←戻る 真柳誠『龍谷大学大宮図書館和漢古典籍貴重書解題(自然科学之部)』 17-18頁、京都・龍谷大学発行、1997年7月30日

外科精要 三巻一冊(690.9-352-1)写字台本

宋・陳自明(良甫、良父 )編 明・薛己校注 明〔嘉靖二十七年刊〕 毎半葉匡郭18.8×14.4p

 『外科精要』には大別して宋・陳自明の旧態本系統、明・熊宗立の校刊本系統、明・薛己の校注本系統がある。当本は薛己本系統で、嘉靖二十六年(一五四七)の薛己序、同二十七年(一五四八)の王詢序、および目録と薛己の「補録」一巻を各々欠くが、他図書館の同版との比定より、嘉靖二十七年の序刊本と認められる。宋版を模した美しい嘉靖版の典型で、同版の所蔵は他に日本・中国大陸・台湾に計七点が知られる。

 著者の陳自明は江西省臨川県の出身で、字を良甫もしくは良父と称し、三代続いた学医という。十二世紀末〜十三世紀初の生まれで、建康府明道書院医諭の官にあった南宋の嘉煕元年(一二三七)に『婦人大全良方』二十四巻、その二十六年後の景定四年(一二六三)に『外科精要』を著した。また一二七一年には『管見大全良方』十巻と付録の『診脈要訣』一巻を著している。

 本書に校注を加えた薛己(一四八七〜一五五九)は江蘇省呉県の出身で、陳自明の『婦人大全良方』にも校注を加え刊行している。立斎と号し、明・正徳年間(一五〇六〜二一)に御医となり、嘉靖年間(一五二二〜六六)には院使を任じた。

 この薛己校注本はのち明代後期編の個人叢書『薛氏医案』に収められ、日中ともに広く流布した。とくに中国では陳自明の旧態本系、熊宗立の校刊本系がともに佚伝したので、現在は薛己本系のみ流布している。日本では承応三年(一六五四)に『薛氏医案』十六種本、寛政九年(一七九七)に津軽意伯校刊の旧態本が和刻されている。

 なお書名の「外科」には現在の外科ばかりでなく、皮膚病も含まれる。

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