スウェーデン日記

No. 4 ワルシャワのインターネットカフェ

1999/10/27


 

ワルシャワのインターネットカフェ

 この9月に学会があった関係でポーランドの首都ワルシャワを訪れる機会がありました。かつて共産主義政権のもとにあったこの国を訪れるのは、初めてのことでした。市場経済への変革の後、どのような変化が生じているのか、非常に興味深く思っていたのですが、特にインターネットの状況がどうなっているか、気になっていました。そこで学会の初日にツーリストインフォメーションの女性にワルシャワにインターネットカフェがないか、探してもらったのですが、あいにく電話帳を見てもうまく見つけることができませんでした。しかし、翌日、学会事務を取り仕切っている会社の別の男性に聞いてみたところ、コペルニクス(もっとも有名な歴史上のポーランド人の一人ですね)の銅像のそばに一軒あることを教えてくれました。

 そのインターネットカフェはワルシャワ大学の裏手の古いビルの一角にありました。中に入ってみると10台ほどのWindowsのパソコンが並んでいて、店の中はパソコンに向かう若い人たちでいっぱいでした。私はコカコーラを頼んで(かつては資本主義文化の象徴だったのでしょうね)、パソコンの前に座りました。そのパソコンはちょっと古そうな感じで、Windowsのバージョンも最新の98ではなくて一つ前の95だったのですが、ホームページを見るには十分なものでした。それから私は日本語フォントのダウンロードを試みたところ、ちゃんとうまく行きました。これで私は日本語のホームページを見れるばかりでなく、日本語のWeb based mailも読めるようになったのです。私は、日本やスウェーデンにいる友達とメールのやりとりができたり、ポーランドの外で起こっている出来事を知ることができて、とても満足な気分でした。料金は1時間当たり約4ドル相当で、こちらの物価(私の印象では日本やスウェーデンの約半分)を考慮しても常識的な値段でした。

 そのとき、私はふと思いました。通信の自由って、本当に大切なものなのだな、と。詳しいことは知りませんが、以前はポーランドのほとんどの人たちにとって、外国の情報に直接アクセスすることは容易でなかったのだろうと思われます。けれども今は自由に外国のホームページから情報を得たり、外国の人たちと通信ができるわけです。これはやはりすばらしい変化なのではないでしょうか。

 一方で、昨今の日本の状況を振り返ってみると、捜査機関に電話やインターネット上の通信を傍受する権限を与える通信傍受法が国会で可決されています。この法律の主目的は麻薬犯罪などを防止するためとのことですが、日本でも少なからぬ反対の声が上がったようです。たしかに麻薬犯罪などを防止することも重要だと思うのですが、一方でプライバシーや通信の自由が損なわれる危険性があるような気がしてなりません。さすがにこの法律が成立しただけで、戦前、特高警察が人権を踏みにじったような状況がすぐに再来するとは思いませんが、自由というものは失ってから初めて気づくものなのかもしれません。

 今回のポーランド旅行では、ワルシャワだけでなく、アウシュビッツやショパンの生家を訪れる機会があり、本当に印象深い旅でした。

 


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Last Updated 1999/10/27

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