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3月7日、気温27度「蒸し暑い」です。
私の宿舎はGarvan Institute of Medical Researchに近く、徒歩12分です。
都心のHyde Parkへ徒歩5分。公園の芝生に野生のibis(日本では絶滅するトキ)があ
ちこちに数羽の群れを作っています。世界中大都会は騒々しく無味乾燥に見えますが、
その中に生きる野生動植物を見ると心が和みます。
HostとなってくれたProf. Sutherlandと、滞在中の予定などの話しをしました。
Garvan Institute of Medical Reserch Starter Kitという青いbagを渡されました。そのbagの中
には1)Personal Data Form(契約書), 2) Annual Report(施設紹介), 3) Application Form for
Network(コンピュータ接続申込書)が入っていました。契約書の形式がまったくCalgary大学のものと同じなので驚きました。私に用意されたofficeは、窓から外の景色が見え、かつ研究室に隣接した場所で、部屋にはInternetと専用電話回線、Macintosh computerが用意され、教授待遇に驚いて
います。本日IP addressを貰って、自分のPowerBook180をInternetに接続しました。Mr. Jim McBridgeというInterigence Technicianが手配してくれました。これで日本語通信ができます。
Thursday 12 th March 1998, 4PM-5PMにSpecial Seminarをやらせていただけることになりました。NAB AuditoriumでGarvan Institute of Medical Research全体のSpecial Seminarで、荷が重いです。この施設のExecutive DirectorのProfessor John ShineはSD配列(Shine-Dalgarno配列)の発見者のShine教授です。あまりにも有名な分子生物学者です。Prof. SutherlandからProf. John Shineも紹介していただきました。
研究者構成:
Senior Research Officer 4
Senior Reserrch Fellow 3
Researhc Assistant 8
Technical Assistant 1
Post Graduate Scholar 5
Graduate Scholar 3
私など外国からのVisiting Sientistを含めた30人程度の活動的集団です。私が到着
した日にも二人のGraduate Scholarが加わっています。Prof. Sutherlandはこれまで
に186の論文があります。現在のstaffの生産性は1997年に限ると、3報のJ. Biol.
Chem.を含む17報の論文が出ています。
人種構成:
研究所は1/4が中国系、1/4がインド系。1/2が白人です。Prof. SutherlandはNew Zealand出身。私も昔Te Pukeで半年ほど農家で暮らした話しをしたらProf. Sutherlandは農家出身で「世界は狭い」と親しみを持ちました。SecretaryのRuth GouldsonさんはEngland出身。研究所内では人種問題は感じません。(しかし、ホテルフロント、小売店の対応などから、カナダの多国籍を認める開放的雰囲気とは少し違った違和感、差別意識を持たされる場合があります。1998年になって有色人種の排斥を唱える右翼勢力が政治的に急成長していると伝え聞いています。オーストラリアの不景気による国内の不満のはけ口が、人種差別となって現れている可能性を感じられます。)
この施設のstaffはだれもparmanet positinは持たず、Professor(5年契約継続可)
、Postdoctoral Scholar(3年契約継続可)であることも活気を生んでいる理由の一
つだと感じます。Prof. Sutherlandは自分の仲間をよく誉め、明るい性格なので、気
持ち良く働けるように思います。
行事予定等:
朝7時30分に研究室に来ると、Prof.Sutherlandは既に執務しており、8時ごろから研究者が現れてLaboが動き初め、8時半にはほぼ全員が出てきて研究室の活動が開始されています。
Wednesday 12:30-14:00 Reserach GroupのResearch Talk
Friday 16:00-17:15 Institute全体のPostdoctoral ScholarのResearch Talkが
定例の行事だそうです。
Tuescay March 17は14:15-18:00までSignalling and Apoptosisのspecial
meetingがGarvan Instituteで開かれるので、参加させていただく予定です。
以上第1報。March 11, 1998
UNSW at Kensingtonはマンモス大学:
医学事務長Mr.Jeffrey Warnockと医学部長Prof. S.John DowtonをKensingtonCampusに今朝表敬訪問し、名古屋市立大学医学部のBulletinを渡して参りました。受付で、「Warnockワーノック」と発音しても、理解してもらえませんでした。Executive Officer...でやっとわかって、「Oh!ウヲーノック!」。英語の発音は難しい。紅茶を飲みながらWarnock45分ほど話し、新しいDeanのProf. S. Bruce Dowtonにも紹介して頂きました。
