オートファジーによる細胞内浄化作用の意義を調べる目的で、全身でオートファジーが不能となるAtg5ノックアウトマウス新生児を用いて、異常タンパク質の指標としてユビキチン化タンパク質の蓄積を調べた。その結果、神経細胞と肝細胞で著しいユビキチン化タンパク質の蓄積が観察された。従って、オートファジーによる細胞内浄化作用は神経細胞と肝細胞で特に重要であると考えられた。

全身性のAtg5ノックアウトマウスは生後1日以内に死亡してしまうため、次に私達は神経系でのみオートファジーが不能となるマウス(神経特異的Atg5ノックアウトマウス)を作製・解析した。このマウスは生後も生育するが、生後1ヶ月という早い時期から歩行障害や異常反射などの運動障害を呈するようになった。組織観察からは、小脳プルキンエ細胞や大脳皮質の錐体細胞の部分的脱落、多くの領域での神経軸索腫大などの異常が観察された。

さらにユビキチン化タンパク質の蓄積を調べたところ、脳のほぼすべての領域で細胞質全体に徐々にユビキチン陽性タンパク質が蓄積し、さらに一部ではそれら異常タンパク質が二次的に凝集していることが明らかとなった。これらのことより、オートファジーによる分解は日常的な原則として非選択的な細胞内全体のタンパク質の新陳代謝を担っており(凝集体の特異的除去ではなく)、これが阻害されると細胞内に変性したタンパク質が蓄積し、さらには凝集が引き起こされると考えられる。

従来このような細胞内品質管理はユビキチン・プロテアソーム系によって行われると考えられてきたが、オートファジーによる協調的作用も重要であることが明らかになった。