[-> Slides] 医療情報学 20 (補冊 2、第20回医療情報学連合大会論文集) : 414-415、2000年11月23日 Japanese Journal of Medical Informatics 20(Suppl. 2, Proceedings of the 20th Joint Conference on Medical Informatics) : 414-415, 2000.11.23 |
3-D-3-3 電子カルテ / オーガナイズドセッション: いわゆる「電子カルテ」の課題と克服の試み
東京医科歯科大学 医学部 附属病院検査部
抄録: 【目的】来るべきネットワーク社会の基盤となる情報端末のユーザインターフェースには、健常人だけでなく高齢者や障害者を含むあらゆるユーザに対応できるユニバーサルデザインが求められる。しかし現状のマウス、キーボード、音声あるいは手書き入力装置等に基づくグラフィカルユーザーインターフェース(GUI)では、操作が十分に簡素化できず、健常者の間ですら普及の大きな障害となっている。そのため本研究では、ユーザインターフェースが備えるべき機能を理論的限界まで分解することにより、最も簡素化された操作方法を開発した。
【内容】理論的分析の結果、次の2つの要素技術で必要な機能をすべて網羅できることが明らかとなり、それぞれプロトタイプの開発に成功した。
(技術1)ただひとつのオンオフ型の入力装置で、オンオフの時間間隔の長短で機能選択と機能実行を指示することにより、マウスによるGUI操作をすべて代替する技術。
(技術2)辞書順に表示された候補文字列から、最も近いものを選ぶ操作を反復するだけで、すべての文字入力を可能にする技術。
【結果】開発されたプロトタイプにより次の効果が実証され、次世代ユーザインタフェースとして十分な性能が認められた。
(技術1)あらゆる障害者が最低限の残存機能で健常者と同じGUI操作ができるうえ、機能の最適化によって、健常者にとっても既存の方法より容易に操作できる。
(技術2)仮名漢字変換等が一切不要になるうえ、順序づけ可能な書き言葉が存在すれば、最も簡単な操作であらゆる言語を入力できる。また文字が書けなくても、読めさえすれば入力できる。
【新規性】上記技術はそれぞれ米国特許の取得により、新規性および有用性が裏付けられた。
【実用性】上記技術は現状のGUIに追加して併用することが可能なうえ、現状のソフトウエア技術およびハードウエアでも実現できることが、プロトタイプを用いて実証された。
Tokyo Medical and Dental University, Tokyo, Japan
Abstract: Today, poor performance of the user-interface becomes a major bottleneck for the spread of the broad range of medical services expected for the coming network age. To make a breakthrough, a revolutionary method to control a mouse cursor with only an on-off input device and an extremely simple method to input characters of any language without a keyboard were invented. They are simpler than any other conventional interface and fully compatible with them, therefore will provide ideal key technologies for a universal design of the next era. [refer to mn.mlab@tmd.ac.jp, http://mn.umin.ac.jp/]
Keywords: user interface, simplest interface, universal design, network age
来るべきネットワーク社会においては、あらゆる情報サービスが個人携帯端末を通じて供給され、医療分野においても医療機関内、家庭、職場を問わず、必要に応じて随時サービスの提供が可能となる。このようなサービスの対象者は治療中の患者に限らず、妊婦、経過観察や介護の必要な障害者、あるいは健康相談を希望する健常者まで、すべての人にその可能性がある。したがってそのユーザインターフェースには、あらゆる身体状況、年齢、性別、言語能力のユーザに対応できるユニバーサルデザインが求められる。しかし、マウス、キーボード、音声あるいは手書き入力装置等に基づく現状のユーザーインターフェースは、その要件を殆ど満たしていないうえ、無味乾燥な予備知識が要求され、健常者への普及すら阻害している。
