平成20年上半期糖尿病教室概要

脂肪肝と肝硬変

 

2008-01-21

脂肪肝というとアルコールが原因と思われるでしょうし、肝硬変というと肝炎ウイルスばかりが思い浮かぶかもしれません。
しかし原因は、お酒だけでも肝炎ウイルスだけでもありません。肥満では過剰なカロリーが皮下脂肪や内臓脂肪に「だけ」溜まるわけではありません。脂肪を取らなくても過剰なカロリーが蛋白だろうが糖質だろうが、取りすぎれば、中性脂肪に変換され、その一部は油滴として肝細胞に貯留されます。
そして、インスリンの効きが悪いインスリン抵抗性から糖尿病を増悪させます。

閉塞性動脈硬化症

 

2008-02-04

動脈硬化は脳や心臓だけに起こるわけではありません。歩くと何百mかで痛みが生じる。休むと少し良くなるという症状があるばあい、足の血管の動脈硬化ASOであることがあります。足が冷え、足背や膝窩の動脈の触れが弱い場合、その可能性が高まります。血行が衰えた分、壊疽にもかかりやすいです。

内服習慣

 

2008-03-10

内服習慣を含めて、言われたことや常識を守ることをコンプライアンス(compliance)といいます。経済活動でも法令順守のことをコンプライアンスといいますが、同じ言葉です。
糖尿病や高脂血症などの生活習慣病はまさしく「習慣」です。運動や食事療法は怠るが内服だけきちんと行うような人は稀です。逆に内服管理が出来るような人は食事療法などの自己管理も出来、将来の見通しを立てることも上手なので、病気が深刻化しません。
香港の研究では薬剤師さんが電話をして薬の内服を働きかけると4割死亡率が下がりました。
米国陸軍病院で電話の働きかけをすると内服率が6割から9割に上がり7mmHgも血圧が下がりました。しかし、働きかけを止めたら6割に戻ってしまいました。

肥満と冠危険因子

 

2008-04-14

 

糖尿病は単独での強い冠危険因子であるが、糖尿病の原因のひとつであるインスリン抵抗性が強い患者は肥満の場合に多く見られ、共通の基盤として高血圧や高脂血症を併発する例が多く、結果として動脈硬化を起こしやすい。 肥満と動脈硬化症の関係を考える上で、Framingham Studyのように、肥満の既往・肥満状態の持続期間など時間の因子を含めた研究が求められる。逆に将来の動脈硬化や危険因子集積を予防するためには、未然に肥満を予防する必要があるだろう。
糖尿病者の半分以上に肥満の既往があり、現在30才台の30%に肥満者がみられる事実は将来に暗い影を投げかけている。

インスリンの種類

 

2008-05-12

インスリンの中で打った後ピークの無いdetemir(レベミル)が新しく採用になった。レベミル(detemir)はアミノ酸配列を換え脂肪酸を付加しアルブミンと結合し易くしたアナログインスリンである。アルブミンと結合する分フリーの詰まり仕事をしないインスリンを増やし、ちょっとずつアルブミンから離れたインスリンが効き目を呈すれば基礎分泌に相当する、緩徐なインスリン作用が、期待される、として開発された。しかし、600pmol=1単位とした通常のインスリンの濃度と同じ規格のdetemirは作用がたらず、 1200も駄目で4倍の濃さの物を投入して、レベミルとして認可を得た。
国内でのNN304-1477試験(経口血糖降下剤との併用)において、投与後32週のインスリン投与量(単位/kg、平均値±標準偏差)は、本薬群0.1649±0.0941、NPH群0.1387±0.0853であり、群間差と95 %信頼区間は、0.0262[0.0077, 0.0447]であり、本薬群で統計学的に有意に高かった。
海外で行われたNN304-1530試験では、試験終了時の平均投与量は、本薬群65.6単位/日、NPH群45.0単 位/日と、NPH投与群に比し本薬群で高かった。
国内外で本薬の投与量が6倍程度 異なっていたことについて、申請者はBMIやインスリン抵抗性の違いが考えられると説明しており、国内においてもBMIが高値又はインスリン抵抗性が強い患者では、本薬はNPHより高用量を要する可能性も否定できないらしい。

大気汚染とタバコ

 

2008-06-09

空気中の微粒子の大きさによって、様々な健康への影響があります。タバコの煙のフィルター無しのものはPM10といって大きいので鼻や喉に引っかかり肺癌でも主気管支の扁平上皮癌を多く起こしました。しかし、フィルターを通して強い圧力で吸引するとPM2.5という微粒子が肺の奥底に到達し肺野の腺癌を来たし易くなります。
それだけでなく、肺胞の白血球マクロファージがPM2.5を貪食活性化したり、血管壁に沈着して動脈硬化を進めたり、血栓が出来やすくなって肺梗塞を起こすことも知られる様になりました。
PM2.5の健康影響はタバコに限らず、道路沿いの排気ガスなどでも知られており、都や環境省が規制値を定めようとしていますが、東京都区内のSPMの年平均値49〜74μg/m3となっており、横須賀市も15〜45μg/m3と同様に目標を達成しています。しかし、タバコ1日20本当たりマンションの中では、およそ 100μg/m3上昇するとされています。
飲食店の禁煙が施行されたアイルランドやスコットランドでは、地域全体の急性心筋梗塞の搬送数が1割強減少しています。


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