米国の医療訴訟
1992-2014の経年変化

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米国の医療訴訟、賠償金支払い件数は大きく減少も1件あたりの賠償額は増加 Qlife Pro 2017年04月10日
米国の医療訴訟に変化
 米国の医療過誤訴訟では、医師1,000人・年あたりの賠償金支払い件数が大きく減少し、1992~2014年の間に56%低減しているという調査結果が報告された。一方で、1件あたりの平均賠償額は1992~1996年の約28万7,000ドル(約3157万円)から、2009~2014年には35万3,000ドル(約3883万円)へと約23%増加していた。
 この2つの傾向は、医療過誤訴訟における不法行為法改革(tort reform)の影響を反映したものだと考えられると、研究の筆頭著者である米ブリガム・アンド・ウイメンズ病院(ボストン)のAdam Schaffer氏は話す。「損害賠償請求額に制限を設ける法律により、訴訟を引き受ける弁護士を見つけるのが難しくなっている可能性がある。また、この改革で請求がスクリーニングされるようになり、利点の少ない請求が除外されているのであれば、平均請求額が増大する理由となる」と、同氏は説明している。
 今回の調査では、全米医師データバンク(NPDB)のデータをレビューした。2009~2014年に支払いの発生した28万件超の訴訟のうち、100万ドル(約1億1000万円)を超えるものは約8%で、約3分の1は患者の死亡に関連するものであった。全体として最も多い訴えは誤診であることもわかった。
 また、診療科によって医療過誤の傾向と賠償額は大きく異なっていた。たとえば、賠償額は総合診療医(general practitioner)では1万7,400ドル(約191万4,000円)ほどの増加にとどまったが、病理医では13万9,000ドル(約1529万円)もの増加がみられた。同様に賠償件数の減少率にも差がみられ、循環器科では14%だったが、小児科では76%もの減少が認められた。心臓専門医はとくに救命処置を多く行うために訴訟件数が減少しにくく、小児科では新生児集中治療室(NICU)が高性能となり広く普及したことが、急激な減少につながったと考えられるという。
 ただし、Schaffer氏によるとこうした医療過誤訴訟の減少は、医療の安全性が向上した結果とは限らないという。米国の大手医師賠償責任保険会社The Doctors Company社(カリフォルニア州ナパ)のDavid Troxel氏は、「訴訟の減少傾向は2003~2005年に急激に始まり、その後は徐々に横ばいになっている」と指摘する。「この時期に患者の安全やリスク低減が注目されたためだと思いたいが、この理論では訴訟の減少が急すぎることや、他の災害保険でも同様の現象がみられる事実を説明できない」と同氏は述べ、「大半の医療過誤訴訟は論拠が薄く、賠償に至らないため、弁護士はより有利な案件を求めている可能性がある。そうした傾向には不法行為法改革も寄与しているのではないか」と付け加えている。
 Schaffer氏はさらに、とくに訴訟の多かった1%の医師が、賠償金の支払われた訴訟のうち約8%の原因となっている点を指摘している。「理由は不明だが、一部の診療科は他に比べてリスクが高く、また同じ科のなかでも専門領域により大きな偏りがある」と、同氏は説明している。
 今回の研究は、「JAMA Internal Medicine」オンライン版に3月27日掲載された。(HealthDay News 2017年3月27日)
▼外部リンク
Fewer Successful Malpractice Claims in U.S., But Higher Payouts
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