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臨床病理 53(補冊) : 296、2005年10月31日
The Official Journal of Japanese Society of Laboratory Medicine 53(Suppl.) : 296, 2005.10.31
第52回日本臨床検査医学会総会 O-360

臨床検査医学は臨床ゲノム診断学の基盤となり医学医療の変革を主導する

○西堀 眞弘 東京医科歯科大学医学部附属病院検査部

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【目的】ゲノム情報と臨床情報との連関に基づく医学的判断を体系化した臨床ゲノム診断学の確立による医学医療へのインパクトと、その過程における臨床検査医学の貢献度を予見する。
【方法】ポストゲノム時代における医学研究の最先端の成果に基づき、ゲノム情報が医学的診断と意思決定に与える影響を予測する。
【成績】ヒトの全ゲノムが解読され、ゲノムと疾患の関連の解明に膨大な研究費が費やされてきたにもかかわらず、現時点では臨床医学には殆ど恩恵がもたらされていない。この原因を解析したところ、ゲノム、遺伝子およびその発現のテータと、臨床情報や環境因子を関連づける研究が著しく不十分である事が明らかになった。また、この点に注目した数少ない研究からは、疾患の発症リスクとして、ゲノム情報と環境因子の組み合わせが極めて大きな割合を占めることが示唆されている。また図のように、従来のメガトライアルでは明瞭な結果が得られなかった原因が、ゲノム情報が欠けた状態ではそのバイアスが管理されていないためであることが示唆されている。またこれまでの疾患分類は、高血糖や高血圧といった一面的な病態に注目したものに過ぎない。そのため高血糖を放置しても多くの人が合併症を起こさなかったり、きちんと血糖管理をしていても失明する例が生じるなど、結果的に膨大な治療が無意味に行われる事態を招いている。そこで、たとえば血管障害の起こりやすさといった、より本質的な視点から疾患を再分類する必要が生じうる。これらはゲノム情報と環境因子のデータを集め、複数の因子と発症との関連を解明する臨床検査医学のノウハウを発展的に適用することによってこそ得られる知見である。その結果たとえば感染症診療は、伝染病の発生が予想される場合、あるいは免疫力の低下が予想される場合、対象者全員について,病原体毎の感染の起こり易さを判断し,各個人毎に感染確率の高い病原体だけを対象に、感染予防治療を行うといった形に変わると予想される。
【結論】臨床検査医学は臨床ゲノム診断学の理論的基盤を提供し、医学および医療全体の形を変える可能性をもつ。



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