脂質代謝について

内科 塩之入 太

平成16年9月12日 臨床メリトクラシー研究会


[1]マルチビタミンの投与は脂質の酸化を防ぐ

  コホート研究では抗酸化ビタミンの濃度↑

  しかし、投与しても予防ができない

     ←反論:酸化型? 光学異性体?


[2]LDLリポ蛋白のこと?
  コレステロールの事?

  変性リポ蛋白は異化され難い

  酸化ステロールはアポトーシスを誘導する

  側鎖が酸化されたフォスファチジルコリン

  酸化LDLの正体は分断されたApoB


[3]LDLコレステロールを目標とする

  人を対象として 「薬物治療」 「コホート研究」

  どちらも証拠がしっかりしている 
  スタチンや陰イオン交換樹脂・ニコチン酸など方法を変えて介入しても、いずれもLDL-cの減少率に比例して予後がよくなる

  赤ちゃんは大人の半分の血清コレステロール値、それでもきちんと
  育つ。でも、治療目標がまちまちである

日本国内の虚血性心疾患1次予防指針
動脈硬化学会 糖尿病 B3 LDL<120  
循環器学会  糖尿病 C LDL<100  

[4]でも、虚血性心疾患の患者の全てがLDLコレステロール高値で
  は無い。
  LDL-cは、糖尿病・高血圧・喫煙・加齢など様々な危険因子の
  一つである。
  危険因子の数に左右される。

  **動脈硬化学会のガイドラインの精神**
  「個々の患者のもつ危険因子に応じてリスクの重みづけを行い、
  きめ細かい管理を目指すとともに、リスクを減らすことを目標とした」


[5]LDL受容体とは、ApoB100/ApoE受容体

  変性リポ蛋白は スカベンジャー経路


[6]ApoEを注射したワタナベウサギ(WHHL)、

  ApoEを遺伝子改変で過剰発現させたマウス。
  VLDLコレステロールが減少し、HDLコレステロールが増し、

  動脈硬化巣が退縮する

               山田信博(JCI'92 82(2):706)
               島野仁(PNAS'92 89(5):1750)


[7]LDL受容体欠損マウスではレムナントも増加する(マウスは
  ApoB48)。 石橋俊[JCI '93 92(2):883. JCI'94 93(5):1885.]。
  リポ蛋白リパーゼを過剰発現させると動脈硬化はよくなる。
  嶋田昌子[PNAS '9696(14):7 242]。
  

  VA-HIT, DAISなどのフィブラート系の薬物療法の治験でも
  レムナントの減少による実際のヒトでの動脈硬化予防効果を支持している。


[8]LDL受容体に親和性のない酸化LDLリポタンパクはCD36や
  LOX-1に取り込まれる。AGE受容体などもある FEEL-1, 2 etc. 田村嘉章[JBC 273 12613-17, 2003]
  逆転送系が働かなければそのまま泡沫化する


[9]マウスにチアゾリジン誘導体を投与すると動脈硬化巣が退縮する。Chen Z [ATVB vol.21 no.3 p372]
  糖尿病患者では頸動脈のIMTが縮小する。

その背景にはCD36の発現の増加があるのでは無いかと推察される。


[10]HDLコレステロール多い例にCETP欠損があり、JTT705等の
   CETP阻害が薬物治療の一つとして治験が進められている。
  しかしHDLコレステロールが低くなってもプロブコールは
  動脈硬化疾患の治療に結びつき、ApoA-IミラノはHDLコレステロール
  低値だが抗動脈硬化作用を有する


[11]ACAT-1を阻害すると

粥腫は小さくて済むが皮膚の黄色腫は酷くdry eyeになる [野牛宏晃, 北峰哲也 JBC '00 275(2)1324]

CS-505(pactimibe)というACAT阻害剤も
AHA2005で治験の継続中止を発表(ACTIVATE by Sankyo)


まとめ

 

 LDL-cを目標とした治療がもっともEBMに即している。

 しかし、リポ蛋白の代謝状態を、もっと簡便に検査できれば、
 新しいEBMが開拓されるかもしれない。

 ビタミン補充療法は支持されたとは言えず、理論通りに行かない実験系も数ある。


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