は濃度管理を行う事で回避出来ます。
保護具も適切に使うことで、障害を回避出来ます。しかし、防毒マスクの口に接する部分をベトベト触ったりすると、せっかく吸着して奇麗になった空気にトルエンなどの溶媒が気化して吸い込んでしまうので、適切な利用法は身につけないと行けません。
ひび割れた手や長い爪などでは、爪やヒビに溜まった対象の化学物質が手袋をすることで、閉じ込められ、湿布の様に局所で障害や吸収の増加を招く恐れが出ます。
健康だったら皮膚が跳ね返すバリアになりますが、ひび割れは侵入門戸に成りかねません。もっとも保護クリームは有機溶媒がとけ込みやすいので、作業前には良く洗い流す必要が有ります。
保護眼鏡さえしていれば角結膜炎に成らなかったと言う事例も散見されます。直接目に入らなくても、ソフトコンタクトにも先のハンドクリームの様に有機溶媒が溶け込み易い事が安全性データシート(SDS)などにも記載されています。
特異的な反応、作業資材に対するアレルギーが出る場合があります。他の作業者にはでなくても、その人には特別に配慮が必要ですし、濃度管理が作業区分を満たしていても症状が出る困難さがあります。
SDSで見るときは皮膚感作性という所で見ます。それでもSDSは会社によって書き振りも異なるので、読み比べて下さい。それでも、稀でも出る人は出るので絶対は有りません。
さらに、困難なのは手袋やマスクのラテックスやビニールの成分にアレルギーが出る人も居るので、保護具が逆効果になる残念な場合が有るのも否めません。
アジュバントという言葉もあります。免疫を強めるというと良い作用の様に聞こえます。ワクチンなどで抗体を作る時に、アルミや油脂を加え、作り易い様に補助する事です。
しかし、グリースとタルク、排気ガスの粉塵とスギ花粉、こういった組み合わせて、製造する資材や製品に対する直接のアレルギーだけではなく、他の何気ないアレルギー疾患が後押しされ顕在化する事例も多く見受けられます。無水フマル酸を扱う作業者では、高濃度に曝されたら、46%は結膜炎を、40%は鼻炎を、14%は喘息を発症したそうです。一方、低暴露では20%が結膜炎と鼻炎、喘息は無しだったという事業場の報告論文も有ります。


旅する、蚊

2013-06

タイヤと蚊には、どんな関係があるでしょうか?
ブラジルは中古タイヤ輸入を制限したことがあります。理由として「健康上の問題」、蚊を指摘しました。
リトレッドする目的で輸入したタイヤ、そのタイヤの中の溜まり水や泥に潜んで蚊の卵が海を渡りました
1985年に日本からテキサスに、1990年にアメリカらイタリアに、ヒトスジシマカ(Asian Tiger Mosquito)が、生息範囲を広げました。
アメリカには、トリが西ナイル熱ウイルスを持ち込み、蚊とトリのウイルスの生活環が完成し、1999年にヒトに脳炎を起こす流行が生じるようになりました。ウイルスの起源としては、イスラエルで見つかったガチョウのウイルスの配列が最も良く似ていました。ニューヨーク近郊から、鳥の渡りによって次第に、中西部から太平洋岸へと範囲を拡大させて行きました。
イタリアでは、媒介する蚊と、インドからの帰国者がチクングニア熱を持ち帰ったことから、蚊とヒトのウイルスの環が完成し、300名あまりに発熱と関節痛を起こす熱帯病が流行しました。
古タイヤの輸入による蚊の移入が無ければ、イタリアのチクングニアも集団発症しなかったはずなのです。北米の西ナイル熱も蚊の制御は鳥の間の感染を減らす意味でも重要です。
日本でも、もともと居たヒトスジシマカに、昭和17年にマレーから帰国した軍用船の船員らが運んだデング熱が結びき、長崎市だけで、7月は十数名、8月は二千人、10月までに1万数千人の患者が生じた事例がありました。日本全体では二十万人が感染したのではないかと推測されています。
海外での出張先では、蚊に関する感染症があることを留意しましょう。
工場の中では、植木皿や空き缶などの溜まり水が無いようにしましょう。雑草は蚊の休み場所ですので、刈り取り通風を良くしましょう。そのような2Sが「作業環境管理」として大切です。
草の汁が蚊の主食です。血を吸うのは卵を産む前の特別なデザートで、蚊の生涯で数回だけです。草刈は兵糧攻めの意味もあります。
虫除けや長袖、蚊帳などの保護具も大切ですが、環境管理が優先されます。
「健康管理」では、日本脳炎を除いて、有効なワクチンが無いことが課題です。マラリアには治療薬・予防内服がありますが、デングなど蚊が媒介するウイルス性疾患に治療薬はありません。検疫所には検査キットがありますが、日本の普通の病院では検査も碌に出来ません。検疫所を通過しないで、症状を正直に申告することも大事な健康管理です。
通過して持ち込んでしまうと、日本の中で伝播させてしまうことも覚えておいて下さい。


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