措置という縛り

措置というのは,行政がサービスの享受者を割り振ることで,あんたはあっちに行きなさい,そっちへ行ってはだめですよと,人間の行き先を縛ることです.重症心身障害者(児)施設の入所は,児童は児童相談所,成人は福祉事務所が”措置”として決定します.サービスの享受者がサービスを受ける場所や種類を選べない,お上行政の典型例です.この縛りでとんでもない不都合が最近起こりました.

他の施設に入所している人が,私の施設に歯科の治療にやってきました.その人は全身麻酔下で抜歯してから,一晩経過観察のためにこちらの施設に泊まる予定にしようとしたところ,泊まれないことがわかったのです.つまりその人は他施設に入所しているので,別の施設に泊まることは一度に二つの入所施設に措置されることになり,法律上許されないのです.これが自宅に泊まるとか,重症児施設ではない病院に入院するとかだったら全く問題がないにもかかわらず.

同じような施設なのに,たった一晩別のところに泊まることができないなんて!なんて馬鹿げた仕組みでしょう.やむなく,形式上,もともといる施設を一日だけ退所してコロニーに短期入所するということにしたのですが,措置という仕組みの硬直性,非現実性をまざまざと見せつけられた事件でした.

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