令和元年7月
ゴルフでの怪我の話をします。メタボの人が偶に体を動かすから痛いのか?運動器に傷害がある人が無理するのが痛いのか?ゴルフの後に診療所を訪れる人が毎月居ます。
ゴルフのスイングは利き手でない方が前になります。右利きだと左です。コースに出た次の週に左肘頭にプニュプニュした腫れが出てきて驚いてくる人が居ます。「肘の滑液包炎」と言います。気になるなら針で刺して滑液包液を抜くこともあります。
滑液包は関節の腱滑りを良くする枕の様なものです。無理なスウィングをすると擦れて炎症になって腫れてくる。これが滑液包炎です。
肩でも生じます。肩を水平に挙げるときに60度から120度の高さで痛い。腱板断裂の事もありますが肩が腫脹している場合、肩の滑液包炎であることが多いです。
滑液包炎を生じるときは、「手打ち」の人が多いです。
体幹を使って打つ人は故障の位置が変わります。骨盤は30度回旋出来ます。股関節も含めれば45度になります。肋骨で固定された上半身=胸郭は5度か10度しか回旋できません。
下半身を使い、スピードをつけ、インパクトが掛かると、筋肉と腰椎や骨盤・大腿骨の間に「剪断力」が働きます。股関節の疲労骨折や腰椎の分離症を起こすのは、スウィングの安定したパワーヒッターです。
上手に打つためにはインパクトの瞬間までボールを見つめ首を回旋して打ちたい方向に素早く頭を巡らします。インパクトまで強い回旋と剪断力があるので首を傷めます。
令和元年8月
妊娠中の健診は平成20年ごろまでは、母胎の保護と胎児の成育が主眼で、5回か6回ほど、妊娠中=妊婦を対象にしたものでした。
少子化と子育て支援のために妊娠中の健診が14回以上に増やされています。
昔より、健診のための休みの回数も増えていることについてはご承知おき下さい。
産科的な管理が進み、身体的な産婦褥婦の健康が守られるようになった結果、精神科的な妊産婦の課題が浮かび上がってきました。妊産婦の死亡原因が自殺・心中が多くを占めるようになったのです。妊娠を知った2ヶ月目と、出産後2週間から4ヶ月の間の自殺や、出産当日の母子心中などの他害が表面化してきました[pdf]。
死亡や傷害はカウントしやすいですが、うつ等の質問表で調べると、約2割の妊産婦にメンタル面の支援が必要なことが判って来ました。そのため平成28年度から希望する自治体に産婦健診2回分の費用を国が半額助成する制度が加わりました。
今までは妊婦健診だけだったのが産婦も健診対象になったのです。
核家族化などで支援する家族が居なかったり、里帰り出産で帰ったら「老々介護の助っ人」に追われて休息どころでは無くなる事例も、次々浮かび上がってきました。産婦の支援としてデイケアやナイトケア・ショートステイを取り入れる自治体も出てきており、ここにも国の補助金が加わっています。加わっていますが、地域の人手や自治体の予算によって、まちまちな対応があり、都道府県を跨ぐ、里帰り出産では住民票がないので支援や見守りの網から漏れてしまう場合もあります。
制度がつぎつぎ発展するので去年と来年では中身が違うこともあります。
最新の情報を自治体に相談しながら子育てに取り組むのですが、妊婦任せ自治体任せでは無く、支援する夫やそのほかの家族の問題でもあるので、今後の男性の育児休暇の取得も増えこそすれ減る事はないと思ってください。
令和元年9月
[ビタミンB12が含まれる食材]貝や青魚、牛や豚の肝臓、海草(焼き海苔)に多く含まれる。植物には含まれないので、宗教上の制限食でも不足する
[ビタミンB12の吸収経路]胃酸でタンパク質から分離する。胃の壁が出す内因子と結びついて、小腸の遠位端で吸収される
胃を切除した人、胃の粘膜が荒れ胃酸が少ない人(ピロリC判定D判定)、胃酸を減らす薬を長く呑んでいる人では、相対的に不足する可能性がある
胃の粘膜に対する自己抗体、抗胃壁抗体・抗内因子抗体のあるひとも吸収が悪い
[ビタミンB12が不足するとどうなるの?]貧血、赤血球や血小板が少なくなる。
赤血球の大きさ(MCV)が100を超えて、大きい人がビタミンB12欠乏のことがある
MCV=ヘマトクリット÷赤血球数
Hct45%なのに赤血球数が400万だとMCVは大きい
筋力が低下する。足がもつれたり、体を支えられなずグラグラする。貧血が無く精神神経症状が先行する例も四分の1ほどある。
[ビタミンB12をどう補うの?]胃腸の問題が無い場合は経口摂取で大丈夫だが、胃や腸を切除している人などでは筋肉注射を必要とする。
手足の痛み関節痛や眼の疲れにと、サプリメント(アリナミンEXやリョーシンJVでは1500μg)などとして売られているが、中に入っている量は多くても、先ほどの吸収の過程の制約で、一食2μg程度、一日に吸収できるのは5~10μg程度である。量が多くても糞に抜けるだけなので、間食の回数を増やし一度にたくさん摂らないのが工夫になる。
