「飢餓適応機構としての自己タンパク質分解の意義の解明」
~新生児は出生に伴う飢餓をオートファジーで凌ぐ~




Kuma, A., Hatano, M., Matsui, M., Yamamoto, A., Nakaya, H., Yoshimori, T., Ohsumi, Y., Tokuhisa, T., Mizushima, N.
The role of autophagy during the early neonatal starvation period.
Nature 432, 1032-1036 (2004).


今回の研究成果の概要
オートファジーは細胞内の大規模な分解機構で、細胞内の新陳代謝機構としての役割と、細胞が自身の一部を分解することで栄養素を自給自足する役割をもっていると考えられてきました。

今回私たちは、出生直後の新生児マウスのほぼ全身の臓器でオートファジーが顕著に活性化されることを発見しました。そこで、オートファジーの能力を欠如するマウス(Atg5ノックアウトマウス)を作製、解析したところ、このマウスは出生直後に激しい栄養欠乏状態に陥ることが確認されました。胎児は胎盤を介して母親から栄養が供給されますが、出産とともにその供給経路は突然遮断されます。そのため新生児は母乳からの栄養補給体制が完成されるまで、一過性の著しい飢餓にさらされます。新生児はこの間炭水化物や脂肪の蓄えを利用することは知られていましたが、今回の研究から自己タンパク質分解によるアミノ酸産生もこの飢餓時期を乗り越えるのに重要であることが示されました。まさに自分を食べて飢餓を凌いでいたわけです。

 本研究は飢餓応答としてのオートファジーの意義を哺乳類ではじめて明らかにしたものです。この成果は単に新生児飢餓のみならず、慢性疾患や長期臥床などによる栄養不良、あるいは反対に肥満・糖尿病などの栄養制限治療における生体反応を理解する上で重要な情報を与えるものであると考えられます。

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