スコットランドの道路

観光というと,山,湖,美術館,宿などの”点”に注意が向きがちだが,車好きの人はむしろ道路という線に好奇心をそそられるだろう.ここでは私が実際に走ったハイランドの道路を中心にその魅力を解説していく.全部走破したわけではないので,カッコ内に実際に走った区間を記した)

実際の運転にあたっては,RAC(王立自動車協会)のオンラインルート検索システム,Route Planner Serviceを是非とも利用してもらいたい.出発地と目的地を入れるだけで,最短経路と所用時間を出してくれる.地図でマイル数と道路条件をにらめっこしながら所用時間を算定する,あの悩ましい作業からあなたは開放されるのだ.

一般的な注意A82A83A816, A830, A835A9B8074

一般的な注意

M9のようなmotorwayからハイランドのsingle track road(車一台分の幅の道路で,ところどころにある待避所で対向車が入れ替わる)まで,千差万別である.したがって運転も道路状況にあわせて変えなくてはならない.スコットランドの道路では,日本ほどひどい渋滞はないし,行き先表示板もとてもわかりやすくできている.一般的に言って運転手の行儀もいいから,日本よりずっと運転しやすい.しかしスコットランド特有の事情もある.

天候
お馴染みの雨は当然ながら視界,路面に悪影響を及ぼす.ハイランドの山は禿げ山が多く,雨水を保持する能力に乏しいから,谷底を走る道路は強い雨が降ると川に変身することがあるので注意.また雨に加えて,濃霧も運転の大敵である.

羊を中心とした家畜,動物
羊,牛といった家畜は個人の財産である.跳ね飛ばしたりしたら一大事だ.家畜でなくても,うさぎのような小動物が道路に飛び出してくるが,これはよけきれない.エジンバラとインヴァネスを結ぶA9では,うさぎの轢断死体がそこここに見られる.私は出会ったことがないが,ハイランドでは鹿の飛び出しに注意という標識も見かける.

運転速度と追い越し
日本より飛ばす人が多い.前の車を煽るような人はまれだが,飛ばすのが不得意な人は,後ろの車のいらいらには配慮を忘れず,率先して道をゆずり,自分はゆっくり行くことを心がけた方がいい.

A82(Glasgow-Fort William)

私がハイランドとの逢瀬を重ねた道である.グラスゴーから1時間とたたないうちにLoch Lomondが視界に入ってくる.その後も,広く静かな湖面とBen Lomondの勇姿の組み合わせ,Crianlarichの山々,Rannoch Moor,Glencoeと,贅の限りを尽くした情景が続く.グラスゴー滞在で,もし一日だけ自由になるとしたら,私は迷わずA82をたどるために使う.

沿線に名所が多いので夏のハイシーズンは混雑するが,日本の渋滞ほどではない.ただ,切れ目なく車が走るということだ.また,Loch Lomondに沿って走る部分で,日本での山道を運転を思わせる見通しの悪い区間がある.これは湖の水辺まで山が迫っているという,日本でよくある地形によるのだが,この区間を地元の車は40マイル以上で飛ばしていく.A82を走るためには,それについていく運転技術を要するので注意.碓氷峠や安房峠の旧道が好きな人なら,余裕を持って走れるだろう.

A83 (Lochgilphead-Loch Fyne-Invararay-Tarbet)

LochgilpheadからLoch Fyneを右手に見ながら森の中を通り抜ける,これまた快適な道路.小綺麗なお城で有名なInvararayを通ってグラスゴーへ向かう.Obanからグラスゴーへ向かう時,時間に余裕のある場合は,後述のA816からLochgilpheadを経由する,このルートをお薦めする.

A835 (Inverness-Ullapool)

Invernessから北西ハイランドに向かうためには一番手っ取り早いルート.交通量の多いA9を離脱してA835に入ると車が少なくなってほっとする.Ullapoolまではハイランドの荒涼とした風景あり,緑豊かな山ありで,変化に富んでいる.Ullapoolまで来たら是非とも北へ車を走らせたい.ハイランドの中でもとびきり美しい北西ハイランドの見事な風景が広がる.時間があれば海岸沿いのB869経由でArchiltibuieやLochinverまで足を延ばしたい.名峰はもちろんのこと,おいしいシーフードレストランにめぐり会えるだろう.

A9 (Stirling-Perth-Inverness)

LowlandsとHighlandsを結ぶ大動脈である.日本の高速道路並みの車線数を備えた区間が多い.それだけにトラックやトレーラーの類が多いので運転はちょっとストレスだ.片側2車線の区間と1車線の区間が混在するのもちょいと面倒かな.しかし,スピードが出せるので,移動には適している.途中休憩できる沿線の町が多いのも利点だ.周囲の風景は大したことはない.移動のためと割り切って走る道である.沿線にはピットロッホリーとか,Speysideの醸造所とかいった観光名所があるので,名所好きの人は途中下車してもいいだろう.(私はこの種の観光名所には興味がない)

A816 (Oban-Lochgilphead)

Obanからを南下してLochgilpheadまでの田舎道である.夏の午後,西側からの陽光を受けて金色に輝く海が素晴らしい.左側に山が迫っているので上り下りのアクセントもある.Obanからの帰り道には是非とも利用したいルートである.

A830 (Fortwilliam-Mallaig)

FortwilliamからMallaigまでのA830は,ハイランドのドライブ旅行の中でもとっておきの道です.このA830とほぼ平行して走る鉄道はUKでも一二を争う景観を誇る路線です.したがってA830の景観も素晴らしいものです.ただし,飛ばせる道ではありません.素晴らしい景観を楽しみながらのんびり走る道です.マレイグからのフェリーの便数が限られていますので,そのフェリーに間に合わせようとして焦って走る羽目になることを避けましょう.A830を時間を気にしながら急いで走るなんて,宝石をゴミ箱に捨てるような行為です.

B8074 (Bridge of Orchy-Oban)

A82からObanへ向かうのは,普通はCliftonの三叉路でA85へ向かって曲がるわけですが,私が好きなのは,グラスゴーから行って,Tyndrum,Clifton〔ここにはスコットランドには珍しく,大きなドライブインがありますので,(少なくとも98年にはあった)休憩にはもってこいです)を越えてしまって,その先,Bridge of Orchyのちょいと手前で,B8074というB級道路へ曲がることです.このB8074のいいところは,静かな田舎道で,途中に滝があって(といっても垂直に落ちるものではなく,急傾斜を勢いよく流れるという感じ),そこで車を止めてピクニックできることです.この道はおすすめ.B8074はすぐにA85に合流し,そこからObanへ向かうことになります.

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