2013年9月18日名古屋市立牧の原小学校(深田陽一郎校長)の4年生の皆さんと一緒にバスに乗って内海の東浜海岸へ行きました。この野外実習は、名古屋市教育委員会と名古屋市立大学の連携事業として第1回は2009年7月9日に名古屋市立森孝東小学校におられた畑崎暁代先生と一緒に企画させていただきました。今回でこの企画は4回目になります。「生命の誕生と死」という難しいテーマを掲げていますが、「磯遊び」を通じて子供達自らが海の生き物の素晴らしさを発見してもらう体験学習です。磯遊びの後に、山海小学校跡の体育館(山海触れ合い会館)に移動して、お弁当を食べた場所でスライドプロジェクターを使って20分間のセミナーを行いました。地球上に酸素をもたらしたシアノバクテリアの化石=ストロマトライトの話。単細胞生物(夜光虫、ヤコウチュウ)の浮遊生活をするプランクトン、多細胞生物(無脊椎動物)のアメフラシ、多細胞生物(脊椎動物)魚類へ進化して高い遊泳能力を獲得した話をしました。フジツボはエビやカニの仲間の節足動物に進化した生物ですが、岩に付着してビクとも動きません。自分は動かなくてもクジラのヒレや船底に付着して世界中を動き回る種もある面白い動物です。ダーウィンは進化論を著す前に、フジツボの興味深い生態の徹底的な研究をしてセメント腺を発見しました。ダーウィンの研究成果は、やがて200年後の現代になって、最先端の水中接着剤の研究開発につながっています。
干潮間の約2時間は磯遊びでアッという間に過ぎました。児童たちも素晴らしい視力と鋭い観察力で20種類近い生物種を発見することができました。
波打ち際の海水は無色透明で何も生物は泳いでいないように見えますが500 mlに何十〜何百匹ものヤコウチュウが含まれています。参加者にはペットボトルにこの海水を持ち帰ってもらいました。家に持ち帰った晩に、暗い場所で刺激を加えると、中で光り輝く何かが浮遊していることに気がつくはずです。何が光っているのだろう?なぜ光っているのだろう?
(余談)ニュートンは晩年に自分の一生を海辺で磨かれた小石や、美しい貝殻を見つけて遊んでいる少年に例えています。
“I do not know what I may appear to the world,?but to myself I seem to have been only like a boy playing on the sea-shore,?and diverting myself in now and then finding a smoother?pebble or a prettier shell than ordinary,?whilst the great ocean of truth lay all undiscovered before me.” (by Brewster “Memoirs of the Life, Writings and Discoveries of Sir Isaac Newton” 1855 Chapter 27 p.407)
牧の原小学生の皆さんが発見した生物種のリスト
- 無脊椎動物
- ムラサキウニ
- イトマキヒトデ
- マヒトデ
- ミズクラゲ (刺胞動物門:触手に毒があるが弱いので触れても大丈夫)
- タテジマイソギンチャク
- ヒカリウミウシ
- アメフラシ (外見上は貝殻は退化しているが、背中の外套膜の内部に殻をもつ)
- シドロガイ (貝ですが、目もあり足もあって、地面を蹴って飛び跳ねるので驚く。語源の「しどろ」は「しどろもどろ」の「しどろ」。あっちにふらふらこっちにふらふら歩く意味。)
- ナガニシ
- ヒザラガイ
- ミナミイソカイメン (英語でスポンジ、sponge)
- イワフジツボ (節足動物門 顎脚綱 無柄目)
- カメノテ (節足動物門 顎脚綱 有柄目)
- ヨツアナカシパン (タコノマクラの仲間)
- イシガニ
- フナムシ
- イソスジエビ
- ヤドカリ類
- 脊椎動物
- シリキルリスズメダイ (暖かい海の魚。内海で初めて捕獲できました。語源:シリ(お尻)が黄色のルリ(瑠璃、青)スズメダイ)
- タツノオトシゴ (記憶を司る「海馬」と呼ばれる大脳の領域は、この魚の形に似ているので命名されました。)
- ハオコゼ (背びれの毒に注意:強く握らなければ大丈夫です)
- ナベカ (学名の語源は美しい「エレガント」姿に由来するのだとおもいます。Omobrachus elegance)
- アヤアナハゼ
- ウシノシタ
- オヤビッチャ
- アミメハギ
シリキルリスズメダイ(スズキ目スズメダイ科 Chrysiptera parasema) タツノオトシゴ(トゲウオ目ヨウジウオ科 Hippocampus coronatus)
名古屋市立大学大学院医学研究科分子神経生物学准教授
三浦 裕(みうらゆたか)
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(Last modification, September 20, 2013)