医療の標準化および効率化への要請は近年益々厳しくなっており、今後医療情報のコ
ンピュータ処理が急速に進展し、ネットワークを介していつでもどこでも参照可能と
なるのは時間の問題である。その際、臨床検査情報には次の互換性が求められること
になる。
(1)データフォーマットの互換性
コンピュータ同士がデジタル情報をやりとりするときの基本条件である。医療情報全
体のフォーマットとして、XGMLをベースとしたMML、そして臨床検査情報の表現法と
してHL7が提唱されている。
(2)測定項目コードの標準化
同じ検査項目に同じコードを割り当てた表をひとつ作れば良いのだが、将来に渡って
続々と開発される新しい項目を収容しつつ互換性を保てること、測定法の違い等によ
る細分類が実用的に反映されていること等の条件を満たす必要がある。現在日本臨床
検査医学会によりJLAC10が提案されている。
(3)測定データの互換性
多くの主要な検査項目について、測定法や測定施設により測定値が異なる現状では、
他の医療機関で参照可能となっても診療に利用できない。数値そのものの標準化が困
難な項目については、健常人の測定値分布を基準としたSDI方式、あるいは外部精度
管理の成績を基準とした校正方式(市原清志氏による)が提案されている。
(4)測定精度の互換性
測定データの互換性が確保されたとしても、その精度がまちまちでは、定性的な診断
は下せても、統計処理に基づいた定量的な診断には支障をきたす。この問題について
は、ある測定法による測定値を報告する際に、健常人の測定値分布に加え、日内変
動、日差変動あるいは直線性等の精度指標も添えれば、ある程度の解決を図る事がで
きる。
1人当たりに割り当て可能な医療資源が縮小しつつある現在、臨床検査に振り向けら
れる割合を維持するためには、可及的早期にこれらの要件を満たし、ネットワーク医
療時代ならではの利便性を確保する事が必須となる。