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第4回日本臨床検査医会春季大会抄録集 : 6-7、1994

第4回日本臨床検査医会春季大会
IV.シンポジウム S-1
情報科学に関する実際的実践体験

病態解析システムの開発における実務上の障害とその対策

西堀眞弘
東京医科歯科大学医学部臨床検査医学

Practical Problems and Solutions in
Developing a Total Laboratory Information Analysis System

Masahiro NISHIBORI
Laboratory Medicine, Tokyo Medical and Dental University, Tokyo


 私共の施設では人工知能による臨床検査データの病態解析を目指し、これまでにDEC社のVAX-stationを用いた、Prologベースの検査診断エキスパートシステムの開発に成功しているが、近年の臨床検査情報の多様化に対応するため、システムの基本仕様を刷新する時期を迎えた。そこで私共は、新たにマルチメディア対応の総合臨床検査情報データベースと、マルチメソッド対応の病態解析知識ベースを組み合わせた病態解析システムを開発した。
 現在この基本仕様はほぼ達成され、従来に比べ飛躍的に柔軟で快適な研究開発環境が得られているが、ここに至るまでには実務上幾多の困難を乗り越える必要があった。これらの問題はこれまで正面から取り上げられることは少なかったが、コンピュータを用いた他のシステムにおいても発生し、研究の進捗や成否に実際上大きく影響していると考えられる。そこで今回は、コンピュータを使って研究される他の先生方の参考にしていただけるよう、私どもの困難と克服の記録をスクリーンに投影したコンピュータの画面で具体的に紹介する。
(障害)本システムの仕様を満たすプログラムの設計・入力作業には膨大な工数がかかり、私共の現有のマンパワーでは不可能である。→(対策)必要な機能を部分的に備えた出来合いのアプリケーションを多数組み合わせ、どうしても足りない部分のみプログラミングする。
(障害)マルチベンダーのハードとソフトを組み合わせると、動作不良が発生したときに原因を究明し解決する責任を負う業者が不明確になり、事実上動作が保証されない。→(対策)敢えて機能が重複するハードやソフトを組み合わせ、一部の機能が欠けても他で代替できるように設計する。
(障害)UNIXやアプリケーションの膨大なマニュアルが積み上がり、具体的なインストール方法や使用方法が容易に把握できない。→(対策)業者に「機能テストのため」と称して基本機能の雛型となる簡単なデモンストレーション用ソフトを作成させ、実際の使用に際してはそのソフトのパラメータを変更したり、そのソフトがカバーしていない部分だけを新規作成すればいいようにしておき、無駄な試行錯誤を省く。
(障害)オペレーティングシステムをバージョンアップすると、アプリケーションソフトとの間にバージョンのずれが生じ、その調整のため長期間の作業ロスが生じる。→(対策)ある段階のバージョンで完全に動作を確認し、以後大幅な機能改善が見込めるまでバージョンアップは見合わせる。
(障害)UNIXに代表される暗号のような無数のコマンド操作を求められるため、研究開発の作業効率が著しく損なわれる。→(対策)ユーザーフレンドリーなパソコンを用い、システムからユーザーインターフェース機能を抽出したプロトタイプを活用するという、システムの操作性向上に著しい効果のある私共独自の開発手法を適用する。


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