Professor S. Bruce DowtonはSydney生まれの方です。USAで17年間WashingtonでPediatricianとして活躍されておられた小児科医だそうです。Pediatric Genetistだと自己紹介されました。40代と思われる若いDeanで、身長180cm、顔も頭も巨大な大柄な方です。海外との学術交流など、医学部改革に積極的だと聞きました。
最後にWarnockはProf.Kato, Prof.Sasaki, Prof.Hamanakaに宜しく、と言われました。Warnockから今後の予定を聞かれ、今年は名古屋からさらに二人のcandidatesがSt. George's Hsopitalを訪問する計画しているので宜しく、と話しておきました。Faculty of Medicien HANDBOOK 1998によると、St.George Hospitalには基礎医学研究部門はありませんが、Clinical Schoolの組織があり、Professorの称号をつけているStaffがいます。
http://www.publications.unsw.edu.au/handbooks/medicine/
に最新情報が記載されています。
The University of New South Walesは一流と聞いて参りましたが、私が肌で感じたCampusは、学構内にSEGAのゲーム器が10台も学生cafeに並んでいるのを発見した偏見からかもしれませんが...。 UNSWのKensingtoncampusはややまとまりがない、学生の質の幅が広いマンモス大学の印象を持ちました。March 17, 1998
St.George HospitalにはPrivate HospitalとPublic Hospitalの二つのまったく別の病院組織があります。この二つのシステムはSt.George Hospitalに限ったものではなく、二種類の組織で医療サービスを提供するのがオーストラリアの特徴のようです。Private Hospitalを受診できる患者は主治医を指定でき、five star class Hotelに匹敵する入院室を期待でき、最高の医療を期待できます。Public Hospitalは医療費が安く、一般患者を区別なく受け入れる代わり、最低限の医療しか保証してくれないようです。医療保険の掛け金もこの二つのシステムでまったく異なるそうです。
St.George Private HospitalのDr. David Horton (Head of Department of Surgery)を尋ねて話しをお聞きしました。Dr. David Hortonは60歳前後の純粋な心臓外科臨床医です。St.GeorgeHospital(Public)に隣接するSt.George Private HospitalのLevel 4、Suite 15
にOffice(Tel. +61-2-9587-8166)を構えて、訪問する外来患者を診察しています。
診察室はBotany Bayが眺められる素晴らしい展望の部屋でした。ただし学術研究に関
連したことをこの施設や医師に期待することは場違いであるようです。
Dr. David Hortonが日本から研修医を受け入れる条件の話題では、2週間程度の臨床医、看護婦の訪問であれば、何も細かいことは心配はいらないそうです。いつでも結構だから手紙かFAXで事前に連絡を取ってくれれば自由に訪問して下さって結構です。2-3年の臨床研修をしたい場合には、あらかじめReference(推薦状)の手紙を付けて、手紙で連絡を取って欲しい。これまでの採用は直接個人的な繋がりによるものが殆どです。現在インドから20人、日本から5人の臨床研修医の問い合わせがあます。その中から毎年数人の臨床研修医を雇っておられるそうです。京都や、神戸から、これまで5人ほど臨床研修医を受け入れて2-3年間の修業をしてもらった経験があります。実際は人手が無くて困っている状態なので、能力があると認めたら採用を考えるそうです。
St.George HospitalはUniversity of New South Walesの関連病院に指定されていますが、財政的、人事的な運営面では完全に独立した民間病院施設と思われます。ここの医師はUniversity of New South Walesの肩書きを持ちながら、大学での講義は担当しておらず、臨床研修医を現場で指導する純粋な臨床医と考えられます。Department of UrologyのDr. Tynanとも秘書を通じて連絡しました。病院の近くの街の中(28 Montgomery Street)の小さな家をOffice(Tel.+61-2-9553-7755)として、開業している医師であることがわかりました。二人ともSt. George HospitalのVisiting Surngeonの肩書き、「Visiting」の意味が理解できたと思います。つまり開業医が必要に応じて、病院を訪問「Visiting」して手術を行ない、それ以外の時間は自分のOfficeで開業医として患者と接してます。
Dr.Liz Musgrouve(Elizabeth A. Musgrouve)女史はSenior ReserachOfficerであり、Garvanでステロイドホルモンと細胞周期に関する研究をしています。Progestins prolactinと並んで、乳腺分化ductal cell differentiationを推進します。細胞分化と細胞増殖抑制には密接な関係があり、Lizはこのprogestin-mediated growth arrestの機構を解明する目的で、cell cycle関連蛋白とprogestins刺激との関係を調べ、Mol. Cell Biol.に発表できるまでのdataを出したところです。内容はCycline D1, Cycline D3, Cycline E、Cdk1, Cdk4, pRB,p107、p27, p21の発現パターンをprogestins刺激の前後で経時的に追ったdataが中心で抗体さえ集めればできそうに思いますが、最後に蛋白をgel filtrationで分画したパターンで未知の因子との結合による活性制御の証拠を提示して話しをまとめている所が面白いです。単純なWesternでは未知の因子の結合を明確に示すことが難しかった所を、巧妙にgel filtrationtoinというclassical methodを使って、奇麗なdataとして提示してたところに、この論文のポイントと苦労があったようです。
