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バクニン(Bac Ninh)市の同人寺

 9月11日はバクニン博物館の後、『医宗心領』の版木を元々所蔵していた同市内の同人寺も探し当て、参観することができた。右写真のように境内はきれいに掃き清められている。しばらく見回っていたところ、30代位の尼僧が現れた。事情を説明すると寺内に招かれ、親切に説明していただいた。彼女は大学卒業後に体調不良となり、それがきっかけで仏門に入ったとのこと。一人で寺を管理・維持しており、きわめて貧しく質素な様子が一目で分かり、尼僧や居室を撮影するのは憚れた。

 説明によると寺には他に仏典の版木もあったが、『医宗心領』以外はある段階で南(サイゴン?)に持って行かれ、のち行方不明とのこと。版木を保管していた建物(1室)は崩れ、今は左写真の空き地になっていた。なお『医宗心領』や他の仏書の版木が当寺で保管・印刷されていたのは、バクニンが古くからベトナム伝統楮紙の産地だったことと関係するのだろう。右写真は当寺を建立した僧と、再建?した人物の祭壇。

 上掲祭壇左右の柱には金書の対聯があり、その一部(左写真)に「海上」の2文字が見える。あるいは『医宗心領』の著者・海上懶翁と関係するかもしれない。当寺の建立は19世紀らしいが、右写真のように中国や日本・韓国とも異なるベトナムの建築様式と思われた。ベトナム伝統建築の内部構造を注意して見たのは、これが初めてである。