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負けるが勝ち: 我が娘
私には5歳のAと3歳のMの二人の娘がいます。二人で遊んでいると、しばしば下の娘は「Mの負け!」とお姉から言い渡される場面があります。それでも健気にも、Mは笑顔で喜んでいます。Mは何を言われても笑っている陽気な娘です。
さてある日のこと、母親に連れられて、Mは買い物に出かけました。そこでMと母親の駆けっこ競争が始まります。母親は、「負けるが勝ち」とばかりに、手加減してMより少し遅れてゴールインしました。そこで「Mの勝ち!」と宣言しました。
すると、突然いつも機嫌がよかったMが不機嫌になって、「Mの負け!」と主張するのです。思えばMはこれまで「Mの負け!」と言われ続け、その時に姉さんが喜んでいる姿を見て育ってきました。周囲が喜んでいる姿を見て、「負けることは、良いことなのだ」と信じたのでしょう。それなのに今日に限って良いことをしたのに「Mの勝ち!」と言われては、カチンときたのでしょう。母親は瞬時にそれを悟って、「Mの負け!」と言い直しました。その言葉を聞いて、Mはいつもの笑顔を取り戻して、得意になって機嫌良く買い物につきあっていたそうです。
負かされて、「Mの負け!」と宣言されても、いっそう笑顔で喜んでいた理由がようやくわかりました。周囲が喜んでいる雰囲気から、「負け!」の意味を理解していた素朴な子供の思考様式に感心しました。将来いろいろなことで、人に負けることがあるでしょう。しかし、周囲が喜んでいる雰囲気を、我が身の喜びとして、笑顔を絶やさない優しい大人に育ってくれるかどうか、まだまだ先が思いやられます。(三浦 裕 May 9, 1997)
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(Last modification, July 25 1997)