誤診の本質は正当な診療行為の否定・司法当局による恫喝の意識

事件の本質は冤罪ではない
冤罪は、この「事件」の一表象でしかありませんし、私も「正義感」とやらで動いているわけではありません。医学を知らない司法の誤った判断を是正するという、医師の本来の責務を、誰一人として果たしてないことが問題の本質なのです。それどころか、診察してもいない一人の医師が、司法による誤った医学的判断に対して、臨床の常識を無視して迎合し、誠実な診療を全て否定した。それが「事件」の本質です。臨床を知らない人々に対して媚びへつらう迎合「診断」を根拠に、善良な医療人による診療が全て否定されれば、日本全土で真っ当な診療はできなくなります。

このような明らかな誤診がこれまで放置されてきたのは、警察・検察・裁判所が「どうだ。俺たちが怖いだろう。だったら誤診とかつべこべ言わず、診断に文句をつけるんじゃない」と言っていると医療者が感じてきたからです。警察・検察の人々はとんでもないと言うでしょう。しかし、自分の命を握っている医者に対して、言いたいことも言えない患者の気持ちならわかるでしょう。

それにしても便利な診断名、魔法の診断名です。都合の悪いことが起こった時、困った時は全て「筋弛緩剤中毒」にすればよかったのですから。しかも、診療録は全く無視して、全て後付で。

臨床を無視して生まれた筋弛緩剤説
5例いずれも診療録に記載された診断名は、筋弛緩剤中毒とは全く別の病気でした。重症筋無力症やボツリヌス中毒ではありません。てんかんや心筋梗塞やアナフィラキシーショックの鑑別診断に、筋弛緩剤中毒を上げている教科書を見たことがありますか?

5例を診療していたのは全て、筋弛緩剤中毒と、てんかんや心筋梗塞やアナフィラキシーショックの鑑別もつかないほど、どうしようもない藪医者だったのでしょうか?違います。診療録を見れば、適切な診療をしていたのは一目瞭然です。ここまで「事件」が「解明」されているのに、そんなにどうしようもない藪医者が一人も糾弾されていないのはなぜでしょうか?彼らが藪ではないからです。診療録を見れば、しごくまともな診療をしていたのは一目瞭然です。

そして、全く患者を診療せずに筋弛緩剤中毒を解明した橋本保彦氏は、世界中のどの教科書にも書いていない鑑別診断を5例も解明した素晴らしい名医なのでしょうか?とんでもない。もしそうだとしたら、その名医が賞賛されるどころか、私からこうやって批判されても、誰も彼を擁護しようとしないのはなぜでしょうか?彼の証言記録を読めば誰も彼を擁護できないことが一目瞭然だからです。

彼が診療録を見ていません。あるいはページをめくったとしても、彼の目は全くの節穴でした。もし節穴でなければ、症例Eについて、高乳酸血症、左側の難聴、肥大型心筋症といった重大な所見を決して見逃してはいなかったでしょうから。さらに、もし、彼に医師としての最低限の常識さえあれば、「発症当日のCTに異常がないから急性脳症は否定できる」、「発熱がないから急性脳症は否定できる」なんて主張もしていなかったでしょう

橈骨動脈の拍動と呼吸数を間違えることがある(橋本保彦証人尋問調書 平成13年(わ)第22号等 P44)との彼の主張は、それこそ、世界中のどの教科書にも書いてありません。彼の証言記録は、彼の見識のなさと臨床能力の低さを如実に示しています。いくら辻褄合わせの必要があったとは言え、このような恥も外聞もない一言で、証言全体の信頼性がいっぺんに失われてしまいました。これでは誰も彼を擁護できないのは当然です。

正当な診療行為の否定
これは単なる冤罪事件ではありません。誠実な医師による真摯な診療を全面的に否定した裁判なのです。私が検証した診療録の妥当性には何の疑いもありません。確かに5例のうち、11歳女児例ではMELASの見逃しがありました。しかし、MELASの中でも診断が極めて難しい劇症型でした。そして、担当医が観察された異常所見を漏らさず記載していたからこそ、劇症型MELASの診断が可能だったのです。ですから、11歳女児例を診療した医師達も、自分たちの診療行為を恥じる必要は全くありません。真に恥ずべきは、一切診療していないにも関わらず、患者の急変を犯罪行為だったと断じた橋本保彦氏の誤診に対し、未だに沈黙を守っていることです。

他の4例の診療録にも目の前の患者さんの診療に全力を尽くす医師の姿が見て取れました。診断、治療のプロセスも診断名も全て適切です。このように、実際に真摯に診療した医師の診断が真っ向から否定され、全く診療をしていない一麻酔科医の発言が全て正しいとされた。それがこの裁判なのです。それが、幻の仙台筋弛緩剤点滴事件の本質です。

診療をしていない人々、臨床を知らない人々によって、誠実な診療行為が否定される。こんな恐ろしい出来事が放置され続けられるのならば、日本全国でまともな診療は一切できなくなります。

なのに暢気な話
こんな切実な問題なのに、お医者様達は、匿名かつ一次資料を見ない非効率的論争を繰り返すばかり。これまで10年間同じ事をやっててよく飽きませんね。本当に暢気なものです。臨床を全く知らない人達が、誠実に診療していた人達も、その人達が書いた診療録も全て否定して、新たな「診断」を「確立」した。こんなに医者を馬鹿にした話はないのに、その独特の「診断」が10年間も守られてきたのも無理はありません。

診療録に代表される一次資料と、橋本氏の供述調書、橋本・小川両氏の証言を複数の医師が検証すればすぐに解決することなのに。鑑定にしても然りです。論文でさえピアレビューシステムがあるのに、人の命や運命を決める裁判で、鑑定書さえも作らずに、検察官との問答集が診断の決め手となるなんて、江戸時代のお白砂よりも非科学的です。

どうしてこんな馬鹿げたことが

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