岡山道場報告

以下,いつもの二条河原とは違います.私の趣味・道楽でやっている,学生さんとの神経学の勉強試合,対局の他愛のない報告です.いつもの二条河原を期待している人は飛ばしてください.でも,OCSIAのページはご覧下さい.岡山の学生さん達の素晴らしい活動がわかります.

9/4-5の土、日、岡山まで行って来ました。名古屋の亀井道場に来てくれた岡山大学の学生さんが、私の病歴聴取、診察の学習セッションを評価してくれて、学生主導で、私を岡山まで呼んでくれたのです。岡山市内で開業して、PCFMネットの有力メンバーで、診療所での学生の教育に大変熱心な安田英己先生のお力添えもいただきました。

岡山大学から8人、信州大学から5人(土曜の朝4時に起きて車でやってきてくれました)、川崎医大から2人、広島大学、大阪医大から各1人の合計17人もの学生さんと、岡山SP研究会の坂田さん、前田さん、それから安田英己先生のグループ診療の先生方と、川崎医大総合診療部の中泉先生、江崎教授まで来ていただいて、医療面接、診察手技、スライドセッションと、SPさんから”先生治るでしょうか?”と、一同固唾を呑んで緊迫する場面あり、腱反射が出たの出ないのとわいわいがやがやの場面ありで、非常に愉快な二日間でした。

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9/4、9/5と、ちょうど台風が避けてくれたのは、皆さんの熱意でしょうか。誠に贅沢
な時間でした.私は,面白そうだと思ったことだけやってきたと申し上げましたが.
今回の岡山道場もそうでした.高橋君と彼の仲間が段取りしてくれるのなら,必ず面
白いに違いないと思って岡山に行きましたが,期待に違わず,痛快な時間を過ごさせ
てもらいました.その楽しさもさることながら,何より,OSCIAで真摯なやりとりを
している皆さんに会いたかった.(以下,武道とは縁遠いテニスの例えで恐縮です
が)

岡山道場は,私にとってのウィンブルドンのセンターコート同様,栄えある舞台でし
た.若い選手が生きのいい球を打っているのを,うらやましいと思いながら,彼らの
ように基本をおろそかにせずに,素直な球を打てるだろうか,働き始めて22年間,馬
齢を重ね,惰性で診療しているのが白日の下で暴かれてしまう不安で一杯だったので
すが,コーチ面(づら)して,スタンドで野次を飛ばすだけでは済むべくもなく,高
橋マネジャーから,いくつか試合を仰せつかりました.私はSPと患者さんを全く区別
していませんから,相馬直子さんとの試合を引き受けた時も,いまさらごまかしよう
もない.特別の模範演技なんていうものはない.いつもの外来でやっている通りやる
だけだと思いました.

ご覧の通り,半端な試合じゃなかったですよ.家庭生活の具体的な問題点に行き着く
までのラリーの連続,それが終わったかと思うと,すかさず,”先生,治るでしょう
か”という,強烈なパッシングショット,診断を詰めて攻勢に転じようとすれば,自
殺リスクの可能性というくせ球ロブを上げてくる,といった具合で,とにかく,ボー
ルを拾いまくりました.若い皆さんはご存知ない方も多いでしょうが,私は往年の元
気少年,マイケル・チャンのファンですから,ああいう試合は好きなのですが,観客
の皆さんははらはらどきどきだったでしょう.でも,あれが普通の外来なのです.私
だけの特別な外来ではありません.その証拠には,相馬さんは,安田先生の患者さん
そのままだったでしょう.

テニスになじみのない方は,囲碁・将棋の対局を思い浮かべてください.盤を挟んで
の患者さんとの対局.しわぶき一つ憚られる,あの緊張感.病歴としての言葉だけで
はありません.目線,表情,身振り手振り,その一つ一つにどんな意味があるのか.

病歴聴取の効率化や医療倫理といった技術的な側面だけから見ては,医療面接の面白
さ,奥深さは,なかなかわかりません.岡山道場でのような,手に汗握るラリーの連
続,好手の応酬を見て,初めて,その醍醐味がわかります.私一人では試合はできま
せんでした.いつもの外来をそのまま再現させてくれた,相馬直子さんと、その対局
を観戦し、緊張感を与えてくださった皆さんに改めて御礼申し上げます.

みなさんに体を動かしてもらうためと,対ポリクリ対策のために,腱反射の実習を
やってもらいましたが,ハンマーはいらない,病歴だけで充分というメッセージは,
医療面接のセッションでも充分わかっていただけたでしょう.すでに初診の時点で,
診断はおろか,治療の選択肢まで見通さなくてはならないのです.もし、余裕と機会
があれば、ケアネットの私の番組もご覧ください。今回は割愛した日常生活動作の中
の神経学のことも、ぼちぼち出てきます。今はまだ3回だから、リカチャンハウスと
プラレールの話はもう少し先(5回目か6回目だったかな)になりますが。

仕事の質を維持し,さらに高めていくためには,どんな職業でも,いくつになって
も,学びつづけねばなりませんが,一人では,決して長続きしません.刺激しあう仲
間が必要です.みなさんは,その素晴らしい仲間に恵まれています.私もその仲間に
入れていただいたのは光栄の極みです.三つ子の魂百までといいます.みなさんは,
優れた教育者,指導者になっていくでしょう.みなさんが,日本の臨床現場を支える
屋台骨になるのです.今回の企画の素晴らしさは,学生が主導権を握ったことです.
自分達がやりたいこと,面白そうだと思ったことをやって,実際に楽しかったことで
す.楽しいことは広がります.こういう道場を全国に広げていきましょう.
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