参照資料:電気通信大同窓会 目黒会報20-2号

「「簡易型AIS及び小型船舶救急連絡装置等の無線設備に関する技術的条件(案)」
に対する意見募集に関し、別紙のとおり意見を提出します。

平成20年3月26日

[1]「AISの操作は、無線従事者の管理の下で無線従事者以外の者が行うことができることとします」となってはいるものの、特に4級小型船舶のプレジャー船では、依然としてAISトランスポンダの設置には免許の壁がある。一方で、免許の必要でないAISレシーバーは普及が見られている。
あたごの事故があったが、現在地と進路などの開示が必要なのは、事故の多い小型船舶であるのに、その小型船舶がAISトランスポンダの設置が行い難い環境にあるのは問題である。

マリンVHFといわれるプレジャー船の無線が設けられているが、沿海を航行する船舶には他国籍船や外国人海員も多く、国内の法令の辻褄合わせによる規格では、相手方との通信に不自由することも多く考えられる。
出力をしぼった国際VHF送受信機とAISについては無線従事者や船舶局の開局に関する免許、船舶局の定期検査を不要にする必要があるのでは無いかと思われる。
一方、出力を抑えてしまうと十分な通信が出来ないとの指摘もある。

[2] 免許が不要という事が呑めないのであるならば、簡易型AISの設置する動機づけが希薄になりかねない。海上の安全の確保のために、代替のインフラストラクチャを整備する必要も考慮するべきである。

陸上局にAIS相当の符号を通信し、無線従事者のいる陸上局からAISの情報を送出してもらえば、該当する海域の小型船舶は自船の静的動的情報を他船に開示できる。通信手段として携帯電話のパケット通信サービスを用い、老人や子供の所在地確認で用いられるGPS携帯の機能で得られる程度の位置情報を、携帯電話のメール機能を使って陸上局に伝達し、船舶の静的情報として連絡をとるための携帯電話番号を付与すれば、最低限のレジャー船同士の安全確保は、日本船籍同士の事故を前提とする限り、高める事が可能になるだろう。

送信の方法については、漁船であれば漁業無線、レジャー船であれば400MHz無線電話も用いることが出来る。AISの規格には無いが、この携帯電話や27MHz/400MHz無線でのAIS情報の送信と陸上局からの再送出という仕組みが、東京湾や伊勢湾・瀬戸内という稠密海域においてだけでも整備されると事故の減少に寄与する可能性がある。VHF16chの傾聴は免許等の不要な受信機だけでも可能である。

しかし、この方法は既に設置されている大型船のAISにとっては規格に無い携帯電話の表示が出来ない事、さらに他国籍船では船舶相互の通信が出来ないことも相俟って、利便性は限定されるものとなろう。抜本的には、簡易型のAISではなく、免許や設置事務作業の簡易化が不可欠なのであろう。

[3] 一人乗りの小型漁船の転落事故については、子供の見守り携帯電話サービスに応用すべき技術が見られる。F801の「おまもリモコン」では携帯電話から離れた場合、携帯が位置情報を発信してくれる。エンジンの停止などの高度な仕様は満たさないが、民生品の安価な普及品で最低限のサービスを行う仕組みも不可欠ではなかろうか。


情報通信審議会 情報通信技術分科会 海上無線通信委員会の審議次第

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