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第44回日本臨床病理学会総会 44th JSCP (Oct., 1997) p178
178

インターネットを使って形態学的検査のコントロールサーベイを実施する研究

西堀眞弘*1 大場康寛*2 伊藤機一*3 渡辺清明*4 菅野治重*5

*1 東京医科歯科大学医学部附属病院検査部
*2 近畿大学ライフサイエンス研究所
*3 神奈川県立衛生短期大学衛生技術科
*4 慶応義塾大学医学部中央臨床検査部
*5 千葉大学医学部臨床検査医学

A Control Survey of Morphological Laboratory Tests Using the Internet

Masahiro Nishibori*1 Yasuhiro Ohba*2 Kiichi Itoh*3 Kiyoaki Watanabe*4 Harushige Kanno*5

*1 Clinical Laboratory, Tokyo Medical and Dental University, Medical School
*2 Life Science Research Institute, Kinki University
*3 Kanagawa Prefectural College of Medical Technology
*4 Central Clinical Laboratory, Keio University, Medical School
*5 Labolatory Medicine, Chiba University, Medical School

revised edition<Last updated, Nov. 21, 1997>
(revised portions from the first edition are marked with [revn] signs.)


目次

【目的】 | 【方法】 | 【結果】 | 【結論】 | 助成
スライド1:タイトル
スライド2:従来のコントロールサーベイ
スライド3:インターネットを使ったサーベイ
スライド4:方法
スライド5:結果
スライド6:考察
スライド7:今後の課題
(初版からの改訂内容)


【目的】 臨床検査の外部精度管理のため各種コントロールサーベイが実施されているが、形態検査については通常費用と手間のかかるスライド写真を配布している[スライド2]。そのため、個人単位または小規模施設の参加が困難、判定用画像の均一性に不安が残る、対象症例数が限られるなどの限界があった。一方、インターネット上で急速に普及しつつあるワールドワイドウエブ(WWW)方式は、マルチメディア情報発信機能に優れており、送り先の距離や数にかかわらず、全く同一の画像を瞬時に送り届けることができる[スライド3]。本研究はこの機能を形態検査の外部精度管理に応用し、その実用性と、従来方式の問題点を解消する画期的効果を実証しようとするものである。

【方法】[スライド4] (1)尿沈渣、血液検査、細菌検査のサーベイに用いる判定用スライド写真をデジタイズし、インターネットのホームページ(URL http://202.242.169.152/clap/survey.html)に設問と共に掲載する。(2)インターネットを介して判定用画像の配布実験を行い、判定に耐える画質が得られるかどうか、あるいは表示されるまでの待ち時間等につき検証し、問題点があれば改善する。(3)参加者はインターネットを介して判定用画像の配布を受け、問い合わせや回答を電子メールで送る。 (4)問い合わせや回答の内容を検討し、画像が正しく送付されているかどうかを確かめる。(5)回答の集計作業後、結果および講評をホームページに掲載し、参加者はインターネットを介してそれらを受け取ったうえ自己採点する。

【結果】[スライド5] (1)ホームページから配布された判定用画像の画質は、スライド写真より劣るが、サーベイ用途としては十分であった。(2)サーベイ実施の告知は日本臨床検査医会機関誌の記事とインターネットニュースに限ったが、2ヵ月間でホームページへのアクセスは800回を超え、全く事前打ち合わせなしで、病院検査部3施設および臨床検査技師3名から正式な回答が寄せられた。(3)回答者1名から、判定用画像16枚のうち1枚だけ表示できないとの指摘があったが、原因は不明であった。(4)殆どが基本問題であったため誤答は少数であり、画質不良を疑わせるような誤答もなかった。(5)判定用画像16枚の送付にかかる時間は2分から20分以上と大きくばらついた。(6)結果および講評のページには継続的に月平均約60回のアクセスがあった。

【結論】[スライド6] 今回の結果から、形態検査のサーベイ実施にインターネットが十分に利用できることが実証された。加えて、運営および参加に必要な手間や費用を著しく削減できるうえ、配布する画像の均質性がデジタル情報として保証されるという大きなメリットがあるため、この方法が従来方式に取って代わる可能性も考えられる。ただし今回は限られた分野からの基本的な出題のみであったため、より広い分野やレベルの高い設問にも適用可能かどうかについて、今後さらに検討する必要がある[スライド7]。

(本研究の一部は平成8年度文部省科学研究費補助金 奨励研究(A)課題番号08772180による)

初版(抄録掲載)からの改訂内容

[rev1]
発表時のスライド1〜7を添付


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