2001年8月4日夕食 インド料理
(このページを見た大平君からの怒りのコメント全文を2001,9,20に追加)
(台北市民生東路と中山北路の交差点、華泰飯店の近く新得里にて。二人で約2,300元=約8,300円)
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 この日は土曜日。台湾は国公立機関をはじめ週休二日が多くなったらしく、今回来てみたら故宮図書館の善本室は土曜閉店。去年は隔週で土曜半日は閲覧できたのに。ならばと昼まで寝て疲れを癒し、汗まみれになった一週間分の衣服をコインランドリーで午後まとめ洗いし、すっきりした夕方、インド料理を大平君を誘って食べに行った。もう台湾の普通の食事にはいい加減あきてきたし、台湾化してない外国料理が無性に食べたくなったから。

 大平君は私の指導で卒論を仕上げ、東北大の院に進学して去年から台北の師範大学に留学している。少女マンガ何千冊とやらの蔵書をほこり、語らせたら夜も明けるという隅に置けない人物で、話していて飽きない。現地通の彼にしばしば案内してもらうのだが、この日は彼が数ヶ月前に見かけたというインド料理店が閉店したらしく、付近を二回往復しても見つからなかった。

 それで近くにあった新光三越デパートに入り、案内嬢にこの付近に美味いインド料理店はないかとたずね、教えてもらったのがこの夜のレストラン。しかしデパートには一切関係ないのに、彼女は親切にもどこかに電話をかけ、よく調べてくれた。日本系なら日本人に親切かな、という私の下心が当たったのかもしれない。でも、われわれ二人を日本人と認めてくれていたかどうかは、どうも疑問が残る。

 けっきょく当日インド料理店を探し始めてから小一時間、地下鉄中山駅から歩くこと約10分にある新得里というレストランにたどり着いた。得里の中国音は「deli」なので、むろん新得里はニューデリーのこと。いささか格式高そうな店構えに大平君ともども一瞬たじろいだが、のどの渇きと空腹は限界に達している。ともあれビールだけでも、の気分でドアを開けると、インド人らしき団体客がいるではないか。ならば味だけは大丈夫だろうと意を強くし、ずんずん入ることにした。

 席に案内されメニューを見ると、予感通り1品およそ400元前後と高い。1品でも普段の夕食の数倍かなと動揺はしたが、懐にはVISAカードもある。でもビールだけはとケチって台湾ビールを注文していると、なんと大平君はここぞとばかりの勢いでメニューをにらんでいる。とっさに彼の魂胆を察し、外でも食べられるサラダやフルーツなんて注文したらだめだよ〜ときっぱりくぎをさし、二人で決めたのが上下写真の5品。

 ウェイターのインド人は中国語をどうも解せず、味への予感はさらに高まった。にもかかわらず「辛くないのがいいか」と尋ねるので、当然辛くしてとは注文したが、少々の不安が脳裏をよぎる。で、最初にきたのが写真左上のタンドリーチキン(真ん中の白く色抜けしているのはレモン。台湾レモンはライムみたいに緑の皮が多い)。やはり大丈夫だった。ヨーグルトに漬けた時間が短めかなという程度で、味は台湾化していない。次に来た写真右上のラム肉クミン味つくね窯焼き(名称失念)も文句なく美味かった。皿左上の未経験香草(香菜−コリアンダーのような?)ペーストとの相性もぴったり。

 それで最後に来たのが原寸よりやや小さめだが、写真左上のチキンカレー、右上のマトンカレーと下中央のナン。カレーは辛味が私にはまだもの足りなく思えたが、ともに台湾食にないスパイシーさがたまらない。ただしナンはどうもパリパリしすぎる。すでにビールは3本目に入り、私はいい気分になっているのに、大平君はまだ食べ足りない様子。そこでカレーにはやはりライス、と追加した。残念ながらインディカ米ではなかったが、ようやく彼の欠食留学生活を補うことができたようだ。

