A Guide for 2010 FIFA World Cup Visitors to South Africa[pdf]

私家版抄訳:南アフリカサッカーワールドカップ。W杯観戦者用病気の解説。

2010-04-07


6月17日にNICDは、「散発的なA香港型とB型のインフルエンザが見られるようになり、今シーズンのインフルエンザ流行はもうすぐだ」という見解を出しました。新型インフルエンザpandemic (H1N1) 2009はまだサーベイランスに載らないようです。


2010年5月末に多少構成が代わりました。A型肝炎は通常は予めのワクチン接種までは心配ないとしながらも、地域的な小流行があることを指摘し、それを含めた水系伝染病(飲み物や食べ物でうつる病気)を1番上に持ってきました。

南アは2010年(平成22年)6月11日から7月11日まで、世界で最も大きな運動競技会である、サッカーW杯を主催します。公式試合はBloemfontein(ブルームフォンテーン), Cape Town(ケープタウン), Durban(ダーバン), Johannesburg(ヨハネスブルグ), Nelspruit(ネルスプライ), Polokwane(ポロクワン), Port Elizabeth(ポートエリザベス), Pretoria(プレトリア), Rustenburg(ルステンブルグ) で開催されます。
南アフリカ国立感染症研究所(NICD)は公衆衛生の向上にむけて努力を行っています。沢山の観客にワールドカップ中、どのような配慮をすれば安心して滞在して頂けるか、伝染病についての知識を提供いたします。

インフルエンザ2010W杯はインフルエンザが流行する冬の季節に執り行われます。新型インフルエンザ(いわゆる豚フル pandemic A/H1N1 2009)が流行の主体になると危惧しています。インフルエンザワクチンの接種について予め掛かり付け医にご相談ください。南半球では3月からインフルエンザワクチンの接種が始まります。

麻しん現在、南アでは麻疹が流行しており毎週250から600例の報告が全国であります。ハシカのワクチン接種キャンペーンが4月に行われます。旅行者でワクチンを打っていなかったり罹患していない場合は、ワクチン接種を推奨します。

マラリアは開催都市での感染は特に冬季ではありませんが、南アフリカ北東部には伝染地帯(危険、注意灰色)があります。

クルーガー国立公園などに旅行される場合はDEETを含む虫除けを用意し、長袖等で蚊に喰われないように警戒して下さい。熱帯熱マラリア原虫が主ですがクロロキン耐性が進んでいるのでACT(アーテミシニン併用療法)が治療の主体です。モザンビーク等を訪れる場合は予防内服を奨めます。蚊による他の伝染病としてはリフトバレー熱が南アフリカであり、3月27日現在、死者2人を含む63人が診断されています。都市では稀で、主に牛や羊が感染する病気ですが、農場等に働く人に感染することもあります。

エイズは大変多いので、コンドームを使用し、安全な性交渉に努めて下さい。(トヨタの南アフリカ工場では1万名従業員のうち百名がHIVで退職しています)

狂犬病は野生動物が広く保因しています。2009年のヒトでの発症は15例と旅行者が予めワクチンを打つ程ではありませんが、噛まれた場合は狂犬病の血清療法などを行ったり緊急事後ワクチン接種を行いましょう。

髄膜炎菌による髄膜炎が5月から10月まで散発的に見られます。

紅斑熱群リケッチア症:ダニによるAfrican tick-bite feverがあるので、マラリアと同じく虫さされに注意しましょう。予防薬の効果は確かめられていません。テトラサイクリン系抗生剤が治療に有効です。刺し口の特徴を示す皮膚病変が診断の糸口になります。

結核は南アフリカでは大変多いです。BCGワクチンの接種が予防に役に立ちます。

水道水は大都市では安全と考えられますが、地方では水質に不確かな場合があります。ミネラル分のため飲用に不向きなことがありますのでよく聞いて確認しましょう。川等の水は水系伝染病の恐れが高いです[1][2]。屋台などの買い食いにも気をつけて下さい。

黄熱の危険は南アフリカではありませんが、他のアフリカ諸国にも旅行されるのであれば、黄熱ワクチンの証明書をご用意ください。ポリオも1989年を最期に確認されていませんが、同様に他のアフリカ諸国に旅行される場合、15歳未満であればワクチンの追加接種をお奨めします。

[1].北隣の隣国ジンバブエは2008-9年にコレラが流行し、南アフリカでも2002年に流行した。
[2]呑まなくても泳いだりして皮膚から感染する住血吸虫が河や湖には居る。不法定住者の統計では、7.2%に尿中虫卵が認められた。


在外公館医務官情報:南アフリカ


10.5 外傷と暴力 (South African Demographic and Health Survey (SADHS) p205-212)

病院に行く必要がある程の外傷は、男性で21,713例/十万人・年、女性で13,123例/十万人・年と推計される。男女とも8割は交通事故等の意図しない外傷である。男性で6名に一人、女性で10名に一人は意図しない外傷を負う事になる。
一方、意図的に加えられる外傷(暴力、襲撃、自傷)は2割を占め、男性で23名に一人、女性で37名に一人は、暴力等により病院に搬送されている。大都市郊外の貧困地域での割合が高い。
1298名の男性にアンケートをとった所、13%が最低1回以上暴力を振るわれたと答えた。5%はナイフや銃で脅されたと答え、3%は実際に撃たれたり刺されたりされている。場所は、道路と答えたのが一番多く53%で、酒場が12%、人混みというのが7%で続き、自宅というのは18%で少なかった。1833名の女性にインタビューを行ったが、7%が最低1回以上暴力を振るわれたと答えた。2%はナイフや銃で脅されたと答え、1%は実際に撃たれたり刺されたりされている。外傷の構成は男女とも似ていたが、暴力を振るわれた場所は女性では自宅と答えたのが48%と最も多く、道路は33%であった。通りすがりに受ける男性と異なり、女性は身近なひとから暴力を受けている(Krug 2002)
四分の一程度で、アルコールや薬物使用が、暴力の契機になったという報告もある(Parry & Dewing 2007)

検視結果 (National Injury Mortality Surveillance System 2005[pdf])

外因死の一位は4481例(20.1%)で銃器で、刃物が3535例(15.9%)、鈍器による外傷1387例が続いている、交通事故の中では、歩行者2754例、乗客1024例、運転者956例である。

性別による死亡理由の割合
(総例2万3316件)
理由 男性 女性
殺人 7933 1143
自殺 2020 489
交通事故 5310 1439
交通事故以外の外傷 1701 635
不詳 1834 812
参考:10 Leading Causes of Violence-Related Injury Deaths, United States(CSV)

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