←戻る 真柳誠『龍谷大学大宮図書館和漢古典籍貴重書解題(自然科学之部)』7-8頁 、京都・龍谷大学発行、1997年7月30日

運気易覧 三巻一冊(690.9-582-1)写字台本

明・汪機(省之、石山)編 明嘉靖一二年跋刊 毎半葉匡郭約19.3×13.3㎝

 当本には嘉靖七年(一五二八)の汪機自序と同十二年(一五三三)の程子礪の序がある。また同十年の程鐈の跋もあり、そこでは門生の彼が汪機の許しを得て本書を刊行するという。したがって本書は一五二八年の成立で、一五三三年に程鐈が初刊行した。当本は字体からしても、この程鐈跋刊の初版である。

 のち当版は汪機の他の編著書七種と一括され、明末の崇禎六年(一六三三)に『汪石山医書八種』の名で合印された。これに合印された嘉靖十一年(一五三二)序刊の『針灸問対』と同十三年(一五三四)序刊の『推求師意』も写字台本にあり、みな当本と同じ中国の原装である。すると当版は一六三三年の後印本らしい。なお本書と確定できる江戸期の輸入記録は見当たらないが、元禄十二年(一六九九)刊の一色時棟の蔵書目録『二酉洞』に「汪石山全集」が記されているので、当本なども一六九九年前後頃に写時台文庫へ架蔵された可能性がある。

 汪機(一四六三~一五三九)は安徽省祁門県の人で、字は省之、石山と号した。金元四大家の一人、朱丹渓(一二八一~一三五八)の学説を継承するが、その医説には独自の見解も多い。父の汪渭も当地の名医だった。編著書には『汪石山医書八種』所収の八書の他、『本草会編』『傷寒選録』『素問補註』がある。

 本書は運気に関する医論書である。運気とは十干を木火土金水の五運、十二支を風寒暑湿燥火の六気にあて、各年の干支から疾病の傾向等を論じるもので、宋代から行われ、元以降とくに流行した。江戸期にも流行したが、本書の和刻本はない。

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