検察官教育の基本
相手の立場に立って考えてみるとはどういうことかを教える

大病をすると医師は一段と成長すると言われる。そのような機会に恵まれない医者は、目の前の患者から「病を得る」とはどういうことかを日々の診療で学ぶ。そして自分も不完全な死体として、日一日と完全な死体に近い付いていく身であることを改めて認識する.

検察官・裁判官の教育といっても、難しいことを教える必要は一切ない。何しろ、彼らは基本的な道徳教育さえ受けていないのだから、まずは常識を身につけさせることから始まる。その常識の一つが「相手の立場に立って考えてみる」。「これは俺が書いた調書だから、お前が文句を言う筋合いはない。だからつべこべ言わずにここに署名しろ」。このような倒錯した思考により行動する人間には、まずは常識から教育しなければならない。

下記の記事は、塀の中に入って初めて相手の立場が理解できた特捜検事の事例である。こうしてみると、少なくとも検察官の場合には「相手の立場に立って考えてみる」常識を身につけるには、実体験が最も効率の良い学習法であることがわかる。

「こういうものだったのですか」という言葉を聞いて、あなたはどう思うだろうか?爆笑するだろうか?それとも呆然とするだろうか?いずれにせよ、検事とは「そういうもの」なのである。相手のことなど一切考えない。あらゆる点において、「これは俺が書いた調書だから、お前が文句を言う筋合いはない。だからつべこべ言わずにここに署名しろ」の俺様至上主義に陥っていることに気づくのは、塀の中に墜ちてから後の祭りの時である。

安田好弘先生が「司法試験合格者全員に拘置所か刑務所で過ごす研修をさせろ」と以前からおっしゃっている。逃走防止のために真冬でも便所サンダルを履かされ、名前ではなく称呼番号で呼ばれてみやがれというわけである。

”検事の多くは「都合良く書ける」と不信感を持つ”→「オイオイ、面前調書を都合良く書いてきたのはどこのどいつだと思ってんだよ、このタコ!」 ってツッコミが日本中から入るのも想像できねえんだから。こんな貧困な想像力の持ち主に、相手の立場に立って考えることを教えなくちゃならないと考えると、それだけでも気が滅入るが、実は想像力以前に、自分が置かれている現状がわかっていない。

「HERO」のポスターに「社会を明るくする運動」のスローガンが入っていたのは、テレビドラマや映画で検事を希望する人間が増えると「検事の多く」が本気で信じているからこそだ。自分は日本中から恨みを買っている、サイレントクレーマーに包囲されているという現状を、「検事の多く」は全く理解してない。

医者の方は少なくとも検事よりはましだと思いたい。「ドクターX」を見て外科医になろうと思うような学生が入学試験の面接で好印象を与えられるとは思わない。XでなくてGであれば、話は少しばかり違ってくるかもしれないが。
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被疑者ノートや「可視化」要求、前特捜部長ら徹底抗戦…犯人隠避事件 (2010年10月5日  読売新聞)
大坪、佐賀両容疑者が差し入れを受けた被疑者ノート
 郵便不正を巡る証拠品のフロッピーディスク(FD)改ざんに関連した犯人隠避事件で、最高検に逮捕された大阪地検の前特捜部長・大坪弘道(57)、前副部長・佐賀元明(49)両容疑者が、徹底抗戦の構えを見せている。弁護士から取り調べの様子を記録する「被疑者ノート」の差し入れを受けたほか、佐賀容疑者は法務・検察内で慎重論が根強い「取り調べの全面可視化」を要求した。捜査の手の内を知り尽くした2人が、最高検を揺さぶっている格好だ。

村木さん無罪を教訓に? 検察「複雑」
 「こういうものだったのですか」
 大阪拘置所で弁護士から被疑者ノートを示された大坪容疑者はつぶやいたという。弁護士は「しっかり(取り調べ状況を)まとめるように」と念押しした。ノートは佐賀容疑者にも差し入れられたという。
 郵便不正事件の厚生労働省元局長・村木厚子さん(54)(無罪確定)の公判では、部下だった元係長・上村勉被告(41)(公判中)が「偽証明書作成は村木さんの指示だった」と供述した捜査段階の調書の信用性が争われた。その審理に使われたのが被疑者ノートだ。
 上村被告のノートには「記憶と違うことが調書に書かれてある」「かなり作文された」「調書の修正は完全にあきらめた」などと記されていた。検事の多くは「都合良く書ける」と不信感を持つが、大阪地裁は記載などから上村被告の調書の信用性を否定し、村木さんの無罪を導いた。
 被疑者ノートを大坪、佐賀両容疑者が活用する展開となったことに、同地検の検事は「本気で検察と争う気だな」と顔をしかめた。
 佐賀容疑者側は、村木さんの事件でも密室での取り調べが強く批判されたなどとして、取り調べの全過程を録音録画する「全面可視化」を求め、4日、最高検に文書で申し入れた。
 しかし、法務・検察幹部の多くは、司法取引などの捜査手法がない現状での全面可視化には否定的だ。ある検察幹部は、「2人は村木さん事件の教訓を自分たちに生かすつもりか。何とも複雑な思いだ」と話す。
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