←戻る 真柳誠『龍谷大学大宮図書館和漢古典籍貴重書解題(自然科学之部)』15-16頁 、京都・龍谷大学発行、1997年7月30日

痘麻疹方 一巻一冊(690.9-506-1)写字台本

明〔嘉靖〕刊 毎半葉匡郭約17.5×12.7p


 

 当本一冊は序跋・目次等および本文第一・二葉を欠き、そのため著者と正式書名等を確定できない。第六十葉が巻末で、末行に記す「痘麻疹方終」から 当本の書名を採った。その第十六行には「刊行」とのみ刻されるが、その上約九文字部分に四文字相当の墨丁様末刻部分があり、何かの理由で刻版者名を刻入し なかったものと推測される。

 さらに全体は毎半葉十行二十字詰だが、第三・四葉は版面・字体が似るものの半葉九行十九字詰で違う。版心下方に刻される葉次でも、第「二十」葉と 「廿」葉、第「三十」葉と「卅」葉が各々あり、それらは別書から混入したらしい。一方、版式・字体は明嘉靖(一五二二〜六六)刊本の特徴を備えている。

 当本の「痘麻疹方」と同一名の書は他に所蔵記録がない。しかし嘉靖版の痘疹書・小児科書、あるいは医学全書の一部、ないし付録だった可能性もあ る。したがって「痘麻疹方」が正式名書ではない場合も当然あり、これらについては後考に期したい。

→ 各葉の画像