調理器具での怪我

2016-Jan

自宅でも正しい器具・治具の使い方をしましょう。
2015年11月には2名家事の怪我が診療所に受診しました。
野菜のスライサーは便利ですが、最後まで削ろうとおもうと指の皮まで捲れてしまいます。
刃が直線では無くV字型のものは切れ味が良いのですがVの部分が上下に跳ねるので指には危険です。
国民生活センターのpdfでは、表示で本体に野菜を抑える治具の使用を奨めている商品も少なく、これがまた怪我を呼びます。


アルコール対策

2016-Feb

対策の指針などを読むとカタカナの符号が羅列されるので、どんな事をすれば良いのかと怯える事もあるかもしれませんが、日常の行動観察や声掛けの範囲内なので、困った上司・部下にも、応用してみて下さい。
一応、就業規則では社内は禁酒ですが、頻繁に呑み会に誘い誘われたりすると、減らす努力が揺らいだり、職務上仕方ない事だと自己肯定の道具にされたりします。問題飲酒の例があったら、飲酒を誘発・再発させない職場風土作りも大切です。
春の健診では、1週間に2升以上呑んでいると目されている人が5%、1週間に1升から2升呑んでいる人が2割くらいになります。適正飲酒は、日本酒では1合、焼酎では100ml、ビールでは500mlになります。酎ハイは7%の商品が多いので350ml缶です。薄めて何倍か呑んでいると蒸留酒は計算困難になるので、家で飲むなら、1週間やひと月のお酒の購入量の家計簿つけも、実態把握に有効です。
問題飲酒の問診票には簡便なCAGEと久里浜式と言われるKASTや国際比較に使われるAUDITがあります。CAGEは2点以上だと詳しく調べましょうということになります。日常の会話声掛けのなかで、一度に4つやると怪しまれますが、2か月かけて1問づつ問いかけを投げてみて口を綻ばすようなら、相手の状況把握が出来ます。遅刻や作業能力の低下がありCAGEで引っかかるなら、問題飲酒の背景に依存状態も危惧されます。KASTやAUDITの問診の中には自傷他害など直接的な質問もありますし、当然のことながら飲酒中は自己責任能力も低下しますから、素面なら躊躇しただろう喧嘩や自殺も、事件化されてしまいます。
「イネイブラー」「イネイブリング」Ableという可能という形容詞にEnをつけて動詞にしてER 「可能になる様、助ける人」ing「可能になる様、支援する」という、心理学的な用語があります。
本来は自主自立を支援することなのですが、逆説的に転用され、自律を妨げ依存状態を継続するのを助ける状況の事にも、使われています。 失敗の後始末をしているうちに、問題を抱えた人を上司が尻拭いしてくれるのを当然の様に受け止めたり、「長男の様な夫」という言い方があるように配偶者が助けてあげる事そのものに生き甲斐を感じてしまって成長や自立を受容できない場合を指します。そうなると、共感や傾聴が大切と言っても、虻蜂取らずになる事があります。予め、「酒気を帯びて仕事をしない」「遅刻はしない」など言語化文書化した上で規律に反した場合は事実を率直に告げる必要があります。
状況を率直に把握する事、事実をありのままに報告する事。報告の事をブリーフィング・でブリーフィングと言いますが、「ブリーフインターベンション」というのは報告をすることでアルコールの問題行動に介入するそして気づきや自主性を引き出す面接手法です。
まず、お酒の量の把握です。
次に、日記を付けて貰います。
呑んで困った事があったか書き添えて貰います。
日記を続けることは、問題が目の前にあるということを、本人が理解している証拠です。嘘を書くようなら困りますし、日記をすっぽかすときは否認・逃避しているということになります。
それでも掛けた範囲内で、2週間後とかひと月後にまた見返してみて、この日お酒が少なかったのは、こういういいことがあったからだなどの支持が得られれば長期的には減って行きます。「頭痛で痛みどめを使っていたが使わなくなった」「時間内に仕事が終わるようになった」褒めるところや喜ぶことも見つけてあげると、本人のやる気が引き出されます。


