バブルを終わらせるのもバブル
実体のないものにあたかも実体があるかのように商品化して売りつけるのがバブルである。悪疫としての実体がない新コロがあたかもスペイン風邪の再来であるかのように偽装して多くの人々が商売のネタにしたのが新コロバブル。実体がなくて人間の心理で形成された虚構に過ぎないのだから,人々の心理が「新コロなんかに構っちゃいられない」となれば,必然的に新コロバブルも終わる。新コロバブルはインフォデミックだから,そのインフォデミックを終了させられるのは,世界中に蔓延している過剰流動性という名の本家のバブルだけである。本家のバブルがはじけて本当のパニックになれば,所詮5類の新コロになんぞもう誰も振り向かなくなる。この新コロバブル崩壊シナリオを考える上で参考になる記事をいくつか紹介する。

オランダチューリップから新コロ世界大戦まで
英金融グリーンシルが破綻準備 ソフトバンクGが出資 FTなど報道 ファンド凍結で経営危機に(日経新聞 2021/3/3)
この記事にあるサプライチェーンファイナンス(SCF)はサブプライムローンの既視感満載である。「バブル」の語源となった南海泡沫事件の仕掛けも金融商品だった。南海バブル18世紀初めのことだから,金融商品がバブルを創り出す構造は300年間変わっていないことになる。17世紀オランダのチューリップや我が国は明治維新のうさぎバブルも含め,いつも実体のないものにあたかも実体があるかのように商品化して売りつけることよってバブルが生まれた。『ぼくらはバブルに振り回されて ── うさぎ・チューリップとサブプライムローンはどう違ったのか?』には、「ブレトン・ウッズ体制→ベトナム戦争戦費増大→ニクソンショック=金本位制の停止→「金」の縛りを放たれた貨幣が過剰流動性を得ることになった」とある。少し長くなるが下記に引用する(抜粋。太字は池田)。
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 実をいえば、この世界は比較的最近まで金本位制だった。1944年7月、第二次世界大戦の勝利を確信した連合国の代表者は、アメリカ合衆国ニューハンプシャー州ブレトン・ウッズに集まり、戦争によって乱れた世界経済をどうやって立て直すかについて議論した。そして、米ドルを金(ゴールド)と交換できることにして、そのドルに対して各国通貨の交換比率を定めた。「ブレトン・ウッズ体制」の成立だ。ブレトン・ウッズ体制は、まごうことなき金本位制だった。金の採掘量が増えなければ米ドルの供給量も増えず、それと交換比率の定められた他国の通貨も増えないという仕組みだ。

 ところが1960年代半ばからベトナム戦争が激化したことで、アメリカでは戦費が増大。さらにアメリカの貿易収支は黒字幅を狭め、71年には貿易赤字に転じた。世の中に出回っている米ドルの量に対して、アメリカの保有する金が足りなくなってしまった。1971年8月、当時のアメリカ大統領リチャード・ニクソンはドルと金との交換を停止すると発表。世界に衝撃を与えた。この「ニクソン・ショック」以降、世界の通貨は貴金属の縛りを逃れた。本位貨幣ではなくなったのだ。貨幣不足の危険が大幅に減ったことが、70年代~80年代の先進国の豊かさを支えたのは間違いないだろう。反面、貨幣供給は際限なく増え続けた。

 カネには数千年の歴史があるが、現在の世界ほど大量のカネが流通した時代は、過去に例がない。現在の私たちは、史上空前のカネがじゃぶじゃぶした時代を生きている。極度の過剰流動性のなかで生きていると言ってもいい。リーマンショックでさえ、そのほんの一部が蒸発したにすぎない。いつの日か、現在のスーパーバブルがはじけるときが来るのかもしれない。(*更新日:2019年02月01日)
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ここにも「既に起こった未来」

上記の記事におけるキーワードの一つである「過剰流動性」は決して後付けの新語ではない。その証拠には,「現在のようにすでに過剰流動性の存在が認識されている」という言葉が,ニクソンショックのわずか4ヶ月後1971年12月に出た,経済企画庁(当時)による世界経済白書(年次世界経済報告)に見出される。ここで示されている第2-11表も非常に味わい深い。またもう一つのキーワード「金本位制」と「戦費増大」については、黒田東彦がそっくりそのまま真似た高橋是清による「リフレ・レジーム」を参考にされたし。
*:この記事が書かれたのは、新コロバブルが始まる1年も前である。その時既に「史上空前の金余り」だった。その後の新コロ世界大戦が戦費増大を招いた「史上空前の金余りの二乗」である。バブルがはじけない方がおかしい。

新コロバブルの物語
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