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常宿旅館の酒宴

 今回のハノイ訪書では漢喃研究所から徒歩10分ほどのPho Thai Thinh通りに面した、Halong Hotel II(Tel/Fax +84-4-38534941)に51日宿泊した。そんなに長く住んだのは研究所に近く、部屋が1泊18万ドン(約10ドル)と格安だっただけでなく、とても便利だったから。ホテルというより旅館のレベルだが、トイレ・シャワーつきの清潔な部屋はセミダブルでかなり広く、室内に来ている無料のLANは高速で、むろんクーラーも問題ない。道路を挟んだ向かい側にはYamadaya's Ramenがあって、ラーメンや日本料理が食べられる。近所にはPhoやBINH DAN COMの店も多く、食事に困らない。ただ天井裏でネズミが運動会を毎晩したり、週に1、2回数時間停電したりネットが止まるが、慣れると気にならなくなった。

  一番気に入ったのは旅館の玄関にゴザを敷いて毎晩やっている夕食兼飲み会だった。真横が大きな国立針灸病院なので、その長期外来治療患者がハロン市から数人常宿しており、ここの番頭や従業員と昼食と夕食を一緒に作っていて、宿泊一週間を過ぎたころから飲みに誘われ始めた。最初は遠慮してベトナムヴォッカを一口いただく程度だったが、だんだん病みつきになり、飲み過ぎてしまうので、途中からは週に2回程度のおつきあいにした。英語は通じず、むろん中国語・日本語も通じないし、私はベトナム語を話せない。だが幸い、万国共通のアルコール言語で問題なく意志は通じた。とはいっても、食事の材料費がどうなっているのかだけは最後まで不明だった。

 下は8月27日の夜で、左写真の左から従業員(料理も担当)、常宿患者、番頭さんで、皆で私の持参したウイスキーやLuo Moiというベトナムヴォッカを飲んでいる。

 左写真は8月27日の食事で、大きな金属のお盆に料理や付けだれを載せ、この時初めてレモングラスの芯をボリボリかじるのを覚えた。右写真は9月9日の料理で、卵焼き・生野菜や好物の豚足がある。

 左写真の女性二人はハロン市からの常連客で、右側女性が長期治療患者。右写真奥の女性は右側男性患者の奥さん。ハロンの常連客が多いのは、ホテルの名前からしてハロン資本なのかもしれない。なお、彼女たちはビールを一口程度飲むだけで、それ以上は決して飲まないのが理解不能だったが、それが女性の「たしなみ」らしいのも徐々に分かった。

 ベトナム語で乾杯をチャコップというのも、スルメにアルコールをかけて焼く方法も、ここで覚えた。右写真は9月17日に旅館近くの海鮮レストランでDINH KHAC Thuan氏・大西氏と食事した時、これまで見た最大のコブラ酒で驚いている。

 その後さらに旅館玄関の酒宴に3人で参加し、この夜は痛飲してしまった。右写真は奥の従業員が愛飲しているポリタンク入りのベトナムヴォッカで、とてもよく効く。

 左写真の男性は地方都市の建築設計技師で片言の英語が通じ、ハノイの現場指揮でよく泊まりに来ていた。酔うと楽しい人物なのだが、女性にきつい下ネタ冗談を飛ばしては、たたかれるのが面白い。彼は大西氏に宗教者会議への招聘状をこの場で発行したので、どうも相当な名家の出身らしい。中央写真の番頭さんも酔うと楽しく、唯一知っている中国語の吃飯と喝酒だけを毎日私に連発して誘うので、うれしいが困る時もあった。しかしチャコップの一言だけで楽しく意志が通じ、実に得難く有意義な酒宴だった。