Cdkの新しいsubstrateを探索する研究をPost Graduate ScholarのOwen W. J.Prallが行なっています。結果ははまだ発表されていませんが、これも単純な燐酸化蛋白をelectrophoresisしたのではまったくsmearで特定できなかったものが、分画された蛋白を使って、cycline dependent kinase-cycline complexで燐酸化させる手順を踏むと、明瞭なbandとしてsubstrateを断定できることが分かったようです。cyclineとcycline dependent kinase complexのsubstrateはまだいろいろと候補があると信じ、未発見のsubstrateを求めて研究を発展させる勢いです。
実際は純粋なcell cycleの研究は競争が激しくて、簡単に後から加わることはできないように思われます。しかしLizのgroupのようにsteroid hormone receptorの研究を主目的としてcell cycleの研究へ結び付ける仕事はまだされていない分野のようです。
自分は門外漢にはcell cycleに手を出すことは危険か?とこれまで躊躇していましたが
、細胞の分化に関係している因子を扱う限り、その因子の機能を調べる観点からcell
cycleに関連させた研究は積極的に行なうべきであると勇気付けられました。
Lizは細面で優しくて大きい目をした静かな雰囲気の女流研究者(Senior ReserachOfficer)です。1984年に日光、飛騨高山、鳥羽、京都などを女友達と二組みで日本旅行楽しんだ経験があるそうです。March 19, 1998
文献:Elizabeth A. Musgrouve, Alexander Swarbrick, Chrisine S.L.Lee, Ann L.
Cornish, Robert L . Sutherland. Machanisms of cycline-dependent kinase
activation by progestins. Mol. Cell Biol.18: (in press April 1998)
Elton Johnのコンサートで週末Sydney宿を追われ、田舎の古いアパートへ引っ越すことになりました。
引っ越し先は4階建ての4階。Australiaの表現では3rd floor( G,1,2,3)。窓が北、東
(海側)、南3方に開いています。ゴキブリとアリが部屋に出没するのは予期していた
通りです。太陽が注ぐ北側から東側に続く角にsun roomがあって、Tasman Sea
が120度見渡せるのが気に入りました。Coogee Beachも見えます。ヨットが海に浮か
んでいます。近くの樹にオウム達の鳴き声が聞こえ、ブーゲンビリア、極楽鳥花が庭先
で咲いています。植物は面白い。また3種類の美しいカメムシも発見しました。アパー
トは丘の上にあって眺めは最高です。Coogeeの街で買い物をして、自宅まで帰るのはけっこうな運動になります。
CoogeeからGarvan Institute of Medical Researchまで毎日バスで通勤することな
りました。定期券(Blue Weekly Travel Pass)をCoogeeのNews Agencyで購入し
今朝、初めてバスに乗りましたが、車内放送はまったくありません。地理のわからない
私などは困ってしまいます。予め運転手にDarlinghurstのSt. Vincent's Hospitalに
行きたい、と告げていたので、特別にTayler Square近くになったら、"Gentleman
who want to go St. Vincent's Hospital... Tayler Square will be the next
stop."といって、運転手が教えてくれました。バス停留所は日本よりも短い距離で設定
されています。100-200m間隔である所も多いようです。7時30分にCoogeeでバスに
乗りました、最初は5人乗り、次第に増えて、Oxford StreetのTayler Squareで私が
降りる頃には満席になっていました。途中の幹線道路はどこも渋滞で、名古屋以上の混
み様です。結局研究所についたのは8時20分になってしまいました。
バスへ乗り込む人間:Public Schoolへ通う学生は小綺麗にして地味な色のカッターシ
ャツにネクタイをしています。ビジネスマンはダークスーツにネクタイをしています。
それらの種族以外はラフでネクタイをしていない男がほとんどで、ネクタイをしていて
も上着が無かったり...。女性服は、夏なのに意外に単色の黒が多いです。白い肌に黒は
似合います。男で髭があるのは服装からはっきりとユダヤ人とわかる人に多いです
。どうやらAustralia人たちはヨーロッパ気取りか、ほとんど髭を生やさない習慣のようです。研究所内でには2-3人口髭を生やしている研究者もいましたが、みなUSA留学経験者のようです。
尚、冷房無しのバスは、それでもベンツ製ですから、今朝から私はベンツで通勤するこ
とになったと言えます。
March 16, 1998
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