2006-04-21
低ナトリウム血症という病気がある。生物が陸上にあがってから、塩分や水分を周囲の環境(=海)から得られなくなり、ADHという尿を無制限に垂れながさず、水気を体に引き止めるのに必要なホルモン(抗利尿ホルモン;anti diuretic hormon)が働く様になった。
腫瘍、特に肺癌では、このADHを不必要に合成してしまう、そんな病気がある。水っぽくなって、塩気が効かなくなり、脳が浮腫むほか電位差が少なくなって神経作用が減弱し、意識を喪い死に至るSIADH異所性抗利尿ホルモン不適合分泌症候群を起こすことがある。血清のナトリウム濃度が120mEq/L台になるとぼーっとして、100mEq/L台になると意識がなくなる、
これを治すには今までは水分制限を行っていた500mlに制限すると吐息のなかの水分とほぼ一緒になる(冬になると息が白くなるあの水分)。ここまで絞ってなんとかナトリウム濃度を維持する。塩気を補充するだけではそれを上回る水分に押されて薄まってしまう。
バソプレシン拮抗性SIADH治療剤. OPC-33509が漸く承認されて市場に出る。
もっとも、低ナトリウムに悪い事ばかりがある訳ではない。意識が薄らげば、痛みや苦しみを遠ざける事が出来る。モルヒネやほかの薬よりも効果的で自然だ。そうおもって低ナトリウムの補正を見送っていると「薬があるじゃないか」と、医師の過失を責め立てる時代が来たとも云える。もろ刃のヤイバだ。
アステラス製薬(旧山之内)もバソプレシンV1a及びV2受容体拮抗作用を有する注射剤conivaptan[YM087]を開発し米国での発売を発表している(H18.4/27 pdf)
山之内の稼ぎ頭の一つリピトールとクロスライセンスに出していたが、出した相手のWarner-LambertがPfizerに買収され、ファイザーは要らんということで独自の発売になった。
未承認薬使用問題検討会議
第七回で YM097が議論され、第八回で検討を推進するとなったらしい。
しかし、しょぼい。OPC-33509は忘れられていたらしい。
堀田座長 それでは最後、コニバプタンについてはいかがでしょうか。これは低ナトリウム血症の治療薬で、入院患者を対象とするということで、日本でこれがどの程度対象になるのか私は存じませんが、体液正常型の低ナトリウム血症というのはどのくらいのものですかね。
寺岡構成員 私の理解によると、例えば慢性の消耗性疾患とか、そういう状態において比較的よくあるのではないかと思いますし、なかなか治療しにくい病態のように思いますので、検討の価値はあるのかなと思っています。
有吉構成員 これは作用機序のところに、アルギニン・バソプレッシン受容体拮抗薬というふうに書いてございますが、ちょっとお調べいただきたいのは、SIADH、あるいは抗がん剤のシスプラチンとかエンドキサンを使用したときの低ナトリウム血症、そういうものがもし対象になるとすれば、そんなにまれではないという意味からいえば、その辺をお調べいただきたいと思います。
堀田座長 そうしますと、このものの位置づけについて、もう少し調べてほしいということですけど、よろしいですか。
川原課長 それについては、ワーキンググループで検討していただくということで承知いたしました。会社名はアステラスと書いてございますので、日本が母国の企業でございます。アメリカの方で先に承認がおりたということでございますので。
堀田座長 ワーキンググループの先生の労働がふえそうで心配はしていますが、2番のポサコナゾール、7番のアバタセプト、8番のレナリドミド、9番のコニバプタンをワーキンググループの検討対象とするということで進めさせていただきます。
篠山構成員 9番のコニバプタンなんですけど、大塚製薬が同じようなバソプレッシンV2アゴニストを開発して、それの検討は日本で行われていませんですかね。
川原課長 ちょっと個別品目の開発中のものですと……
篠山構成員 同じようなものが恐らくあるんじゃないかと、ちょっと私も専門が違うので……
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[追記2006-05-16]
で、異所性ADH産生腫瘍の症例に巡り会ってしまった。5年ぶり3名目。前回は、治験終了ということで使えなかったので、大塚製薬にfaxしたら、「フィズリン錠につきましては年末の発売に向けて調整中ですので」と、丁重に断られてしまった。ここで事故をおこしては監督官庁に申し訳たたず、元も子もない?でも、YM087の個人輸入は壁が厚い。
[H18.10/13追記]OPC-33509に薬価がついてH18.10./24から販売されるがゴージャスな値段がついてびっくり。患者数は少ないし、終末医療で用いる性格の薬ではあるが、二・三日で呑み終わるほどの薬でもない。二人部屋の差額ベット代くらいの自己負担になる。
包装: フィズリン錠30mg:1錠、7錠(SP包装)
薬価: 8,734.40円/錠
承認日: 2006年7月26日
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