「事業場における治療と職業生活の両立支援のためのガイドライン」

2016-Apr

 治療と職業生活の両立支援に関するガイドラインが作成されました。
 平成16 年に厚生労働省により「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」が作成され、平成21年と平成24年には改訂されていますが、癌で闘病しながら勤務を続けている人々も30万人を超え、さらに肝炎や脳血管障害後など、多様な配慮・支援が必要な従業員が居ります。
 昔なら、癌で仕事を諦めるか、手術したらすっかり治って復帰か、結論が出易い状況でした。
 しかし、手術以外の治療法が進歩するとともに、通院しながら治す。治療を通じて進行を遅らせて体は元気なのだが根治ではなく共存なので通院は欠かせないという人たちも現れました。
 ガンの部位や診断名だけでなく、極めて個別化して、治療法や予後を一概に扱え無いようになったのです。「意識啓発」というのは個々の事情を汲みましょうということです。
 マニュアルというのは一本道で外れてはいけないように思われるでしょうが、多岐にわたる症例の一つ一つに最善の方法を本人と勤務先・医療機関が連携してその人にあった生き方を探りましょうというのが趣旨になります。
 一日か半日かという休みの取り方では無く、時間単位の勤務変更が挙げられているのは、照射で治療する場合、週5日6週くらい通うのですが、台の上に上がって放射線を浴びている時間は5分程度で半日も要らないような場合があるのです。でも、治すまで一月半出社するなというと、働けるのだからそれも違うでしょうという事になります。
 休みの取り方だけでは無く、在宅勤務などの取り入れ方もありますし、どのような方策があってどれが適切かを、両立支援プランとして話し合って提示すると、医者も勤務先の様子が把握できますし治療スケジュールが立てやすくなります。
 働きながら治療を受けることで本人も失職や資金の不安が軽減します。
 分子標的療法と言って、癌が増殖するために必要な仕組みを邪魔してあげる薬が出てきました。2週間おきの抗体の注射を受けたり、場合によっては内服だけで癌が縮小する例も出てきました。しかし、この薬を回避する術を癌も編み出して突然薬が効かなくなる「エスケープ」を起こすと別の手を打ちましょうと品を変えて治療する方法が増えて来ています。叩いて根治する訳では無いので、従業員の側としてはいつまでも働ける保証がないといつまでも続く治療を続けられない訳です。
 内視鏡で通院や生命保険金のおり無い1泊入院で癌を取れるようになりました。でも、癌になりそうな母地の胃の粘膜があるので、毎年3%ほど別の場所から新たな胃がんが出て来て、毎年の内視鏡が欠かせなかったり、肺がんで亡くなっていた筈の人が長生きできるようになって同じ理由で起こる喉頭がんも併発したりする人も現れます。
 いつまでも決着がつかないというのも、心理的負担になり、困る迷う患者さんも増えて来ています。


派遣労働者の5管理

 

2016-May

 派遣労働者は派遣元と派遣先の2重の管理を受けることになっています。
 派遣元の管理は小規模分散型であったり、管理体制の構築の困難な中小企業であったりするので、行き届かない場合があります。
 健康管理のうち一般定期健康診断やストレスチェックは派遣元の責任になります。
 健康診断は例えば横浜ゴムのような大きな事業所に費用負担をした上で委託したとしても、そこでお終いでD判定の印がついて居ても見落とし見送りで措置されていない事もあります。
 事務所に5人詰めていて10人ずつ6箇所の工場に労働者を派遣している支店の場合は、事業所としては65名抱えているので、産業医の選任や衛生委員会の開催などで定期健診の結果を確認する手筈になっています。
 このような健康管理や統括管理がなされている前提で派遣先は労働者を受け入れている訳ですが、自社の社員にも健康に課題を持ちながら働いている人が居るように派遣社員も闘病しながら働いている人が居ます。
 事情を斟酌しながら働いている分には良いのですが、把握しないままですと、適切な作業管理が行えないので、職場で倒れる事もあるかもしれません。熱中症の労働災害では死亡事例で糖尿病などの持病がある場合が多いですが、検診が行われていなかったり事後措置が不十分であったりします。トラックなど運輸業の労災死亡事故や過労死でも立件する時は、この一般定期健康診断の未実施を端緒にすることがあります。
 労働契約法 第五条の使用者は、一義的には派遣元になりますが、熱中症など作業環境管理や作業管理などの責任は、派遣先にも及びます。派遣元が労働衛生の5管理を構築していない場合、結果として病者の就業禁止など安全管理義務を派遣先も十分果たせないかもしれません。
 派遣法は労働衛生だけでは無く、基準法や均等法についても派遣元・派遣先の役割分担を決めています。夜勤や残業などの支持は派遣先ですが、派遣元が36協定などを交わしていないと触法の可能性もあります。倉庫業の過労死の事案では36協定で刑事罰を出した事案もあります。
 総括管理と労働衛生教育の責任分担、健康管理やその事後措置の連絡調整が出来ているか?相手の顔が浮かび、日頃よく話しているか?思い返してください。

 『健康に関する情報に基づく派遣労働者に対する不利益な取扱いの禁止
次に掲げる派遣先事業者による派遣労働者に対する不利益な取扱いについては、一般的に合理的なものとはいえないため、派遣先事業者はこれを行ってはならないものとすること。なお、不利益な取扱いの理由がこれ以外のものであったとしても、実質的にこれに該当するとみなされる場合には、当該不利益な取扱いについても行ってはならないものとすること。
一般健康診断又は長時間にわたる労働に関する面接指導の結果に基づく派遣労働者の就業上の措置について、派遣元事業者からその実施に協力するよう要請があったことを理由として、派遣先事業者が、当該派遣労働者の変更を求めること。(派遣労働者に係る労働条件及び安全衛生の確保について.平成21年3月31日付け基発第0331010号 改正基発 0930 第5号 平成27年9月30日)』
これは通知レベルですが、情報交換は密にすることが欠かせません。