 このようにして二人ともども、台湾化していない日本人にとっての外国料理を久々に満喫した。ただし値段は、東京あたりで同レベルを食べるより高めに思える。台湾ではイタリア料理も相当に高いという台湾の友人に、日本でイタリア料理は安い外国料理の部類だよ、と話したらちょっと驚いていた。けっきょく値段と質は普及程度に関係するのだろう。日本で台湾屋台料理と称するのはそんなに安くないが、もっと普及して定食屋や学食なみになってくれると嬉しいのだが。

 以下はこのページを見た大平君からの怒りのコメント全文です(2001,9,20)


「大平からの補足」

 全国343人の真柳ファンの皆様、こんにちは。台北ガイドの大平と申します。

 台北のインド料理について紹介している部分で名前が出ました。大変光栄なことだとは思うのですが、付け足しておきたいことがあります。

 ポイントは2つあります。

 まず、あの書き方では料理を注文する段になって私が突然食い気を前面に出したように読めますが、本当はあの日、待ち合わせ場所で会った時の第一声が、「我現在特別餓」(いま、腹減ってますよお)だった上、道中もずっと「腹減ったー、あの安っぽい洋食屋のハンバーグ定食でもいいっす」などと言っていたくらいで、私が「食う」のは早い段階で分かっていることでした。

 よって、先生が料理を注文するとき初めて私が「食う」ことに気がついた、というのは、誤りです。無意識の誤りか意図的なのかは分かりませんが。そんな、注文直前になって本性あらわすような卑劣な真似はしません。

 加えて、私は確かに食べますが、必要以上に高い物を貪り食ったりはしません。その後行った海鮮の店でも、蟹を注文しようとしたら600元だったので、100元の海老2匹に変えた、というくらいの配慮は払っています。

 ちなみに先生を案内するとき、希望だけ聞いて行き先を決めたり、案内したり、結構大変なんです。単なる観光客を案内するのなら、「台湾料理」でいいんですが、先生の場合、逆に「台湾料理以外」ですからね。台北あたりで先生の希望に沿えるレストランって、少ないんですよ。

 ポイントのもう一は、私の少女漫画話云々・・・話していてあきない、というくだりです。

 確かに私は酔っ払って「奪うのが恋ってわけじゃないんです!」とか主張することもありますが、話している時間は真柳先生の方がはるかに長いし、テーマも、完全に真柳先生寄りなんですよ。私は基本的に聞き手です。

 単なる酔っ払いと化した先生は、たとえば次のようなことをお話になります。

・政治(政治なんて幻想なんだそうです)
・大学再編(みんな大変なんだそうです)
・本草(モノの起源を歴史教科書に載せやがれ、と主張してました)
・ブルースギター(あいまいに頷く以外にリアクションのしようがありません)
・昔の悪事(いろいろやってたそうです)
・昔の貧乏自慢(じつに自慢げに、「君は貧乏を気取っているが、僕のときなんかはねー」と)
・女の口説きかた(大事なのは男の色気なんだそうで)
・食い物話(食うことへの執着ぶりは皆さん知っての通り)
・たばこの害(誇大に喧伝されすぎているんだそうです)
・のろけ話(奥さんとの)
・ジェネレーションギャップ(娘さんたちとの。相手にされないそうです)
・暴露話(中文人間関係よもやま話)
・青春話(恥じらいつつ。ある意味万年青年ですからねー)
・ラーメン話(自称「ラーメンの伝道師」)
・酒話(ひたすら酒)
・・・etc

 というわけで、自分の好きなことを喋りまくっているわけですから、話していてあきないのは当たり前なんですよ。それで会話が成立してしまうのは、会話の波長が合っているということなんでしょうけど。

 以上、2つの点を補足させていただきます。

 何より貧乏に造詣の深い先生のこと。きっと案内にかこつけて、私にごちそうしてくれているのでしょう。ありがたいことです。謝謝。

 本当は単に先生の旨い食い物への果てしない欲求がそうさせている、という気もしますが。

 長文失礼いたしました。