現状の打開には、格段に簡便で使いやすいユーザインターフェースを、投資可能な範囲の資源で開発することが条件となる。そこで著者は、障害者向けに特別仕様の装置を用意するといった従来型の発想ではなく、最も基本的な身体機能さえあれば利用できるユーザーインターフェースをユニバーサルデザインの基本とし、健常者あるいは熟練者に対しより効率的な操作手段を付加するという着想に至った。そのため本研究では、備えるべき機能を理論的限界まで分解し、最も簡素化されかつ既存の操作方法と併用可能なキーテクノロジーの開発を目的とした。
ボタン装置など単一のオンオフ入力装置を、一定時間内にオンオフすると操作モードが順次切り替わり、オンのまま一定時間を超えて維持するとその時のモードに応じた動作が実行される操作方法である1)(Patent:US5850212)。図1に一般的なウインドウシステムにおける実装例を示す。マウスカーソルの形がそのときにマウスのボタンを押し続けると実行できる機能を表わし、ボタンをクリックすると、上下左右への移動、クリック、ダブルクリック、プレス(あるいはプレス解除)という順番で切り替わる。例えば右向きの矢印のときは、ボタンを押し続けるとカーソルが右に移動する。この手順を繰り返せば、マウスでできることはボタン一つですべて操作できる。
コンピュータなどに文字または文字列を入力するとき、(1)1つのメニュー上では候補が辞書順に並んでいる、(2)各候補はより下位のメニューの先頭の候補と一致している、という条件を満たす階層型メニューを作り、入力したい文字または文字列が辞書順で間に含まれていそうな候補をたどって、順次下位メニューを表示させることにより、目的の候補を選択し入力する方法である2)(Patent:US5977948)。例えば1つのメニューに10種類の候補を登録して5回下位メニューを表示させれば、10万語の中から1語を選択できる。図2において、辞書順に並んでいる言葉の階層メニューから、入力したい言葉が載っていそうなサブメニューを次々と選ぶ。「義兄(ぎけい)」の入力を例にとると、「単語」メニューの「き 器」と「け 毛」の間にありそうだから、「き 器」を選ぶ。「き 器」の下のサブメニューでは、「きく 菊」と「きち 吉」の間にありそうだから、「きく 菊」を選ぶ。これをあと2回繰り返すと「ぎけい 義兄」に行き着く。
この方法は、(1)メニューを選択する操作だけで文字または文字列を入力できる、(2)キーボード入力や仮名漢字変換の操作が不要、(3)文字または文字列に順番がつけられるあらゆる言語に適用できる、(4)書けない文字や発音できない文字も読めれば入力できるという点で、従来法より格段に優れている。
前者は、キーボード等のボタン型入力装置のいずれかひとつを割り当てることにより、また後者は文字入力フロントエンドプロセッサーのひとつとして組み込むことにより、併用が可能である。
開発されたキーテクノロジーの各々につきプロトタイプを作成し、その効果を検証したところ、単一のオンオフ装置の操作という、最低限の残存機能だけで健常者と同じGUI操作ができることが実証され、次世代ユーザインタフェースとして十分な性能が認められた。ただし、具体的なアプリケーションにおいて十分な操作性を確保するためには、前者は操作モードの選択と順序、カーソル移動速度および押下の時間間隔につき、後者は階層メニュー(辞書)の構成とメニュー選択時の操作方法につき、それぞれ試行錯誤による調節が必要である。また健常者向けに最適化すれば、既存の方法より容易に操作できる可能性も示唆された。
今回開発したキーテクノロジーの潜在的可能性を充分に引きだすためには、できるだけ多様な利用状況におけるプロトタイピングを要するため、興味を持たれた方には是非今後の開発に参加していただきたいと考えている。
[1] Masahiro NISHIBORI : System for Changing Modes and Cursor Appearance by a Single Button. U.S.patent, P.N. 5,850,212.
[2] Masahiro NISHIBORI : Input processing system for characters. U.S. patent, P.N. 5,977,948.
図1 単一ボタン操作方式の実施例 |
図2 最短操作文字列入力方式の実施例 |