スウェーデン日記
No. 2 水より安いビール！？
1999/08/14
子供の頃、ヨーロッパでは水よりもビールやワインの方が安いんだ、とか、ヨーロッパでは食事の度に水代わりにビールやワインを飲むんだ、という話を聞かされて、世の中、所変われば品変わる、というのはこういうことなのか、と思ったものですが、今回、こちらに来てからそれが本当であることを知り、あらためて驚かされました。
さて、写真のビールは近所のスーパーで買ったもので、アルコール度2.8%・１本330ml入り、デンマーク産の"Nykobing gron" (いずれのoも斜線/が入ったもの）というピルスナーなのですが、はたして１本、いくらと思われますか？ 実は、１本、なんと3.50クローネ(SEK)なのです。1999年8月現在のレートで1SEKは約14円相当ですから、１本あたりわずか５０円という、信じられない安さなのです。
さすがにこのビールの安さは例外的なのですが、私が普段、愛飲しているPRIPPS BLA (Aの字は上に○がついてオーと発音する）という銘柄は、アルコール度2.1%・１本330ml入りの缶ビールで、１本6.50SEK、日本円にして９０円相当。味の方も、まぁまぁです。ちなみにこちらで一般的なミネラルウォーターRamlosa（oの字の上にはウムラウト:がついていてオとエの間の発音をする）が、同じサイズのビン入りので１本5.00SEK（７０円相当）、缶入りので１本8.0SEK（１１０円相当）ですから、本当にビールの方が水より安いことになります。
スウェーデンに限らず、北欧の水道水は硬水ではあるものの、概してそれなりにおいしいと言われていますが、このアルコール度の低いライトビール（スウェーデン語では レットエルと言います）は昼食時にも水代わりによく飲まれるようです。私も、郷に入れば郷に従え、ということで、毎日のようランチにあわせて飲んでいますが、アルコール度が低いこともあって、まったく午後の仕事に影響は出ません（少なくとも建前上はそういうことになっています）。
実は、スウェーデンでのアルコール類の販売は日本とは非常に異なる制度が取られていて、アルコール度3.5%以下のライトビールを除いては、"Systembolaget"（システムボラーゲ）と呼ばれる国営の酒類専売店でしか購入できないようになっています。もちろん、ビールを含む酒類の自動販売機なんてものはどこにも存在しません。"Systembolaget"のホームページによると、過去にアル中患者が増加して社会問題として深刻であった時期に酒類の専売制度が敷かれるようになったとのことなのですが、この"Systembolaget"がくせ者で、土曜日・日曜日はぜったいに営業していないのです。
これは平日の昼間に仕事を持っている人間にとってはきわめて深刻な問題で、今日はお酒を買いに行くぞ、と思いたつと、みなさん仕事が終わり次第、脱兎のごとく"Systembolaget"に走るのであります。このため閉店間際（曜日によって異なるがだいたい６時か７時に閉店する）の"Systembolaget"はつねに大混雑となります。さらにこの混雑に輪をかけるのが、多くの"Systembolaget"では店頭にはショーウィンドウの中の見本とカタログがおいているだけで、実際の商品は奥の倉庫にしまってあり、いちいち対面販売するようになっています。したがって自分の順番が来るまで、まるで日本の銀行みたいに機械から出る番号札を取って、忍耐強く順番を待たなければならないのであります。おもしろいのは、閉店時間になると屈強なガードマンがどこからともなく現れて、買い物が終わった客が出ていくのは通すけど、閉店時刻よりも遅れてきた客は絶対に通さないようにしていることです。私たちからすると、そこまでするかなぁ、という感じなのですが、これもスウェーデンの夕暮時のひとつの風景です。
さて、私たち研究員にとって非常に不幸なことに、研究所の最寄り駅の駅前にはこの"Systembolaget"がなく、隣町まで電車かバスででかけないとならないという、やっかいな問題が存在します。つまり、仕事をちょっと抜けて、買い物をしてまた戻ってくるという芸当が不可能に近く、結局、いつも私はスーパーで買えるアルコール度の低いライトビールを飲んでいます。まぁ、安いからいいという話もありますが、たしかに飲んでいてちょっと物足りなく思うときもあります。
スウェーデンでのビールやワインにまつわる面白い話はつきないので、また改めてこの話題をとりあげるつもりです。
Last Updated 1999/08/14
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