診療のレベルとは別に,日英で病態の考え方や人種による病気の差が診療態度の差になって現れ,日本人がとまどうことがしばしばある.いくつか具体例を紹介していこう
極端な例は乳幼児の蒙古斑である.英国人医師でも蒙古斑のことを知らない人は結構いて,赤ん坊の尻の青あざを見て,すわ出血傾向かと,医者の顔も真っ青になるとの話を聞いたことがある.
また高血圧の患者に塩分制限をするかどうかでも日英の医師の見解は分かれる.英国では高血圧のコントロールのために塩分制限を勧める医者はごく少数だ.発熱に対する投薬の態度もはっきり異なる.日本人の患者は熱が上がるとその熱を下げることが治療だと思い込んでいる.それは間違いだ.熱を解熱剤で下げることは病気を治すことではない.その理由を説明すると長くなるので省略するが,日本人の医師は患者の要求に負けてしぶしぶ解熱剤を出しているのが現状だ.(私は極力解熱剤を出さないことにしているが,風邪の嵐の外来で解熱狂信論者が次々に襲来すると,どうにも抵抗できないことがしばしばある.ただ子供の熱を下げてくれればいいんだという馬鹿な親にはほとほと困る)この現状に慣れた日本人は英国でも解熱剤をしきりに要求するが,英国人医師は無駄なものは出さない.