受精直後、卵子内の母親由来のタンパク質は急速に分解され、受精卵のゲノムに由来する新しいタンパク質と入れ替わることが知られています。私たちは今回、マウスの受精卵を用いて、受精後4時間以内にオートファジーが非常に活性化することを見いだしました(図1)。そこで、この発生初期に起こるオートファジーの役割を調べるために、卵子でオートファジーが起こらないようにしたマウス(卵特異的Atg5ノックアウトマウス)を作製しました。このマウスでは卵子は正常に作られ、排卵、受精も正常に行われました。しかし、受精後にオートファジーによるタンパク質分解が起こらず、結果として着床に至る前に発生が止まり、死んでしまいました(正確な時期は、受精後2.5日頃の4~8細胞期です=図2)。このような胚では、新しいたんぱく質の合成量が減少していたため、栄養不足状態にあったと推測されます。
以上の実験結果から、受精直後にオートファジーが活性化されることで受精卵の母性タンパク質が大規模に分解され、それによってこの時期の新規タンパク質合成に必要なアミノ酸が確保されていると考えられます。