無医地区と医者の気持ち

現実にはとてもじゃないがとわかっていても,そして決して赴きはしないものの,無医地区の話を聞いて,何も感じない医者はいない.そういう医者の気持ちの中には,常に,仮に無医地区に赴任したらどういう目で見られるか?という懸念がある.

1.どうせ都会の競争に負けてドロップアウトしてきた医者か
2.開業資金稼ぎの腰かけ医者
3.基礎研究で行き詰まって、臨床なんてろくろく知らないような医者
4.高い専門性がない。自分に手が負えないとすぐ、”総合病院”に送ってしまう頼りない医者

このうちのどれかに必ず分類されるであろう可能性はかなり高いだろう.

実際,私は,無医地区ではないが,医者が来なくて困っていた重度精神遅滞者施設で,少なくとも一部の職員からは,落ちこぼれ医者扱いされていた.まあ,実際そうなのだから仕方がないが.

今の時代,地方の診療所に踏み留まっている医者の実力はおしなべて非常に高い.何しろ,現場の診療でプライマリケアの腕はめきめき鍛えられるし,インターネットやメーリングリストで,勉強の資源は事欠かないからだ.

諸葛孔明扱いしてくれとまでは言わないが,大学病院のお医者様なんかより,ずっと凄腕だって誉めてもらいたいと思っている.

給料はもう,十分貰っている.休む時間と,職人としての腕を認めてもらうこと.それが彼らのささやかな願いなのだが,地域住民はそれを理解しているだろうか.

参考
無医地区問題と医療費についての歴史

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