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学力世界一
第19回 愛知サマーセミナー(愛知県私立学校教職員組合連合等主催)でフィンランドセンター所長ヘイッキ・マキパーHeikki Makipa氏の「学力世界一」のご講演(2007年7月22日名古屋市立大学本部会場)を拝聴した。フィンランドの教育は能力別クラスを廃止し、徹底的平等主義を貫くことで、OECD主宰の国際学力テストPISAで世界一を達成している。以下、その講演の感想を記す。
- 愛国心は教育できるか?という質問が会場から出た。マキバー氏は「学校教育では不可能だ。子供は親と教師へ信頼を持ち、親は教師と国家に信頼を持つ状況から愛国心が自然に育つ。」と述べられた。「フィンランドの所得税は35-50%だが、国民は納得して支払っている。」国民は国家の庇護の下に安心して生活していることを実感しているのだろう。国家予算は他の国同様にフィンランドも緊縮財政だが、教育費だけは例外的に増額が認められて、幼稚園から大学まですべて無料保証が堅持されている。教育以外の社会保障も揺るぎなく国民全員の健康的生活が保証されている。このような国家と個人の信頼関係から強い愛国心が生まれると考えられる。愛国心はトップダウンの教育により強要できるものではなく、民主的な国政によって国民の心に「芽生える」ものなのだろう。
- フィンランドのごく平均的家庭で、毎日子供に絵本などの読み聞かせを最低1時間はする習慣があるらしい。私も子供の就寝前に、時間があれば15分か30分本を読み聞かせることがある。しかしなかなか1時間以上も毎日読み聞かせる時間を持つことは難しい。子供に本を読み聞かせる努力が、親子の絆を強め、その小さな作業が毎日積み重なって、愛国心という大きな目標も達成できるのだろう。本を朗読する楽しい家族団欒の夜時間は、法律で決めるどのようなトップダウンの教育体制の整備よりも、きっと大きな教育的効果を持つだろう。すばらしい家庭愛の基盤は、すぐに手の届く所にありそうでありながら、家庭生活のリズム、家屋構造も関わって実際に日本の一般家庭で到達するには非常に努力を要する課題に思われる。
当日のメモより
- 教員が尊厳を持っている(幼稚園も含めて教員は修士以上の学歴)
- 教員の終身雇用が保証されている(同一学校への終身採用)
- クラス担任の地域連帯意識が強い
- クラス構成員の平等と互助意識が強い(能力別クラスの排除)
- 幼稚園から大学に至までの経費が憲法で無料保証されている
- 国民全体の生活保障に基盤を持つ強い愛国心を持っている
名古屋市立大学大学院医学研究科分子神経生物学准教授
三浦 裕

(Last modification, August 4, 2007)