もっとも地球の外側に飛び出している山

 

地球上でエベレストが一番高い山だ。しかし地球の中心からの距離で比較すると、赤道半径が極軸半径よりも21kも大きいために、赤道直下にあるチンボラソ山頂(南緯01° 標高6,267 m)が、エベレスト山頂(北緯28° 標高8,848 m)よりも地球の外側に飛び出している計算になる。

一方、大気は気体だから、地球の質量に万有引力で引きとめられているだけだから、外力が加わっていなければ真球状に広がっているはずだ。本当に大気が真球状に広がっているいるのであれば、宇宙から眺めると、一番飛び出して見えるのが、チンボラソ山頂で(1 B)であって、どの山の山頂よりも酸素分圧が低いはずだ。

(数値資料)

国際天文学連合(International Astronomical UnionIAU)は、

           赤道半径 = 6 378 136.6 m ± 0.1 m

           極半径 = 6 356 751.9 m ± 0.1 m

の値を採用している。この半径で地球周囲の距離を計算すると、ほぼ正確に40000 kmになる。1791年に、地球の北極点から赤道までの子午線弧長の1000万分の1を「1メートル」として定義したのだから当たり前である。

 

実際の大気圧を測定してみると、常識通り標高6,267 mのチンボラソ山頂の大気圧は、あくまで標準的な6,267 mの標高の値になることがEdward Whymper著 アンデス登攀記(岩波文庫)にも記載されている。つまり、私の非常識な「大気が真球として存在する」という仮説は間違っている。

 

 

大気の真実の姿は、自転の影響で回転楕円体である(2A)。大気が地球の自転で回転している影響で赤道周囲に遠心力で広がった結果、回転楕円体に変形しているのだろう。回転楕円体に広がっている大気の下に大気と相似形で海が存在する。海は液体であって、インド洋、太平洋、大西洋それぞれ大陸で分けられていても、どこかでつながっている。海水面に大気圧が加わるとパスカルの原理(図3)によって、地球のどの場所でも同じ圧力で押される力が伝わる。現実的には、大気には高気圧、低気圧など変化があるので、海水面に加わる大気圧は、地球のさまざまな場所で変化する時間に依存する変数である。時間平均を取り、気圧の変化や潮汐力までも平均化して、平均的水位の海水が地球を覆っていると仮定した基準面がジオイド面である。

 

 

ジオイド面からの距離を標高として、実用的地形図は記載されている。もし地球の中心点からの距離で表記されると、宇宙にどれだけ突出している場所かを理解するには便利ではある。ただしその値を知っても、直ちにその場所の大気圧は予測できず、実用的価値は少ないだろう。ただ「嗚呼、チンボラソ山は地球の表面で、一番宇宙に向けて突出した場所だなあ!」と感慨に耽ける趣味人のとっては本当に楽しい数値になる。

 

結論:地球の形は、その表面を覆う液体(海)の形で決まる。そもそも液体は自由にその形を変えて、地球の凹凸を滑らかに覆う性質がある。海が滑らかに地表を覆う最大の理由は、その上から押さえる大気圧が滑らかであるかる事実があるからである。大気圧の分布が変化すれば、海の水の分布は容易に変化する。海水面の水位を決定する第一要因こそ、大気圧である。したがって、大気の形状こそ地球の形状を決定する最大要因と言える。

 

三浦 裕

名古屋市立大学大学院医学研究科分子神経生物学准教授

名古屋市立大学蝶ヶ岳ボランティア診療所 開設者

愛知県山岳連盟所属 社会人山岳会 チーム猫屋敷