Yutaka MIURA
Yutaka Miura's home page
(the third page level)

ザイルダウン

----------「静止摩擦係数>動摩擦係数」を考えた懸垂下降でのロープの落とし方----------

懸垂下降するロープを下に落とす場合にも力学的メカニズムを考える。傾斜が緩いスラブ状の岩壁ではロープが途中で止まって困ることがある。できるだけ下降点までロープをすっきりと落とすためには、ロープを2束に分けてから、それぞれの束を時間差をつけて投げ下ろす技術がある。「支点側の束か、先端側の束かどちらを先に投げ下ろすべきか?」それが問題である。あらかじめ支点側のロープをU字型に垂らすと、そのロープの重さで次に投げられる先端側ロープが下に引かれて、最下部まで落ち易い、と言われている。逆に先端側の束を先に垂らせば支点側のロープが引かれるので同じような条件に思える。しかし支点側のロープは、最後まで落ちることがない部分だから、その落下速度を加速しても大きなメリットはない。先端側の束を先に投げた後に支点側を投げる時間差が長過ぎると支点側のロープが先端側のロープの落下速度を減速するトラブルが起こり易い。落下速度がを減速すると傾斜の緩やかなスラブ状の岩場で大きな問題になる。減速して停止すると「静止摩擦係数」で計算される摩擦力を越えた力を加えなければ、再び動き出すことはない。もちろん後から投げられたロープの衝撃力で再び動き始める可能性はある。しかし

    静止摩擦係数>動摩擦係数

である。先端側のロープは、投げ出されたら最後まで停止せずに落ち続ける投げ方がよい。先端側のロープを先に投げるなら、その落下速度に制限がかからないように支点側を同時に投げるべきだろう。一方、支点側のロープを先に投げる(垂らす)のであれば、急ぐ必要はない。支点側のロープは垂れて静止摩擦係数で止まった状態でよい。末端側のロープの束は後からのんびりと投げ下ろせばよい。この手順は風が強い条件で垂らしたロープが風で流れないアンカーの役割を演じるので大きな意味を持つ。以上の考察から、「支点側の束を先に垂らしてから末端側を投げる順番」を原則とする。


2013年11月7日
三浦 裕
名古屋市立大学大学院医学研究科分子神経生物学
愛知県山岳連盟所属 社会人山岳会 チーム猫屋敷


to top menu of Yutaka Miura's Home Page

Please forward all comments, suggestions, or corrections to Yutaka Miura
(Last modification, November 7, 2013)