肝臓が悪い人では鉄を避ける必要がある
ビタミンB12の欠乏が葉酸に隠されてより重篤な神経症状を起こすことがある
[葉酸の摂取]妊娠をするひと月前からサプリメントとして葉酸の摂取が推奨されている。
[葉酸の摂取量の目安]
妊娠1か月前から妊娠3か月までサプリメントで400μgを上乗せして摂取
上限は1000μg(ビタミンB12の不足が隠蔽されてしまう可能性から)
葉酸は水溶性ビタミンB群の一つで、細胞分裂に欠かせない必須栄養素の一つです。
[葉酸すこやかな妊娠・出産・産後のために]
二分脊椎症の予防
低出生体重児・早産・自閉症スペクトラム障害のリスク低減
産後うつのリスク低減
令和元年11月
鼻をすすることで、鼻水そのものが気管に溜まるので、咳払いをして出さなければなりません
鼻水と一緒に花粉やハウスダストのような抗原が咳を促します
鼻閉で口呼吸になると喉頭が乾燥しイガイガの元になります
感染後の脆弱な透過性の高まった粘膜ではアレルゲンも透過しやすくなり、過敏性も相俟って、感染後咳喘息などと呼ばれる状態に陥り得ます
風邪薬の熱さまし=痛み止めのNSAIDは「アスピリン喘息」といってCOX阻害を通じて咳が増えることがあります。
咳だから風邪だろうと総合感冒薬を続けることが咳の原因になることがあります。
カプサイシンは咳反射を促します。咳は増えますが咳で異物を気道から排除するので細菌性肺炎は減少し死亡率も減ります(咳は続きます)。同じようにACE阻害薬と言う血圧を下げる薬の咳も異物を排除し誤嚥を減らすので煩わしいですが死を減らします
好物に唐辛いものが多くて、煙を多く吸えば、咳は増えます(「焼肉屋の喫煙者」)が、細菌感染では無いです。
アレルギーに起因する好酸球性なら鼻汁や喀痰から好酸球が検出されるので細胞診を試みる
抗ロイコトリエン拮抗薬(モンテルカストやオノン)を使い、抗ヒスタミン剤(エピナスチンやアレグラ)を上乗せする。
カルボシステインなどの粘液の粘性を減らす薬を使い、「掻き出す」「排泄して」「貯まらないようにする」
物理的に、穴を大きくして交通をよくして排泄を促す。
アレルギーが酷いと喉頭の浮腫から窒息するので厄介
抗ヒスタミン剤で効果を得られる
抗ヒスタミン剤だけでよいので、PLに含まれるあるいはパブロンなどのNSAIDはCOX阻害を通じて、治療に逆行する懸念が高くなる
喉頭アレルギーでは呼吸音に喘息の兆候はないので抗ヒスタミン剤で効果がある。喘息の吸入のステロイドは喉頭も通過するので、喉頭のアレルギーを緩和し咳を鎮める
鑑別には呼気中のNO濃度が有効
先程の降圧剤のACE阻害薬などブラディキニンが増えると粘膜の浮腫で窒息に陥り、その手前として咳反射が増える。吸入系の抗原だけではなく、食事や運動でも粘膜の浮腫が起き易くなる
令和元年12月
[36条 6項 三号] 対象期間の初日から一箇月ごとに区分した各期間に当該各期間の直前の一箇月、二箇月、三箇月、四箇月及び五箇月の期間を加えたそれぞれの期間における労働時間を延長して労働させ、及び休日において労働させた時間の一箇月当たりの平均時間 八十時間を超えないこと。
36協定の特別条項については、事業場の労使間の取り纏めです。そのため転勤すれば年間で6回と言う件はリセットされます。また協定の結びなおしが毎年(暦年ではない)あることになっていますので、新しい協定が始まれば回数はリセットされます。
しかし、法定休日の勤務や時間外勤務の平均時間の算出に関しては、転勤しても36協定の年度が替わっても、リセットされません。
転職や複数企業での兼業に関しては議論の余地がありますが、運転手が運転する業務と「充て職」で人材派遣会社から荷役要員として荷下ろしした業務の勤務時間を隔てた行為に関しては、業務指示は同一のものとして「偽り」の判断が下されています。
甲が、乙社の丙支店で2週間で42時間の時間外・休日労働を行った後、転勤し、乙社の丁支店で43時間の時間外・休日労働を行った場合は、所謂、36協定の特別条項には該当しません。
しかし、労働者個人の、健康を守るための、「健康管理時間」は合計の85時間で、単月では違法ではありませんが、産業医面談などの措置を怠らないように、配慮しなければなりません。
翌月は時間外・休日労働を75時間を超えないように管理しなければ、[36条 6項 三号] に違反することとなり 「(罰則)第百十九条 次の各号のいずれかに該当する者は、六箇月以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。 一 (略)第三十六条第六項」に事業場と管理監督者は問われることになります。