保育園を増やすなら

子供も年寄りも,女性が面倒を見る傾向がまだまだ強い.女性の労働機会を確保するため,保育園を増やすという.結構なことだ.しかし,一方で,老人介護は在宅へ誘導するという,これは完全に矛盾した政策ではないか.

介護サービスで施設の利用が伸びているのは,それだけ需要があるからだ.少子高齢化でも保育園を増やすのなら,介護老人保健施設や特別養護老人ホームを増設するのはなおのこと増やす必要があるだろう. 実際に,特別養護老人ホームの入所待機者が激増している.(2003/2/5 朝日新聞 特養待機者23万人 98年度の約5倍)

厚労省が在宅医療を勧めているのは,医療費削減のためである.在宅医療がなぜ医療費削減になるのか.それは老人介護サービスの中で,最も大きな比重を占める人件費を,介護する家族のただ働きでチャラにできるからだ.これが,施設にすれば職員に給料を払わないわけにはいかない.

実は,家庭での介護労力をきちんと人件費と換算すれば,社会全体のコストとしては,施設介護の方が,在宅よりも低コストになる.まとめてやれば安くなるのは,どんな商売でも当然である.ところが,厚労省としては,在宅で家族のただ働きで見かけ上のコストを減らしたいものだから,在宅へ誘導するのである.

じいちゃんばあちゃんを施設に預けて,女だって働かなくてはならないのである.厚生省と労働省が一つの箱物に入っても,やっていることはてんでんばらばら,無茶苦茶なのである.
 

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