ラニャーニャ

2016-Jun

熱中症の、労災での死者数が最も多かったのは、平成22年の47名です。
エルニーニョからラナーニャに切り替わった直後の夏でした。
平成28年も、ちょうどその切り替わりの年になります。
大変暑い夏になることが予想されます。
汗でべとべとでは体温が下がりません。通気の良い制服、背中にタックをつけてメッシュを通すようなものを例年要請していますが、叶えて貰えていません。
腰パンとシャツ出しというと、悪い服装ということになってますが、煙突の様にズボンやシャツのなかを上昇気流が抜けます。通気が皮膚の表面を覆う湿度百パーセントの水蒸気の膜を吹き払うと、汗が乾き気化熱で体温が下がりやすくなります。
100mlの汗が乾けば体温が1度下がりますが、ベトベトにぬれているだけでは下がりません。
100mlの汗をかくためには、汗をかくための体調作りが大切です。「暑熱馴化(しょねつじゅんか)」といって消防署の訓練では、制服を着こんで40分くらいマラソンをします。突然熱くなっても、自律神経が寝坊していると、汗の出方がゆっくりなのです。無理な運動をすることで、ああ又か!?と素早く汗をかくことが出来ます。
歩いて通う電車でオシクラ饅頭するのも一種の暑熱馴化です。
汗をかくのに十分な朝食を食べるのも大切です。
夜更かし、深酒では、体調を崩すのは当たり前です。


視力と「だろう」運転

2016-Jul

白い杖をもっていないから、見えているだろう、そう思い込んでいると、実は相手が目が不自由な人かもしれません。ユニバーサルデザイン・バリアフリーとか言いますが、見えない人も安心して出歩くことが出来るように、周囲も配慮すると世の中が上手く回ります。
視力の輪っかですが、視野の一部が欠けている人は、「流し目」で眼の隅に輪っかが来るようにして、右が空いているとか、判別することが出来ます。そういう人は視力は統計上「1.2」などとキチンと出るのですが、真ん中が真っ黒で真正面が見えないような人も居ます。
真正面は見えるが、横が見え無いヒトには、小さなメガネを掛けているひとなどがそうです。真下をレンズが覆わず、両側の視野が10度ほどは矯正されないでぼやけているので、右左折してくる車を見落とすことがあります。
高血圧や糖尿病では眼底出血を起こすことがあります。出血した血の塊がひきつれて目玉のなかを支えるヒアルロン酸のゼリーの玉の「硝子体」が濁ってしまうと視力を失うことになります。去年見えていたのに今年は見えません。硝子体を吸い取ってガスやシリコーンで置き換える硝子体手術もありますが、スクリーンにあたる網膜が歪んでいると完全には視力は回復しません。
黄色の網膜のところどころ白く掠れた所があります。黄斑変性症といってレーザーで治療をしていますが、明暗や指の数は判りますが、視力は0.1以下です。写真で見えるように網膜までの経路は澄んでいるのですがセンサー・フィルム・スクリーンに支障があって、視力をだせないでいます。
濁って向こうが見えないようですが、この人の視力は0.3あります。白内障なので、レンズを取り換えれば、日帰りか1泊2日の手術で視力を回復することは容易です。ただし、自分のレンズと違って人工水晶体は焦点が固定です。遠近両用メガネの様にレンズに2つの焦点がある人工水晶体もでていますが、使いこなすことが難しいので評判は芳しくありません。ゴルフしかしないで書類は見ないなら、2.0のレンズにして近くは無視するのも方法ですが、たいていは近くにピントを合わせて遠くを見るとき運転やゴルフの時はメガネを併用する事を選択することが多いようです。
右だけ、左だけ見えなくても運転免許は取得できます。しかし、視野は狭くなるので、通常以上に左右に首を振って警戒を怠らないようにする必要があります。
統計では良い方の目が0.5未満として日本では160万人強の人たちが社会的ロービジョンか失明ということになります。うち手帳交付の対象になっているのは30万人ほどです。
運転免許の目安0.7と0.3で平塚製造所の職場健診を見返してみると、50名ほどは運転免許を更新するのに詳しい再検査が必要な人かもしれません。ただし、視力検査の時にメガネをはずしていたり、デスクワークにあった近業用のメガネを付けていたりするなど、50名のなかでメガネやコンタクトを替えれば適切な視力をだせる人もいると思います。ただし、やれば出るというのと、今困ってないから何もしていないとの区別は難しいですから、片方ぼやけて歩いている人は50人に一人はいると思っていてください。
ある事故の例ですが、駐車場から出ようとしたところ、右から来た車にぶつかってしまいました。右に首を振って見ていても、発進時点ではハンドルを切る方向に正対しますから右への視野は欠け気味になります。運転者だけが気を付けても、歩行者でも自転車でも視野が欠けていることを、念頭において行動する事が大切ですし、最初に戻りますが、どうせ相手は「見て無いダロウ」運転くらいの気持ちで対応するのが正解です。


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